ご祝儀は2000円
食事で苦労しつつも、結婚式の準備は進んでいく。2日間で3つの主な式を挙げたが、その前後にも「お母さんの式」「お父さんの式」「自宅でご飯を食べて踊る式や家をデコレーションする式」と1週間ほど“式づくし”だったという。
「昔のヒンドゥー教の風習では、結婚式に女性の家族が一生分のお金を使うのが当たり前なところもあったようで。それこそ2000万円ほどかかるケースもあったと聞いています。ただ、それも地域によって違いは大きいですし、時代も変わっているので私たちは日本で式を挙げるのと変わらないような金額でした。
ただ、インド人同士の結婚だと500人くらい招待するのが普通なのですが、私たちは200人ほど。逆にその規模の式場を探すのに苦労しました(笑)ちなみにご祝儀という概念がほとんどなくて、払ってくれても日本円で2000~3000円ほど。大赤字ですね(笑)」
文化の違いによる苦労があったのも事実だが、高槻は「インド」に家族ができたことは自分の人生で大きな財産だと感じている。
「インドの方は愛情表現がストレート。日本だと、どうしても愛情を口にするのが恥ずかしいという空気が強い気がしますが、インドでは街中で見知らぬ人から“その服、かわいいね”と話しかけられたり、ストレートな愛情表現が多いんです。
もちろん親子間でも『愛してるよ』『かわいいよ』と口にします。旦那の実家では毎日、家族で一つのベッドに集まって、同じ布団を被りながらおしゃべりをするんです。修学旅行の夜みたいに(笑)。いまも旦那の家族とは週3回ぐらいテレビ電話していますし、家族の愛、絆はすごく強く感じます。」
これからも声優、舞台、ライブ、配信など多岐にわたる活動は続けていくが、今回の結婚を経て、高槻の心には新たな目標も生まれた。
「日本で国際結婚をされた方は私たち以外にも大勢いて、いま苦労をしている人も少なくないと思います。こうして自分の口で伝えられるようになったいま、喜びから苦労、偏見などを声に出して伝えていきたい。
いま外国人が多く日本に滞在していますので国際結婚も珍しくなくなっていくと思います。みんなの誤解を解く……というのではなく、一人でも多くの人に知って、理解してもらえたらと思っています」
これまでの高槻の活動は決して平坦なことばかりではなかった。心身のバランスが伴わず、活動休止という苦しい時期もあった。そんな彼女だからこそ人の気持ちに敏感で、寄り添いたいと思うのだろう。彼女の未来が明るいことを祈っている。
(了。前編から読む)
◆取材・文/赤木雅彦 撮影/五十嵐美弥