教会まで出向いて話を聞いた
うるま市に住む宮城の自宅を訪ねて話を聞いた。
「オレは信者じゃないよ。でも、旧統一教会の反共産主義や自民党支持、環境問題という点で賛同できるところがあった。それで3年ほど前、旧統一教会の方から『平和大使』にならないかという話があったから受けただけ」
佐喜眞とはどのように知り合ったのか。
「初めて佐喜眞さんと会ったのは彼が宜野湾市長時代。市役所の隣にある市民会館で2018年2月に拉致問題の啓発舞台劇が行なわれた時。2020年に入って、旧統一教会が、『リーフボール』というサンゴを守る製品があるというので、佐喜眞さんと一緒に、那覇市内にある教会まで出向いて話を聞いた。どうして一緒に行ったかって? そりゃ、偉い人を連れて行けば、相手だって喜ぶからさ」
──佐喜眞氏に最後に直接会ったのはいつか。
「去年の11月に、佐喜眞さんの宜野湾の事務所に会いに行った。佐喜眞さんは、知事選に落ちた時、次も知事選で頑張るって、オレと約束したんだ。けれど、知事選じゃなくって、参院選に出るかもしれないという噂が流れ始めた。だから、ちゃんと知事選に出るように、って念押しに行ったんだ」
──佐喜眞氏は何と答えたのか。
「うつむいたままで、はっきりとは返事しなかったけれど、今回も知事選に出たんだから、全力で応援したよ」
──佐喜眞氏が旧統一教会と深く関わっていったのはどうしてだと思うか。
「政治家は、声をかけられれば、どこにでも行くさ。それだけのことで、佐喜眞さんは何も間違ったことはしていない」
選挙に弱い政治家が、旧統一教会に絡め取られるというのは、自民党の政治家全般に見られる負のパターンである。佐喜眞淳は、現在の自民党政治の典型的な一例に過ぎない。そうした佐喜眞を、大事な沖縄県知事に担ぎ出しながら、その間、なんら効果的な手を打てなかった自民党の責任は大いに問われるべきだ。
旧統一教会問題を受け、内閣支持率が下降線をたどる中で、今年中にも福島県知事選や茨城県知事選など5つの知事選挙が控えている。年が明ければ、統一地方選挙も行なわれる。もし自民党が、旧統一教会との問題を本気で清算できないのなら、今後の選挙でも同じ轍を踏むことになるだろう。
(了。第1回から読む)
【プロフィール】
横田増生(よこた・ますお)/1965年福岡県生まれ。関西学院大学を卒業後、予備校講師を経て、アメリカ・アイオワ大学ジャーナリズム学部で修士号を取得。1993年に帰国後、物流業界紙『輸送経済』の記者、編集長を務める。1999年よりフリーランスとして活躍。2020年、『潜入ルポ amazon帝国』で第19回新潮ドキュメント賞を受賞(『潜入ルポ アマゾン帝国の闇』と改題し新書化)。近著に『「トランプ信者」潜入一年 私の目の前で民主主義が死んだ』
※週刊ポスト2022年9月30日号