「自称ミュージシャンの男が逮捕」への違和感、抗議を込めて
──名刺には「自称artist(アーティスト)」と書かれています。どのような意味を込めていますか?
昔、テレビかなにかで、自称ミュージシャンの男が逮捕された、というニュースが流れたのを聞いて、「え? ミュージシャンって資格が要るんだっけ?」と疑問に思いました。アーティストには資格なんか必要ないわけですから、多少の抗議の意味も込めて、ずっとそう名乗ってます。この肩書を見るとたいていの方は「自称だって」と笑いますけど、「当然だよね」とインプロバイザーの方々にいわれたのには敬服しました。
──ただ現実として、「売れる/売れない」や「有名/無名」といった客観的評価はありますよね。絵が何十億で売れるアーティストもいれば、そうでない人もいる。資本主義経済に組み込まれたアート活動をどう受け止めていますか?
経済活動とアートが重なる部分は確かにありますし、大事だと思います。でも僕が言うまでもなく、アートはそれだけではないし、「売れる/売れない」とか「有名/無名」といった既存の価値観や、ものの見方をひっくり返していくことが、アートなのではないか。
僕のアート活動の根っこもそこにある気が最近するんです。このことを強く気づかせてくれたのは、姫野カオルコさんの小説『彼女は頭が悪いから』です。僕がこの本を読んだことをキッカケに、姫野さんには映画『過去負う者』のゲストトークに来ていただきました。テーマが通底していると思ったからです。