竹田津実氏
玉置は両地区の違いをこう語る。
「私はいま斜里町のほうに住んでいますけど、都会とたいして変わらないです。ここはクマが出るなんて、ほとんど考えないで済みます。農村部には出ますよ。農家の人はクマを見たことあるっていう人、いますから。
私は役場の職員なんですけど、10年前に初めてウトロの担当になりまして。そのとき初めてクマを見ました。でも、ウトロの人はクマが出ても許容度がすごく高いんです。そういう地域だということを知って住んでいる方が多いので。われわれの指標って、最終的には地元民の許容度なんです。地元の方がヒグマを駆除して欲しいとなったら、たとえ世界遺産エリアだといっても捕獲に舵を切らざるをえないと思いますよ」
おそらく国内でウトロほどクマのことを理解し、クマと密接な暮らしをしている地域は他にないだろう。無論、クマのことを許さざるをえないのは、こんな側面もある。ある自然ガイドはこんな本音をもらしていた。
「駆除とは言えないでしょう。みんなクマで食ってるんだから」
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後編記事では、中村計氏が感じたクマに対する世間の「気分」の変化や、知床財団のスタンスなどについて詳しくレポートしている。
(後編に続く)
【プロフィール】
中村計(なかむら・けい)/1973年生まれ、千葉県出身。ノンフィクションライター。著書に『甲子園が割れた日』『勝ち過ぎた監督』『笑い神 M-1、その純情と狂気』など。スポーツからお笑いまで幅広い取材・執筆を行なう。近著に『さよなら、天才 大谷翔平世代の今』
※週刊ポスト2025年12月12日号
