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【新刊】毒ガス散布事件で指名手配された女性信者の逃亡劇を描く、桜木紫乃『ヒロイン』など4冊

 全国各地で冷え込む日も増え、秋の深まりを感じられるこの時期。秋の夜長にゆっくりと読みたいおすすめの新刊を紹介する。

逃げていたわけじゃない。見つからなかっただけ

逃げていたわけじゃない。見つからなかっただけ

『ヒロイン』/桜木紫乃/毎日新聞出版/2200円

 毒ガス散布事件で指名手配された23才の岡本啓美。体形と化粧を変え別人の名で定住する。バレエダンサーになるよう強要した母との確執、再婚した父の妻と腹違いの妹への共感、男性信者に手記を書かせる女性ライターとの共闘など、女達の無言の連帯に凄みを感じる。桐野夏生著『OUT』へのオマージュも。17年後に最高裁で無罪が確定した元女性信者の実事件を思い出す。

ナポレオン(軍事)は、キリスト(宗教)、マルクス(思想)と並ぶ世界の三大変革者

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『ナポレオン街道 可愛い皇帝との旅』/伊集院静/小学館/2200円

 本書で初めてナポレオンのことを知る(恥)。故郷コルシカ島、パリ進撃途上のイタリア・コモ湖、最後の戦場ワーテルローなどゆかりの地から立ち上がる人間臭いナポレオン像。そこにカジノや競馬と個人的な趣味に逸脱していく著者の人間臭さも混じって、伝記と旅情が絶妙のバランスに。旅の相棒は故長友啓典氏。四半世紀前の旅なのに現代を刺す思索があるのにびっくり。

進む「恋愛離れ」と不変の「結婚願望」。脳科学も証明する、両者を繋ぐ解決策

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『恋愛結婚の終焉』/牛窪恵/光文社新書/1034円

 先頃のニュースには呆れた。ブライダル補助金!? それで少子化が止まるとでも!? 著者は「恋愛」「結婚」「出産」がセットになった(歴史の浅い)常識を検証し、恋愛と結婚は「混ぜるなキケン」と訴える。乱暴に言うと恋愛はときめく関係(興奮系)、結婚は肩を並べて共に歩む関係(安息系)。提言通り多様な結婚や出産を認める国にならないと、この国本当に沈没しちゃいそう。

強欲資本主義とアートミステリー。読後感も心地いい痛快作

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『半沢直樹 アルルカンと道化師』/池井戸潤/講談社文庫/935円

 大阪西支店の融資課長である半沢直樹。今後M&A(企業の合併&買収)を収益の柱にするという頭取の方針に沿って、茶坊主の上司からある案件が持ち込まれる。半沢が担当する美術系出版社をIT企業が買収したがっている、ついては出版社を説得しろと。この強引な買収劇の裏には何が? 「強欲と出世」vs.「友情と芸術」。お宝発見の興奮もあって、半沢の倍返しが気持ちい〜ぃ。

文/温水ゆかり

※女性セブン2023年10月26日号

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