喉も鍛えましょう
70歳を過ぎた患者さんには、2つのことを指導しています。1つ目は「食べ物を喉に詰まらせないようにする」こと。嚥下障害は高齢を迎えると肺炎などの重病に繋がったりする。喉の飲み込みの機能を鍛えるために、人とよく会話するように注意を促しています。
もう1つは、「転倒に気をつける」こと。高齢者の敵は何と言っても転ぶことです。高齢の患者さんを見ていると、転倒がきっかけで骨折したり寝たきりになったりする人も多くいます。
私のように歩くことで足腰を鍛えつつ、やはり転倒には注意していただきたい。階段や足場の悪いところでは、どんなに元気な人でも転倒に気をつけなければなりません。階段は、特に降りる時に必ず手すりを使い、周囲に迷惑だとしても、ゆっくり歩くことです。
転倒予防に、もう1つやったほうがいいのが、背伸びをしてつま先立ちからかがむことを繰り返す「つま先立ちスクワット」です。
人間の身体はつま先立ちに使う筋肉が弱くできており、歳を取るとそれがさらに衰えます。例えば階段を降りる際、若い人はつま先から着きますが、高齢者はつま先立ちがしづらいので足裏全体で降りる。高齢者が階段でふらつくのは、片足でつま先立ちできないからです。高齢者の転倒予防には、若い人と同じつま先立ちができるような筋肉を鍛えたほうがいい。
腹筋を鍛えることも、横方向への転倒を防ぐのに役立ちます。私は毎朝起きたら、腹筋を80回くらいします。身体を曲げた時に使う腸腰筋(深腹筋。足や膝を持ち上げ、身体のバランスを取るインナーマッスル)は、身体の前だけでなく横にもついていて、左右の腸腰筋は横への転倒を防ぐ働きを担います。
腹筋(腸腰筋)を鍛えることで、横に揺れた時に重心を保つことができるようになる。現役時代の貴乃花があれだけ土俵際で踏ん張れたのは、本人が言うように、とにかく四股を踏んで腸腰筋を鍛えたからだと思っています。
高齢期の転倒を防ぐためにも、四股を踏むなどして腸腰筋を衰えさせないことは大事です。
※週刊ポスト2022年12月2日号