警察本部を訪問し、グルーミングギャングについて視察するジェームズ・クレバリー内務大臣とチェルムズフォード選出のヴィッキー・フォード議員(右から2番目)(時事通信フォト)
記録されなかった「少女の声」
「ある日、少女が行方不明になったと、生活していた児童養護施設から通報があり、数日後、警察が男性の家で全裸の状態になった少女を発見。彼女は警察に被害を報告したものの、報告書が一切提出されていなかったと、後に明らかになりました。つまり、少女の声は記録すらされていなかった」(同前)
マスク氏もこうした報道を受け、2025年1月に「共謀の罪を犯した」とスターマー氏を糾弾。それに対してスターマー氏はすぐさま記者会見で「検事総長だった5年、この疑惑に真正面から取り組み、再捜査を決めた」と宣言している。
しかし国内外の世論の怒りは収まらず、ついに英国政府は2025年6月、数十年にわたり多数の少女や若い女性を手なずけて性加害・搾取を行ったグルーミング・ギャングを根絶するため、厳しい新法を導入すると発表し、被害者に謝罪した。
全国規模でグルーミング・ギャングの取り締まりが始まり、成人が16歳未満の子どもと性行為をした場合、今後は最も重いレイプ罪に問われると明言された。議会は主にパキスタン出身のアジア系の男が「大きな比率を占めている」と指摘し、今後は加害者の民族と国籍の記録が義務付けられると明らかにしている。
リシ・スナク前政権は、イングランドとウェールズの全43警察から有資格の警察官とデータ分析者を集め、グルーミング・ギャング対策のタスクフォースを設立。2024年5月までに容疑者550人が逮捕され、被害者4000人が特定された。その後、2025年6月、現政府は全国のグルーミング・ギャングの深刻さを受け止め、問題の解決に本腰を入れる構えを見せている。
数千人の少女の人生が破壊されていた英国。その代償は、これから払うことになる。