高校時代の安福容疑者
幼い長女が亡くなった
安福容疑者は、奈美子さんとは面識がなかった。一方、悟さんとは「高校の同級生」という接点があった。
同じソフトテニス部に所属し、何度か悟さんに交際を申し込んだことがあったという。だが思いは届かず、安福容疑者の愛情はゆがみ始める。別の大学に進んだ悟さんのテニスの練習場で待ち伏せるなど、ストーカーまがいの行動もあった。
「そのときは大学近くの喫茶店に連れて行って“気持ちには応えられない”と伝えたら、わっと泣き始めて……」(悟さん)
それ以降、悟さんの前に安福容疑者が姿を見せることはなかった。
別の男性と結婚し、子供にも恵まれた安福容疑者。その頃の彼女について、こんなエピソードがある。
「小学校の入学式で子供同士のトラブルになり、安福容疑者が激高して、学校を通じて相手の親に謝罪を要求したことがあったそうです。大ごとにするようなことではないのに、烈火のごとく怒り狂っていたとかで……」(容疑者を知る学校関係者)
一方で失意もあった。
「事件の10年ほど前に、安福容疑者はまだ幼かった長女を血液の重い病気で亡くしています。そのことを親族からひどく叱責され、落胆していたようです」(捜査関係者)
安福容疑者と悟さんが“再会”したのは’99年6月。愛を拒否されてから20年以上が経っていた。
「ソフトテニス部の同窓会でした。容疑者から話しかけてきて、“結婚して、仕事も家事もバリバリやって頑張ってる”と言っていました。“いいね、頑張ってよ”くらいは返しましたが、あまりつっこんだ会話はしませんでした」(悟さん)
事件が起きたのは、それから5か月後だった。
「そっけない態度の悟さんに、再び相手にされなかったと逆恨みした可能性もあるとみています」(前出・全国紙社会部記者)
あまりに身勝手な凶行に走った安福容疑者だが、それから26年間、事件現場の近隣で怯えながら暮らしていたという。
「日中は市内の大型スーパーの事務員としてアルバイトをしていましたが、周囲と深くコミュニケーションを取ってはいなかったようです。自宅の近隣でも、安福容疑者の夫の姿は見かけられているのに、彼女の話はほとんど出てこない。事件へのかかわりは家族や周囲にも話せず、引っ越しもできないなか、“逃げ切りたい”という思いで日々を過ごしていたのです」(前出・全国紙社会部記者)
26年間の沈黙は、悟さんにも長男にも、あまりにも長すぎた。
※女性セブン2025年11月27日号
