フォークのサインは1種類だけ
それほど種類が豊富なフォークが手の内にあるとなれば、捕手の北島蒼大(きたじま・そうた)との意思疎通が大事になるだろう。ただ、「フォーク」のサインはひとつで、日當が投じるあらゆるフォークの軌道に反応して北島は捕球する。
「自分が打者の反応や癖を見ながら、どんなフォークを投げれば抑えられるか考えて投げています」(日當)
試合を締めくくったのもやはり134キロとスピードを伴う、渾身のフォークだった。
7人きょうだいの5番目(兄2人、姉2人、妹2人)の子供として生まれた日當であるが、3回戦に勝利して、3月30日が結婚記念日である上から3番目の姉に良いプレゼントができたと喜んでいた。
「(29日の準々決勝)大阪桐蔭戦にももちろん勝利して、もうひとつ、プレゼントを増やしたいです」
七色のフォークを操る日當の憧れは楽天の田中将大だ。
「2013年に楽天が優勝した時にクローザーを務めていて、こんなにも気持ちの強い選手がいるんだな、と」
そんな言葉を聞くと、日當の顔が田中に似て見えてくるから不思議だ。日當も田中と同じ、高校からプロ入りする道を目指している。
◆取材・文/柳川悠二(ノンフィクションライター)