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高田文夫氏が回顧、画伯であり宗匠だった山藤章二さんと句会“だくだく会”での思い出

山藤章二さんとの思い出を振り返る(イラスト/佐野文二郎)

山藤章二さんとの思い出を振り返る(イラスト/佐野文二郎)

 放送作家、タレント、演芸評論家、そして立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、山藤章二さんと句会“だくだく会”について綴る。

 * * *
 本当に公私共丸ごとお世話になりっぱなしだった山藤章二先生(87歳)が静かに亡くなった。45年つづけた「週刊朝日」の“ブラック・アングル”では画伯であり、先生の呼びかけで集まった句会“だくだく会”では宗匠であった。

 駄目な句ばかり作っていようと集まり30年つづいた。目黒の人だったので俳号(俳句を作る時の名前)は自ら“三魔”と名乗った。「目黒のさんま」のシャレである。“だくだく会”とは駄目な句以外にも、落語の演題に「だくだく」というのがあり、それにもひっかかっている。

 集まったメンバーは落語好きばかりで玉置宏(俳号は一顔。当時市ヶ尾に住んでいたから)、フジTVの横澤P(漂金。ひょうきん族のプロデューサー)、今は亡き我が友立川左談次(斜断鬼、芸風とドンピシャ)、私は可愛く(風眠。ふみおでフーミン)、他にも松尾貴史や林家たい平、野末陳平など14人程。

 いつも神楽坂の小料理屋やらうなぎ屋に集まり飲む食べる喋る方が中心でほとんど句を作らない。

 駄句の中で私が宗匠に絶賛されたのが

《本州に球春四国北海道》

「スケールが大きい」「カーンという打球音がきこえてくる」「野球小僧には待ちきれない春だネ」と言われ嬉しくて帰り道小便チビッた。

 2013年には講談社から『駄句だくさん』(山藤章二・駄句駄句会編)というのが出ている。その本の中から宗匠の句。

《十字路を西陽が分けるネガとポジ》

 ネガとポジは人生の中にもあると大いに盛りあがった。

《かたつむり千歩あるいて枝の先》

「かたつむりには足があるのか」論争になった。宗匠「千というのは中国風の誇張。一日千秋とか千客万来とか」。私はしみじみ「なんでも知ってるなぁ」と思った。

《井の中の蛙は 天の深さ知り》

「天の高さ」ではなく「深さ」が凄い。駄句でもなんでもない。大マジ。

 そして大好きでひたすら仲の良かった立川談志家元を詠んだ句。

《寒そうに肩をすぼめて談志の出》

 みごとに師匠を活写。

 私は作家をやりながら談志の弟子となり、そのあきれる程の面白さ、名人芸に惚れて山藤章二企画・プロデュースで「立川藤志楼vs高田文夫 ひとり時間差落語会」をあの新宿紀伊國屋ホールで丸10年間開催した。80年代から90年代、新宿の粋な風物詩と伝説になった。今の若い噺家は知らない。

※週刊ポスト2024年11月1日号

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