コラム

ZEHの認知率が直近5年間で最高値に!2030年度のZEH基準義務化については?

(写真/PIXTA)

リクルートが注文住宅の「建築者」(過去1年以内に注文住宅を建築した人)と「検討者」(今後2年以内に注文住宅の建築を検討している人)に調査を実施した。今回は調査結果の中でも、「ZEH(ゼッチ)」に関する結果に注目して見ていこう。

【今週の住活トピック】
「2022年注文住宅動向・トレンド調査」を発表/リクルート

ZEH認知率は77.4%、直近5年間で最高値。経済的メリットは月8562円

リクルートが実施した2022年の調査結果によると、「ZEHの認知率(内容まで知っている28.6%+名前だけは知っている48.8%)」は77.4%となり、直近5年の中で最高値となった。注文住宅建築者の4人に3人以上が、ZEHを認知していることになる。

また、ZEHを導入した人に「光熱費等の経済的メリット」を聞いたところ、平均額は8562円/月になった。電気代は気候によって変わるので毎月同じ額ではないが、この額なら年間を通じて電気代のかなりの部分をカバーできるのではないか。一方で、金額帯別に見ると、「5000円以上10000円未満」が最多の29.2%だが、次に「2500円未満」(26.3%)が挙がるなど、実際には各家庭でばらつきが大きいことも分かる。

SUUMO副編集長・中谷明日香さんは、「ハウスメーカー大手各社も、ZEH商品の強化を図っていますし、ZEH導入による光熱費などの経済的メリットの大きさからも、今後も導入率は伸びていくのでないかと見立てています」と分析している。

2030年度にはZEH基準が義務化される!この認知度はかなり高い

ところで、ZEH基準が2030年度からの新築住宅で義務化されることをご存じだろうか?

経緯を説明しよう。政府は2050年カーボンニュートラル宣言を受けて、建築物の省エネ性強化を加速させている。建築物には「省エネ基準」が定められており、住宅以外の建築物では現行の省エネ基準に適合していないと新築できないことになっている。この省エネ基準について、新築住宅でも2025年度には適合するように義務化する予定になっている。さらに、2030年度以降は義務化する基準を「ZEH基準」に引き上げようとしているのだ。

ここまで認知しているのは、住宅の省エネ性能について関心の高い人に限られるのではないかと思うが、調査結果を見てみよう。「建築者」の認知度は34.1%と3人に1人は認知していることになるが、「検討者」の認知度はさらに高く50.2%と2人に1人が認知している状況だ。検討者が自分事としてとらえていることがうかがえる結果だ。

ZEH導入とZEH基準義務化は、同じZEHでも同じじゃない

さて、ZEHの導入で光熱費等の経済メリットが平均で月8562円だったというのは、太陽光発電などで電気を生み出しているからだ。住宅の省エネ性をいくら高めたとしても、住宅内でエネルギーを消費するので、エネルギー収支はマイナスになり、ゼロエネルギーの家にはならない。プラスマイナスゼロにするには、住宅の設備機器で電気をつくり、エネルギーをプラスする必要があるのだ。

最近は電気代が上がっているので、経済的メリットを大きく感じられることだろう。太陽光発電設備については、設置費用が100万円程度かかるといわれている。先行投資費用を電気代などの経済メリットによって、住みながら時間をかけて回収するという形だ。政府だけでなく、東京都でも新築一戸建ての太陽光発電設備の設置を推し進める予定だ。そこで、補助金を出したり、初期投資は電力事業者が負担する(屋根貸しや電気代の一定期間サブスクなど)手法を用いて、初期費用の負担軽減を図る仕組みを広げようとしたりしている。

一方、2030年度から新築住宅で適合義務化となる「ZEH基準」は、必ずしも太陽光発電などで電気を生み出すことを求めていない。現行の省エネ基準よりも省エネ性の高いZEH基準に引き上げて、住宅そのものの省エネ性の底上げを図ろうとしているのだ。

住宅の省エネ性を高めるにはいろいろな方法があるが、たとえば東京の気候なら、天井や壁・床を覆う断熱材をより厚くしたり、窓まわりのガラスを複層ガラスからLow-E複層ガラス(遮熱タイプ)に、窓枠も熱を伝えやすいアルミサッシから樹脂サッシに切り替えたりして、省エネ性の高いZEH基準を実現するといった具合になる。その分コストが上がるので、気になるのは建築費のことだろう。

気になる建築費の高騰、新築住宅へのZEH基準義務化の影響は?

近年は、資材不足や円安、燃料費の影響などで住宅の建築費が上がっている。この調査で「建築者」に対して「建築費高騰を認識していたか」を聞いたところ、75.1%が認識していたと回答し、41.6%が「建築費高騰の影響があった」と回答した。

一方、「検討者」に対して、「建築費高騰を認識しているか」を聞くと、建築者よりさらに多い89.7%が認識していると回答した。また、「建築費高騰の今後の予想」では、62.3%が「現在より上がっていく」、26.6%が「現在の水準が続く」と回答し、合わせて約9割が建築費は今後もさらに上がるか高騰したまま推移すると予想している。

調査では、「検討者」に対して「建築費高騰で予算オーバーした場合にどうするか」も聞いている。最多は「予算を増やす」の39.4%だったが、「土地費用を抑える」(27.4%)や「建築費と土地費用を両方抑える」(21.3%)など、建築プランへの影響もみられた。

では、省エネ基準の引き上げによる建築費のコストアップはどうだろう?
現行の省エネ基準に適合している住宅がすでに普及していることから、省エネ基準の義務化で建築費が上がるとは思えないが、2030年度以降のZEH基準の義務化では、建築費に影響があると考えられる。ただし、いまの建築費高騰とは違って、義務化によるコストアップは予想できることなので、政府は優遇制度などで支援するだろう。

すでに、住宅ローン減税の控除対象となる住宅ローンの限度額をZEH基準などで引き上げたり、【フラット35】S(【フラット35】の金利引き下げ制度)でZEH基準を追加して優遇するなどの手を打っている。今後も、「こどもエコすまい支援事業」による補助金などが予定されている。

建築物の省エネ性の引き上げについては政府が力を入れているので、減税や補助金、融資などのさまざまな支援策が用意されるだろう。こうした優遇制度を有効に活用して、希望する建築プランで省エネ性の高い住宅を建てられることを願っている。

●関連サイト
リクルート「2022年注文住宅動向・トレンド調査」

(山本 久美子)

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