板井が15連敗したのは引退直前の場所だった。東前頭14枚目で15敗し、翌場所で十両に転落して4日目に引退している。その後、板井氏は本誌・週刊ポストに15戦全敗の舞台裏をこう話していた。

「引退を決めていたオレは、付け人に“オレらしい思い出を作る”と場所前に全敗を宣言していたが、正直いってガチンコ相手にどうやって負ければいいのか悩んでいた。ガチンコで全勝するのは難しいが、ガチンコで全敗するのはもっと難しい。

 八百長力士には付け人を走らせて安く買ってもらう一方で、ガチンコ力士にも付け人を走らせて“うちの関取は引退するので自分から負けると言っています。その代わりケガをさせないようにお願いします”と伝えさせた。

 久島海と貴ノ浪はわかってくれたようで丁寧に寄り切ってくれたが、信じられなかったのは××(当時板井氏は実名で証言)だった。“本当にタダで負けてくれるのか。信じられない。後で莫大なカネを要求するのだろう。作戦じゃないか”と最後まで疑っていた。こんな性格の悪いヤツはガチンコでぶん投げてやろうかと思ったが、オレらしい思い出を作るためにグッと我慢した」

 2018年7月場所で14日目に嘉風(現中村親方)が初日を出したが、当時も日に日に報道陣の数が増えるなど相当な重圧に見えた。それほど15戦全敗は不名誉な記録。今はガチンコ時代で、照強は「両膝を痛めていた」(相撲担当記者)という事情があったようだが、15戦全敗に腫物を触るようなコメントになった背景に、角界の複雑な歴史と裏事情が垣間見えた。

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