写真集の初回分出荷特典は、代表作『C62動輪』の銀塩プリント(裏面に直筆サイン入り) (C)広田尚敬

写真集の初回分出荷特典は、代表作『C62動輪』の銀塩プリント(裏面に直筆サイン入り) (C)広田尚敬

「現場に行ってから考える」

 広田氏の名作のひとつに、霧に覆われた福島盆地を奥羽本線の貨物列車が走る光景を捉えた写真がある。幽玄な雰囲気が漂う美しい写真だ。「現場でその光景を見て心に迫るものがあったのでシャッターを押した」という。

「僕は現場に行ってから考えます。絶対、現場が大事です。あらかじめこういう写真を撮ろうと決めているわけではありません。鉄道や自然が作ってくれるビュー(風景)は自分が頭で考えるよりずっと素敵ですから」

 広田氏が切り拓いた鉄道写真というジャンルは、現在では多くのファンが定着し、「撮り鉄」と呼ばれるアマチュア写真家も増えている。

今年8月、しなの鉄道の沿線で「撮り鉄」が鉄道写真を撮るために無断で住宅の敷地に入ったばかりか、撮影のために庭木を切るという事案が発生した。近年、そうした「撮り鉄」のマナーが社会問題化している。

「何が何でも自分が撮りたい風景を撮る、そのために邪魔なものは排除するという考え方なのでしょうね。しかし、写真は無理して作るものではありません。風景との出会いを慈しみ、あるがままをいただくものです。この『いただく』という姿勢が大切です」

取材・文/鈴木洋史

【プロフィール】
広田尚敬(ひろた・なおたか)/写真家。1935年、東京生まれ。幼少期より鉄道に興味を持ち、中央大学卒業後、会社員を経て1960年にフリーランスとなる。著書は絵本から図鑑や写真集まで幅広く、200冊以上。1988年設立の日本鉄道写真作家協会初代会長を務めた。集大成となる写真集『鉄道写真 広田尚敬』(小学館刊、税込み5万5000円、B4変型判ケース入り、318ページ)が発売中。

(告知)
■『鉄道写真  広田尚敬』刊行記念写真展
入場:無料
日時:2025年12月1日(月)〜19日(金)の平日9:00〜17:30
場所:小学館ビル1F展示室 ※土曜・日曜は休み
(東京都千代田区一ツ橋2-3-1  株式会社小学館本社ビル1F正面玄関)
※地下鉄神保町駅 A8出口直結【都営三田線・新宿線、東京メトロ半蔵門線】

■広田尚敬作品展「いつかまた 軽便鉄道」(2026年1月5日~2月1日)トークショー
広田尚敬氏と、『鉄道写真 広田尚敬』(小学館)の担当編集者・三浦一夫氏によるトークショー。展覧会の作品解説のほか、75年以上のキャリアの中で思い出に残る鉄道や撮影時のエピソードなどを聞ける貴重な機会。
参加費:300円
日時: 2026年1月17日(土) 14:00~16:00(開場13:30)
場所:JCIIビル6階会議室(写真展会場は、1階JCIIフォトサロン)
(東京都千代田区一番町25番地)
※東京メトロ半蔵門線半蔵門駅下車4番出口より徒歩1分
定員:100名 ※定員になり次第締め切り(要予約、座席指定なし)
お申込み・お問合せ先:03-3261-0300 (受付時間:平日・土日ともに10:00~17:00)

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