国際情報
韓国政界アウトレイジ

韓国戒厳令の後始末に奔走した与党「国民の力」韓東勲氏の娘に「MIT不正入学」疑惑 剥いても剥いても疑惑が出てくる“タマネギ男”が追及する泥仕合

前途多難の国民の力代表・韓東勲氏(中央、時事通信フォト)

前途多難の国民の力代表・韓東勲氏(写真中央、時事通信フォト)

 尹錫悦(ユンソンニョル)大統領(63)が45年ぶりとなる非常戒厳令を発令し、国内が大混乱に陥った韓国。今回の弾劾訴追で尹氏の「早急な職務執行停止」を主張し、一度は賛成を表明した与党・国民の力代表の韓東勲(ハンドンウン)氏(51)は、党内協議の末、訴追反対に転じたが、廃案に追い込んだ後は「大統領の退陣まで韓蕊珠(ハンドクス)首相と緊密に協議し、民生と国政に滞りなく取り組む」との声明を発表した。

 その後、さらに一転して弾劾訴追案に賛成、訴追案は成立し、代表続投に意欲を見せたが、今度は党の最高委員5人全員が辞任、自身も16日に辞任表明に追い込まれた。

「ソウル大法学部卒の元検察官で、ソウル中央地検時代には尹氏とともに政界や企業の腐敗一掃のために戦った、同志ともいえる人物です。

 尹政権誕生とともに初代法務部長官に指名され、今年4月の総選挙で国民の力が大敗したのを受けて7月に新たな党代表に選出。尹氏の最側近として、彼の独善的な政治運営を諌め続けてきたとされています」(在韓ジャーナリスト)

 与党再建の要として、戒厳令による混乱の後始末に奔走してきた彼もまた、疑惑を抱える身だ。

「韓氏の娘は2023年4月にアメリカの名門マサチューセッツ工科大学(MIT)に合格しましたが、学術誌に掲載した論文の代筆疑惑や海外エッセイの盗作疑惑、ボランティア活動の2万時間水増し疑惑などが指摘され、“履歴書を美化した不正進学”との疑惑が持ち上がった」(同前)

 当時、国民の力の非常対策委員長だった韓氏は「論文は代筆ではなく添削」などと反論。検察も経歴詐称について「嫌疑なし」との結論を出したが、漢陽女子大学(ソウル市)助教授の平井敏晴氏は、疑惑が蒸し返される可能性を指摘する。

「野党第二党『祖国革新党』の曹国(チョグク)代表(59)がこの問題を徹底追及してきました。文在寅政権時代に法務部長官を務めた曹氏自身、過去に娘の大学不正入学疑惑が浮上した人物で、入学が取り消された経緯がある。“私の娘を捜査したのだから韓氏の娘も捜査しなければ公正ではない”と猛批判してきた。これから韓氏が政権運営を担うので、再び野党が攻撃材料にする可能性があります」

 曹氏は娘の不正入学疑惑以外にも数々の疑惑が浮上し、「剥いても剥いても疑惑が出てくる」として「タマネギ男」なるあだ名も付いた。だが4月の総選挙で新党を立ち上げるや、反尹政権を求める有権者の受け皿となり、12議席を獲得した。

「疑惑まみれの男が疑惑を追及するという泥仕合になっています。曹氏は複数の裁判が進行中で、うちひとつは12月12日に最高裁で有罪判決が確定した。失職して収監される見込みですが、彼の意思を継いだ祖国革新党の議員たちが韓代表の疑惑を追及し続けるでしょう」(韓国の全国紙記者)

 窮地に立つ韓氏。疑惑を断ち切り、清廉な政治を実現できるのか。

※週刊ポスト2024年12月27日号

あわせて読みたい

関連キーワード

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト