男性は超低体重で生まれた。小児まひの後遺症で足が不自由だ。母は「恥ずかしいからあんたと一緒に歩きたくない」と言い、父は「俺は仕事が忙しいんだ」と怒鳴って家庭を顧みなかった。幼いころから親の期待に応えられない自分を恥じて生きてきた。学校ではいじめられた。小学4年のときには近所の男性から性暴力を受けた。執拗に性器を触られて笑われた。《人に笑われる、恥ずかしいおちんちんなんだ》。そのときからその思いに支配された。
男性は自助グループに通い、自分にとっての露出は、あのときに笑われた恥ずかしい自分が男として認められるための行為だったのだと気づいた。「(高校生に『キャーッ』などと声を上げられる)相手の反応で『男として認められた』と感じていた」。両親からは「男らしくしろ」と言われて育ち、男性は「思春期に、男らしさを誤解したのかもしれない」とも振り返る。
服役中に離婚した。刑務所でキリスト教と出会い、出所後に洗礼を受けた。教会で知り合った女性と再婚した。いまの妻はすべてを知った上でそばにいてくれている。10年以上、再犯はしていない。8年前からは自分の経験を生かしてカウンセラーとして働き、加害者など性の問題を抱える人たちの相談を受ける。
「自分より弱い人をいじめたりコントロールしたりすることで強さを証明しようとする。それが、子どもや女性への性加害につながる。男らしさ、女性はこうあるべき、という社会的な価値観の強要や偏重をなくすことが必要ではないか」
性加害者や性依存症者には男女を問わず、いじめや性虐待を受けた人が多いという。
「そもそも自分を愛せていない。自分を大切にできないから人を大切にすることができない。加害を止めるには加害者ケアも必要。それが被害者のためにもなる。私のような加害者を一人でも多く減らせば、被害者も減る」。男性は力を込めて言った。
(了。第1回から読む)