太刀持ちに元大関の高安を従えて熱田神宮での奉納土俵入りを行なった(撮影/太田真三)
出稽古でガチンコ対決 豊昇龍からのエール
場所前には部屋の唯一の稽古相手である十両の白熊が故障したことで、異例の出稽古を行なったが、想定外だったのは、横綱・豊昇龍と偶然鉢合わせたことだ。
同い年で手が合う平戸海のいる境川部屋を出稽古先に選んだのだが、豊昇龍も同じ境川部屋に出稽古に来たのだ。
千秋楽に結びの一番となる先輩横綱との取組が、思わぬかたちで実現した。マイペース調整のつもりが、いきなりのガチンコ稽古となり、4番連続で三番稽古を行ない、1勝3敗と土俵に転がされた。
稽古後、大の里は「内容は良くなかったが、稽古ができて良かった」と話し、翌日からは出稽古を封印。再び部屋での調整を続けた。横綱昇進後、挨拶回りやパレードなどのイベントが続き、調整がうまくいっていないように見えた大の里だが、それでも優勝候補の筆頭は変わらなかった。
「暑さ対策として稽古時間を短くして夏バテ防止に務め、部屋の稽古では基礎基本を徹底させた。会場が蒸し暑い愛知県体育館から冷暖房完備のIGアリーナに変更されたことも夏が苦手な大の里にとって追い風となると見られていた」(相撲担当記者)
場所前、豊昇龍から「新横綱場所はいろいろ大変だから頑張ってほしい」とエールを送られた大の里にとって「唯一無二の横綱」への起点場所となるか。
取材・文/鵜飼克郎
※週刊ポスト2025年8月1日号