冠動脈造影画像
2020年、医学専門誌『ニューイングランド・ジャーナル』に冠動脈疾患の治療に関する国際共同研究の結果が報告された。冠動脈に狭窄・閉塞がある約5000人の患者を無作為に2群に分け、半分には標準治療に加えてステントなど血行再建治療を行ない、残り半分は標準治療しか実施せずに5年後の生命予後を比較したところ、両者に全く差がなかった。この研究で太い冠動脈の狭窄・閉塞の治療が必ずしも生命予後に直結しないことも判明したのである。
「血管内皮から血管の拡張に関与するNO(一酸化窒素)などが放出されます。ただ微小血管が障害されていると放出が顕著に低下、過剰な収縮も起こりやすくなります。さらに冠動脈外膜の微小な栄養血管がプラーク(脂肪など粥状の物質)内に入り込めば心筋梗塞のリスクが高まります。つまり、冠微小血管は重大な疾患にも関与しているのです」(下川副大学院長)
現在、全国16か所の医療機関で冠微小血管検査が可能な体制が整ってきた。通常の血管造影に30分ほど時間を足すだけで診断ができ、患者の負担は少ない。
取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2022年10月28日号
下川宏明/国際医療福祉大学副大学院長・東北大学名誉教授