相談者の父親の定期預金も奪っていった
こうして、わずか3年で小栗さんはすべてを失ってしまった。死ぬまで安泰な暮らしを保障してくれたはずの1億5000万円の土地建物、5000万円の預金。1人の人間を地獄の底に突き落としておきながら、まだ悪事を続けるつもりだった悪党たちのふてぶてしさには驚かされる。そして土地を失ってもなお、美咲が勤めるガールズバーに通い続け、せっかく口座に残された3000万円を減らし続ける小栗さんにも。
おまけに、話はまだ終わらなかった。次に動いたのは、金沢の旅に同行していた佐藤かよ子だ。佐藤は、小栗さんを連れて、介護施設で暮らしている認知症の父親を訪ねた。父親名義で400万円の定期預金があるとわかったからだ。
佐藤は、施設の職員に対して、酔っぱらった小栗さんが、ガールズバーの音響機材やガラス戸を壊してしまったのだと説明した。それから2人は、父親の口座がある地方銀行に向かい、同じ説明をした。銀行の担当者は、介護施設とガールズバーに電話を入れた。施設の職員は佐藤かよ子の説明を繰り返し、ガールズバーの電話は美咲が取った。銀行は、父親の定期預金を解約した。