宝飾品など約3億円相当が盗まれた宝飾店の壁に開けられた穴。2010年1月、東京・銀座(時事通信フォト)

宝飾品など約3億円相当が盗まれた店の壁に開けられた穴。2010年1月、東京・銀座(時事通信フォト)

窃盗組織「爆窃団」摘発の難しさ

 爆窃団は、百貨店や宝石店などが閉店した後、ビルとビルとの間に油圧ジャッキを設置して、その圧力で外壁に穴を開け店内に侵入し、貴金属などを根こそぎに盗んでいくという荒っぽい方法をとった強盗団だ。日本では1980年代以降に被害に遭うようになった。その手口から、警視庁の中国語の通訳が爆窃団と名付けている。香港などを拠点に活動する中国系外国人によるグループが中心とされているが、韓国系や台湾系も存在する。

 警察の摘発強化により、一時は大掛かりな窃盗事件は減少。爆窃団も日本から姿を消したかにみえた。しかし事件に対する世間の注目やほとぼりが冷め、警察の摘発強化が緩んだ頃を見計らったように、爆窃団のメンバーは、再び東京の有楽町や銀座周辺の宝飾店を狙って来日し始めた。大胆な手口に加え、高級品店が並ぶ銀座などで犯行が行われたことで、当時はマスコミでも大きな話題となった。

 そんな時期、銀座通りの某ビルにテナントとして入っていた知人の宝飾店が襲われた。早朝、連絡を受け現場で見たのは、隣のビルと隣接した壁面に開けられた大きな穴だ。店に並べられていたショーケースは全て壊され、宝石類は丸ごと盗まれていた。被害総額は数億円に上った。

 手口は爆窃団そのものだった。ビルとビルとの間にある人1人がやっと通れるほどの狭い空間に入り込み、油圧ジャッキを使ってコンクリートの厚い壁を破壊していた。穴を開けられたビルは銀座の中央通りに面する大きな商業ビルだ。夜中とはいえ人通りが途切れることはない。それでも、誰にも気づかれずに穴を開けた。

 捜査に携わっていた捜査員は「仮にビルとビルの間から大きな物音がしたとしても、通りすがりの人たちには、隣接するビル同士の隙間が狭くて暗いため、奥まで見通すことができなかった。たとえ誰かが物音に気がついたとしても、夜間にビルのメンテナンス工事をしている作業員がいるぐらいにしか思わなかっただろう」と話していた。

 ビルには防犯設備が設置されていたが、正面玄関や窓が重点となっていた。横壁に穴を開けられることなど、想定していなかったのだろう。警報装置は鳴らなかったようだ。盗まれた商品の確認をしていた捜査員は、悔しそうにこう語っていた。「やられていたのは高級時計店や宝飾品関係の店だけだ。前々から狙っていたのだろう」。

 元刑事も「窃盗や強盗を繰り返すグループは、自国を拠点に日本には出稼ぎ的に盗みにきては、犯行後すぐに帰国するのが常套手段だった。人々が忘れた頃にやってきて、盗めるだけ盗み、盗品は郵便荷物にして全部送り、さっさと日本を後にする。そしてまた数年後に戻ってくる。だがせっかく被疑者の目星をつけても、次には違うメンバーで入ってくることが多い。そのため現場付近の防犯カメラの映像と何度も出入国を繰り返している人物から、犯人を割り出していく」

 この事件は、その後、犯人が全員捕まった。別件で逮捕された韓国人窃盗団が売りさばいた品物や隠し持っていた貴金属の中から、銀座のビルで盗まれた品物も出てきたのだ。それらが動かぬ証拠となり、この窃盗団が爆窃団グループの一員だと判明したのだ。彼らは他にも、都内で数件の犯行を繰り返していた。

 犯罪者が日本人であれ外国人であれ、もしも組織的な犯罪であれば、犯人全員を逮捕するには地道な捜査が必要となる。立て続けに起こっている3人組の強盗傷害事件が同一犯によるものか、組織的な犯行なのかは、捜査を待たなければわからないが、これ以上被害が出ないよう1日も早く犯人らが逮捕されることを願っている。

関連記事

トピックス

二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
今回のドラマは篠原涼子にとっても正念場だという(時事通信フォト)
【代表作が10年近く出ていない】篠原涼子、新ドラマ『イップス』の現場は和気藹々でも心中は…評価次第では今後のオファーに影響も
週刊ポスト
真剣交際していることがわかった斉藤ちはると姫野和樹(各写真は本人のインスタグラムより)
《匂わせインスタ連続投稿》テレ朝・斎藤ちはるアナ、“姫野和樹となら世間に知られてもいい”の真剣愛「彼のレクサス運転」「お揃いヴィトンのブレスレット」
NEWSポストセブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
韓国2泊3日プチ整形&エステ旅をレポート
【韓国2泊3日プチ整形&エステ旅】54才主婦が体験「たるみ、しわ、ほうれい線」肌トラブルは解消されたのか
女性セブン