山田くんの修了証明書
「僕は以前から介護施設で演芸会のボランティアを行ってきました。訪問した施設では、涙を流して喜んでくださる入所者の方々との出会いがあり、心を動かされました。理事長ともその活動が縁で知り合い、旧ヘルパー2級の取得に繋がりました。
僕は17歳で13坪の中古の戸建てを買ったのを初めとして、その周囲の土地を購入することで面積を大きくして、2010年に江東区と江戸川区にマンションを2棟建てました。それと同じように高齢者施設もまずは小さなグループホームから始め、少しずついろんな形態の、たくさんの方に喜んで入ってもらえる施設を増やしていきたいと思っています。ゆくゆくはそこへ自分も入って、人生を終えたいです(笑い)」
なぜ65歳でもチャレンジする?
夢が広がるようだが、リスクもある。介護の世界は、山田さんがこれまで手がけてきた不動産ビジネスとは違うだろう。わざわざリスクをとって新しいことにチャレンジしなくても、現状維持でもいいのでは? と思ってしまうが……。
「お金のためにやろうとしたら失敗するだろうけど、僕は自分でも入りたくなるような、本当に良い施設を作ろうと思っています。そういう施設に入りたい人はたくさんいて順番待ちの状態なのだから、うまくいかないかも、という不安は感じません。
僕は自分が建てた2棟のマンションのローンを、30年で組んだのに早く返した実績があります。だから、今回、高齢者施設を作るにあたっても、このマンション2棟を担保に銀行はお金を貸してくれます。貸してくれるということは、うまくいく可能性が高いということです」
これまでの不動産ビジネスの延長にあるわけだ。これまでの成功には、『笑点』の座布団運びを38年続けてきたことで得た知名度や信用も大きかった。
「2棟のマンションは空室で困ったことが一度もありません。それは、知名度のおかげもあるでしょう。僕が下手なことをしたらすぐに大きく報じられてしまうから、おかしなことはしないだろう、と信用してもらえるわけです。だから、これから高齢者施設をやるのにも、知名度は役に立つと思っています。来年には始めますよ。もう具体的に動いていますから」
知名度を良いように活用している。芸能人の副業の理想型というべきか。
◆取材・文/中野裕子(ジャーナリスト)
『笑点』には欠かせない存在の山田くん(時事通信フォト)