昨年、秋田で出没したクマを駆除作業する様子
過去には苦情が殺到した市町村も
クマの駆除をめぐる問題といえば、2023年の秋田県美郷町の事案が記憶に新しい。当時を知る全国紙記者が振り返る。
「秋田県美郷町の畳店にクマの親子3頭が侵入。捕獲された後、猟友会によって駆除されました。地元住民などからは『安心した』などと声が上がる一方、役場には『駆除しないでほしい』などの抗議の電話が殺到。多くが県外からの電話でした。
なかには『クマを殺すならお前も死んでしまえ』などの過激な電話もあり、秋田県知事が『これに付き合っていると仕事ができません。業務妨害です』と言及する事態になっていました」
今回も駆除に踏み切ったことで、福島町役場にも苦情電話が殺到している状況だ。
取材に応じた福島町役場の職員が明かす。
「今朝からですね、ひっきりなしに電話がかかってきています。20件くらいでしょうか(11時取材時点)。『クマを殺すな』という感じで動物愛護団体の方からや、個人の方などさまざまですね。こちらとしては『はい』『はい』とお話しをお聞きして対応している形です。強い口調で、『クマがいる土地に人間が住んでるような形なので、それでクマを殺すのはどうなのか』などとおっしゃる方もいらっしゃいました」
前出・猟友会の担当者は野生クマが人里に降りてくるという流れは止まらないのではと危惧する。
「最近の傾向として、クマがシカの肉をよく食べているんですよ。大雪で餌がなくて死んでしまったシカや、ハンターさんが獲ったあとに残された個体……クマは、そういったものを食べているわけですね。それで、だんだんと肉食に慣れてきている、そんな印象です。
ですから、やはり基本に立ち返って、クマを人里に呼び寄せない取り組みが本当に大事になってきます。ゴミをゴミステーションに早めに出さないとか、クマの餌になりそうなものを長い時間、外に置かないとか、そういった対策の徹底が求められるということですね」
「市街地にクマは出ない」という一般論は通用しなくなってきているのかもしれない。