特にこの恐ろしい熱帯熱マラリアを予防できるワクチンの開発が熱望されるところですが、まだありません。さらにマラリア治療薬に対して、耐性をもったマラリア原虫発生の報告もあります。一般的なマラリア治療薬には耐性の報告が多くあり、治療薬の選択の変化が激しくなっているのです。

 このまま地球温暖化が進んでいけば、2100年には北米、ヨーロッパ、オーストラリアまでがマラリアの流行地になるという研究報告もあります。また、異常気象で、洪水や台風、ハリケーンなどの自然災害が大規模化しています。これらの自然災害の後に、ハマダラカの生息密度が上がり、大きなマラリア流行が起こってくることも指摘されています。蚊は最も多くの人間を殺す生物なのです。

【プロフィール】
岡田晴恵(おかだ・はるえ)/共立薬科大学大学院を修了後、順天堂大学にて医学博士を取得。国立感染症研究所などを経て、現在は白鴎大学教授。専門は感染免疫学、公衆衛生学。

※週刊ポスト2023年4月21日号

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