被告人は心菜さんと心中しようと計画した(画像はイメージ、Getty)
暗いトンネルに落ちる感覚に陥って…
まず浮かんだのは実父だった。盆や正月に心菜さんを連れて帰っていた。成長を続ける長女を見せて、被告人としては「大きくなったね」と言って欲しいと思っていた。しかし、父は心菜さんを見るなりため息をついてこう言った。
「これからどうするね」
負担が増えることを思っての言葉だと思われるが、被告人にとっては「私はこのまま生きたらダメなの?」と心臓を抉られるような思いになったという。「周囲の助けを得ているから大丈夫」と気丈に答えたが、傷ついた記憶が残っていた。
義母からの言葉について、被告人は実例を挙げなかったが「これを言ったら怒ると思うけど」と前置きをした上で、心菜さんについて心臓を抉られるようなことを言われたという。
こういった過去が夫の不機嫌そうな態度をきっかけによみがえり、被告人は暗いトンネルに落ちたように視野が狭くなったという。「心菜は頑張って生きているのに」「なぜ身内が、そんなことを」という思いから、徐々に「心菜はいない方がいい」「私もいる意味がない」と思考が飛躍し、無理心中の方法の検索を始めた。
最終的な犯行の決意については、被告人はこのように答えた。
「(1月5日の)訪問看護が帰ったら、それまでしようと思ってなかったのに、急に『あ、死のう』と降りかかったようで。そこから、周りを見ずに死ぬことばかり考えました」
長女への想いが途切れてしまったのか——。この日の公判で、弁護人は被告人を気遣ったのか、犯行時の様子についての質問をしなかった。当日の様子については、7月11日の公判で、検察官が読み上げた被告人の供述調書で説明されていた——。次の記事では、娘の呼吸器を外し、無理心中を計った被告人の心境を報じる。
◆取材・文/普通(傍聴ライター)