冬に悩ましい「夜の頻尿」問題 原因と日常生活でできる対策はある?医学博士に聞く
冬になるとトイレに行く回数が増えて困ってしまう…。そんな経験はありませんか? 特に尿意で目覚める「夜間頻尿」は睡眠を妨げて、日中の生活に悪い影響を出しかねません。「疲労の蓄積は高血圧や心臓疾患、うつ病などのメンタル疾患の引き金になる可能性さえあります」と話す、医学博士で健康科学アドバイザーの福田千晶さんに、冬の頻尿の原因と解決策について聞きました。
【目次】
冬になると頻尿になりやすくなる原因
頻尿の対策、日頃の運動やしょうが湯、ホットミルクも
頻尿はさまざまな病気のサイン?
◆冬になると頻尿になりやすくなる原因
尿意が近い、排尿の回数が多い症状を頻尿といいますが、定義はあるのでしょうか。
「1日の排尿回数は年齢や健康状態によって異なるので目安になりますが、一般的に1日に5~7回くらいで、8回以上は“頻尿”とされています。また、40歳以上の男女約4500万人が、夜間に1回以上排尿のために目覚める“夜間頻尿”の症状があるといわれています」(福田さん・以下同)
寒さにより膀胱の筋肉が収縮する場合も
冬になると頻尿になりやすくなる原因は、いくつもあるといいます。
「冬は気温が低く運動量も減るので、汗をかく機会が少なくなります。汗には体内の余分な水分を排出する役割もあるため、汗をかかない分は尿で出す必要がでてきます。また、活動量が少ないということは、体が疲れていないということ。すると眠りが浅くなって、ちょっとした物音や寒さなどで目覚めてしまい、尿意に気づいてトイレに行くケースもあります。そもそも寒さや暑さが厳しい時期は、夜間に目覚めやすい傾向があります。
寒さにより膀胱の筋肉が収縮して、尿を溜める容量が小さくなってしまったり、膀胱が過敏になってしまったりして、尿が充分に溜まる前に尿意を催すことがあります。高齢になると寒さとは関係なく過敏になって同じ現象が起こるので、頻尿になりやすくなります」
気温が下がると体温を維持するため、体がエネルギーを蓄えようと味の濃いものを欲する傾向があります。それに合わせて水分もたくさん飲んでしまうと、尿量が増えます。夕食は塩分を控えた食事にするのも頻尿の予防になりそうです。
◆頻尿の対策、日頃の運動やしょうが湯、ホットミルクも
冬の夜間頻尿対策は、運動や睡眠、体を冷やさないことが重要になります。
「汗をかく回数を増やすこと、朝まで目覚めない深い睡眠をとることが大切です。汗ばむ程度のウォーキングを毎日行う、ゆっくり湯船につかるなどが挙げられます。外で運動をする際に日の光を浴びると、睡眠物質であるメラトニンの原料であるセロトニンが分泌されるので、快眠につながります。
反対に、眠る前に体を温めようと、ホットワインや温かい紅茶を飲むのはNGです。アルコールは睡眠導入の効果がありますが、睡眠が浅くなります。また、紅茶や緑茶にはカフェインが含まれており、利尿作用があるため、夜中に尿意で目覚めやすくなります。眠る前に適した飲みものは、しょうが湯やホットミルクなどです」
「寝間着の下にインナー」など冷え対策
体を温めるからと大量に飲んでしまっては、尿意で夜中に目が覚めてしまいます。かといって水分を控えすぎると、血液がドロドロの状態になり、血管が詰まって脳卒中や心筋梗塞のリスクが上がってしまいます。就寝前後の適度な水分補給は大切です。
「体を冷やすと、夜間に目覚めやすくなります。特に下半身を冷やすとトイレが近くなってしまうので、寝間着の下にもインナーを履く、腹巻きをする、湯たんぽを置いて事前にふとんを温めておく、などの工夫をするといいでしょう」
◆頻尿はさまざまな病気のサイン?
頻尿の原因は寒さや年齢のせいばかりではなく、病気が隠れている可能性があります。
「膀胱炎や過活動膀胱をはじめとする膀胱の病気、糖尿病、男性なら前立腺肥大、女性なら子宮筋腫による膀胱の圧迫などにより頻尿になることがあります。腎臓の機能が低下すると尿の濃縮力が低下して、多尿により夜間頻尿になることがあります。
まれですが、膀胱がんで頻尿になることもあります。排尿のときに痛みがあったり、夜中に2回3回とトイレに行くような場合は、泌尿器科で診断してもらってください。頻尿は病気のサインかもしれません」
◆教えてくれたのは:医学博士・健康科学アドバイザー・福田千晶さん
1988年に慶應義塾大学医学部卒業。医師として東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学科勤務を経て、1996年より、フリーランスの健康科学アドバイザーとしてテレビやラジオ番組への出演、執筆、講演などで活動。『そもそも血糖値ってなんですか?』『高たんぱく質レシピ151』 (ともに主婦の友社)、『危ない! 命を縮める健康法』(アントレックス)など著書・監修書多数。https://fukuda-chiaki.com/
取材・文/小山内麗香
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