「涙がない」嗚咽
判決前の3月8日に開かれた公判では岡田さんの遺族が意見陳述し、変わり果てた息子との対面を涙ながらに語っている。
「顔が腫れて別人だと思っていたが、間違いなく息子だった。指は信じられないほど細く、体には痣。足の指の爪が何本かなかった。脳天を打ち砕かれたような衝撃を受け、震える足を押さえながら立ち尽くしました。
骨と皮だけになり、このままでは死んでしまうと誰もが思う状況になっても、被告は暴力を続けた。息子をアパートから連れ出そうと申し出る人がいたのに、断ったのは、手を取ることができなかったというべきで、それほど被告のことが怖かったのだろう」
同日に行なわれた論告で検察官は「動機は常人には理解し難い。被害者を遊び道具、ストレスのはけ口にしていた。長期間弄び、家族にとってかけがえのない存在である岡田さんはいたぶられ死亡した。あまりにも冷酷。反省や改悟は微塵もない」と非難した。
起訴事実を否認していた小林被告はこの日の論告弁論で、時折前のめりになり、目元を覆い、泣いているような素振りを見せていた。最終意見陳述でも、泣いているように、時折声を詰まらせながらこう述べた。
「暴力……振るったこと、反省してます。岡田さんにわざと食事制限したことはありません。ちゃんと準備してなかった……。恐喝などはしていません……!(嗚咽)……ううっ、一生忘れることなく反省します……本当に申し訳ありませんでしたぁ、ううぅ~!」
最後は証言台の前に突っ伏し、号泣しているようだったが、否認している被告の涙の意味は全くわからなかった。
そのうえ、閉廷後に、くるっと傍聴席側に振り返った被告の目には、涙が全く見えなかった。鼻をすするようなこともない。法廷を出ると、別の傍聴人も「泣いてなかったですよね?」と驚いていた。
◆取材・文/高橋ユキ(フリーライター)