ライフ

バズる駐日ジョージア大使が語る「SNSでの緻密な心がけ」類語辞典も活用「しっくりこない言葉は使いたくない」【連載「日本語に分け入ったとき」】

類語辞典も活用するというジョージア全権特命大使のレジャバ氏

類語辞典も活用するというジョージアの特命全権大使・レジャバ氏

 日本語を母語としないながらも、今は流暢でごく自然な日本語で活躍している外国出身者は、どのような道のりを経てそれほどまで日本語に習熟したのか。日本語教師の資格を持つライターの北村浩子氏がたずねていく。最終回は、SNSで33万人以上にフォローされる「広島育ちのバズる駐日ジョージア大使」ティムラズ・レジャバさんにうかがった。【全4回の第4回。第1回から読む

 * * *
 レジャバ大使が赴任する前、多くの日本人に名を知られていたジョージア人と言えば大相撲の力士たちだろう。黒海、臥牙丸、栃ノ心。相撲界の歴史に名を刻んだ方々だ。大使館の壁には栃ノ心の現役時代のポスターが貼ってある。

 そうだ、昔から不思議に思っていたのだけれど、外国出身の力士はなぜあんなに日本語がうまいのだろう?

「相撲の動きと言葉が一体化しているからじゃないかなあ。たとえば、押し出そう、というときに、この動作を言葉にすると押し出しだ、ということが頭に刻まれて、体の動きと合致する。心にフィットする。それを繰り返すことで、とても自然な日本語が身に付くんじゃないかと思います。

 彼らは自分の人生をかけて相撲をやっているから、いろんな取り口や技術を覚えていく中で『右四つを狙う』とか『はたき込む』とか、勝つための思考が言葉と結びついているんですよね。気持ちがちゃんとそこにあるからうまく聞こえる。そんなに難しいことを言っているわけじゃないけど、体と心と言葉ががっちり連動しているから、流暢に聞こえるんだと思います」

 明晰な分析に頷かずにはいられない。大使の、人の心をとらえる言語化の巧みさにあらためて感じ入る。

 言語化といえば、大使とジョージアのファンを増やしたのはやはりSNSでの発信だろう。投稿するうえで、心がけていることとは──。

「自分の投稿が注目されているとしたら、理由の一つは『浮いているから』だと思います。社会的に知名度のある方はSNSで気持ちを表さない傾向がありますが、自分は隠さずに感情を出している。だから際立って見えるんでしょう。

 本当の自分を見てもらいたいので、しっくりこない言葉は使いたくない。状況や、そのときの心理に一番近い表現を類語辞典で探したりもします。読む人に訴えかけるために、大げさというか、意識して強い言葉を使って書くこともありますね。私はジョージア政府から給料をもらっている外交官なので──日本の税金で働いていたら叩かれるのかもしれないけれど──ジョージアの外務省に所属している人間だから、感情を表出させた投稿をしても、まあいいかなと思っています。

 ただ、いつも注意しているのは『見渡さなければならない』ということ。誰かを嫌な気持ちにさせたり傷付けたりしないよう、ポストする前に第三者の意見を聞くこともあります。間違ったイメージを与えたくないですし、言い回しひとつでも印象はすごく変わりますよね。気軽な投稿もありますけど、限られた文字数で伝えるためにいろいろ工夫しています」

関連キーワード

関連記事

トピックス

自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
【入浴中の不慮の事故、沈黙守るワイルド恋人】中山美穂さん、最後の交際相手は「9歳年下」「大好きな音楽活動でわかりあえる」一緒に立つはずだったビルボード
NEWSポストセブン
トンボをはじめとした生物分野への興味関心が強いそうだ(2023年9月、東京・港区。撮影/JMPA)
《倍率3倍を勝ち抜いた》悠仁さま「合格」の背景に“筑波チーム” 推薦書類を作成した校長も筑波大出身、筑附高に大学教員が続々
NEWSポストセブン
結婚披露宴での板野友美とヤクルト高橋奎二選手
板野友美&ヤクルト高橋奎二夫妻の結婚披露宴 村上宗隆選手や松本まりかなど豪華メンバーが大勢出席するも、AKB48“神7”は前田敦子のみ出席で再集結ならず
女性セブン
NBAロサンゼルス・レイカーズの試合を観戦した大谷翔平と真美子さん(NBA Japan公式Xより)
《大谷翔平がバスケ観戦デート》「話しやすい人だ…」真美子さん兄からも好印象 “LINEグループ”を活用して深まる交流
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
「服装がオードリー・ヘプバーンのパクリだ」尹錫悦大統領の美人妻・金建希氏の存在が政権のアキレス腱に 「韓国を整形の国だと広報するのか」との批判も
NEWSポストセブン
野球人・江夏豊が球界に伝えておくべきことを語り尽くす(撮影/太田真三)
【江夏豊インタビュー】若い才能のある選手のメジャー移籍は「大いに結構」「頑張ってこいよと後押ししたい」 もし大谷翔平と対戦するなら“こう抑える”
週刊ポスト
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《私には帰る場所がない》ライブ前の入浴中に突然...中山美穂さん(享年54)が母子家庭で過ごした知られざる幼少期「台所の砂糖を食べて空腹をしのいだ」
NEWSポストセブン
亡くなった小倉智昭さん(時事通信フォト)
《小倉智昭さん死去》「でも結婚できてよかった」溺愛した菊川怜の離婚を見届け天国へ、“芸能界の父”失い憔悴「もっと一緒にいて欲しかった」
NEWSポストセブン
11月下旬に札幌ススキノにあるガールズバーで火災が発生(右はInstagramより)
【ススキノ・ガルバ爆発】「男は復縁の望みをまだ持っていた」火をつけた男は交際相手A子さんを巻き込んで死のうと…2匹の犬を失って凶行に
NEWSポストセブン
再婚
女子ゴルフ・古閑美保「42才でのおめでた再婚」していた お相手は“元夫の親友”、所属事務所も入籍と出産を認める
NEWSポストセブン
54歳という若さで天国に旅立った中山美穂さん
【入浴中に不慮の事故】「体の一部がもぎ取られる」「誰より会いたい」急逝・中山美穂さん(享年54)がSNSに心境を吐露していた“世界中の誰より愛した人”への想い
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《真美子さんのバースデー》大谷翔平の “気を遣わせないプレゼント” 新妻の「実用的なものがいい」リクエストに…昨年は“1000億円超のサプライズ”
NEWSポストセブン