スポーツ

松山商「奇跡のバックホーム」指揮官 顧問として母校に戻り「人間力のチーム」で甲子園へ帰還目指す

松山商業に顧問として戻った澤田氏。「夏将軍」を甲子園へと帰還させるという願いは叶うか(撮影・藤岡雅樹)

松山商業に顧問として戻った澤田氏。「夏将軍」を甲子園へと帰還させるという願いは叶うか(撮影・藤岡雅樹)

 夏の甲子園が開幕して熱闘が繰り広げられているが、今年は各都道府県の代表校を決める地方大会で、第1シード校が敗れる波乱が相次いだことも話題となった。今夏、第1シードとして愛媛県大会に臨み、ベスト16で敗れたのが甲子園で春夏通算80勝、7度の全国制覇を誇る松山商業だ。全国屈指の名門ながら、2001年夏を最後に甲子園出場が途切れている同校では、高校野球ファンなら誰もが知る「名場面」を演出した名将が現場に戻り、再建に向け力を尽くしている。新刊『甲子園と令和の怪物』が話題のノンフィクションライター・柳川悠二氏がレポートする。

 * * *
 唱歌『夏の思い出』でも口ずさむように、「夏が来れば思い出す男です」と自嘲気味の笑みを浮かべたのは、今年4月から母校である愛媛の名門・松山商業硬式野球部の顧問に就任した澤田勝彦氏(65)だ。夏の愛媛大会を目前に控えた7月上旬のある日、松山商業はマドンナスタジアムで練習を行っていた。

 高校野球ファンにとっての忘れじの名勝負として、KK(桑田真澄、清原和博)のいたPL学園や横浜の怪物・松坂大輔(元埼玉西武ほか)と共に、甲子園中継や特番などで必ず流れるのが1996年の第78回大会決勝「松山商業対熊本工業」戦での“奇跡のバックホーム”だ。澤田氏は当時、松山商業の監督を務めていた。

「ありがたいことに、夏になると奇跡のバックホームの映像を流してくださいます。今年の春はセンバツ中継でも流れたそうです。その度に、いろんな野球関係者から連絡が入りますね(笑)。歴代の錚々たる優勝監督がいるなかで、こうして思い出していただけるのは光栄なことです」

 延長10回裏、1死満塁という熊本工業のチャンスに、松山商業の右翼手・矢野勝嗣のところへ大飛球が飛ぶ。浜風に押し戻される白球を前進しながら捕球──それが助走にもなって、矢野は捕手にダイレクト返球。タッチアップを試みた熊本工業の三塁走者・星子崇をアウトにしてサヨナラを阻止した。

 1980年に松山商業のコーチとなり、1988年から監督を務めていた澤田氏は直前に、右翼手を矢野に代えていた。神懸かった采配によってサヨナラを阻止すると、11回表に矢野が反撃の口火を切り、夏にめっぽう強いことから「夏将軍」の愛称で知られる松山商業は26回目の夏で5回目の全国制覇を遂げた(春の全国制覇は2回)。大正、昭和、そして平成と、三元号で日本一となっているのは、松山商業だけだ。

関連記事

トピックス

2件の暴行容疑で逮捕、起訴されていた石野勇太容疑者(32)。新たに性的暴行に関する証拠が見つかり、3度目の逮捕となった
《独自》「いい孫だったんですよ」女児に不同意性交、男児には“しょうゆ飲み罰ゲーム”…3度目逮捕の柔道教室塾長・石野勇太被告の祖母が語った人物像「最近、離婚したばかりで…」
NEWSポストセブン
狩野舞子
《元女子バレー狩野舞子》延期していた結婚発表のタイミング…大谷翔平との“匂わせ騒動”のなか育んだ桐山照史とステルス交際「5年間」
NEWSポストセブン
韓国籍の女子学生のユ・ジュヒョン容疑者(共同通信)と事件が起きた法政大学・多摩キャンパス(時事通信フォト)
【法政大学・韓国籍女子学生ハンマー暴行事件】「日本語が上手くなりたい。もっと話したい」容疑者がボランティアで見せていた留学生活の“苦悩”
NEWSポストセブン
2025年初場所
初場所の向正面に「溜席の着物美人」登場! デヴィ夫人の右上に座った本人が語る「観客に女性が増えるのは相撲人気の高さの証」
NEWSポストセブン
たぬかな氏が明かす誹謗中傷の実態
「ネットの誹謗中傷は止まらない」 “170cm以下の男に人権ない”で炎上を経験…たぬかな氏が分析する加害者の特徴とその心理
NEWSポストセブン
たびたび人気メニューを生み出す牛丼チェーン店・松屋。今回の新作は”激辛四川料理”だ(松屋公式Xより)
「辛すぎて完食できない…」「あるまじき量の唐辛子」激辛好きの記者も驚き…牛丼チェーン・松屋の新メニュー『水煮牛肉』 本社が語った“オススメの食べ方”とは
NEWSポストセブン
ミャンマーとタイの国境沿いの様子(イメージ)
《「臓器売られる覚悟」「薬を盛られ意識が朦朧…」》タイ国境付近で“消える”日本人女性たち「森林で裸足のまま保護」
NEWSポストセブン
小室圭さん(左)と眞子さん(右)
小室眞子さんの“後見人”が明かすニューヨークでの生活と就活と挫折「小室さんは『なんでもいいから仕事を紹介してください』と言ってきた」
女性セブン
ビアンカ・センソリ(カニエのインスタグラムより)
《“ほぼ丸出し”ファッションに賛否》カニエ・ウェスト、誕生日を迎えた17歳年下妻の入浴動画を公開「彼なりの円満アピール」
NEWSポストセブン
販売されていない「謎の薬」を購入している「フェイク動画」(instagramより。画像は一部編集部にて加工しています)
「こんな薬、売ってないよ?」韓国人女性が国内薬局「謎の薬」を紹介する“フェイク広告動画”が拡散 スギ薬局は「取り扱ったことない」「厳正に対処する」と警告
NEWSポストセブン
教室内で恐ろしい事件が(左は現場となった法政大多摩キャンパス内にある建物、右は教室内の様子)
「女子学生の服が血に染まって…」「犯行直後に『こんにちは!』」法政大・韓国籍女子学生が“ハンマー暴行”で逮捕、学友が語った「戦慄の犯行現場」
NEWSポストセブン
中居正広の女性トラブルで浮き上がる木村拓哉との不仲
【全文公開・後編】中居正広の女性トラブル浮き上がる木村拓哉との不仲ともう一つの顔 スマスマ現場では「中居のイジメに苛立った木村がボイコット」騒ぎも
女性セブン