データの収集や解析も行なっている
“どさくさで勝つ”が東大流
当然ながら選手の梅林主将はあくまで前向きだが、指揮官は状況を冷静に見ていた。監督に代わり現場で指揮を執る大久保裕助監督はこう語る。
「相手は3軍といってもプロですから、ちょっとでも気を抜くとガガガッとワンサイドゲームになっちゃう。なんとか“野球”になるように頑張っていきたいですね。強豪大学は練習試合でプロと対戦する機会もあるでしょうけど、東大野球部がプロ球団と対戦するのは近年はありません。せっかくの機会なので胸を借りるつもりで思い切ってプレーしたいです」
東大が目指す「勝ちパターン」「勝利の方程式」はあるのか。大久保助監督が続ける。
「そうですね、耐えるっていうかね。エラーで自滅するパターンにならないように守りでバッテリー中心に粘って、試合の前半をなんとか接戦に持ち込む。後半に試合がもつれこんでくる中で、数少ない得点のチャンスを生かして“どさくさ”で勝っちゃうみたいな(苦笑)」
選手たちは東大の入試を突破するため、受験勉強で我慢と粘りを培ってきた。だから“耐える”ことには慣れている、ということのようだ。では、東大生ならではの頭脳が生きる場面はあるのか。
「それは研究熱心なことですね。相手チームのビデオもよく研究していますし、野球に関するいろんな情報を吸収して役立てていく力は大したものですよ」(大久保助監督)
実際、どの試合でもバックネット裏で分析担当の部員が投手の投球をすべて録画し、球速や球種などをその場でパソコンに入力している。打者についてもそれぞれの打席の時間を記録し、映像を編集して、全員が自分の打席をまとめて振り返って見られるようにしているそうだ。こうした情報収集はどのチームも行っているが、分析手法が際立っているという。
プロ野球で4球団の監督を務めた「ノムさん」こと故野村克也氏のID(インポート・データ)野球の東大版というところか。「ただ……」と大久保助監督は最後に付け加えた。
「そうは言っても、いかんせん、思う通りに体が動かないっていうところが限界ですね」