安倍元首相が銃撃された現場付近で取り押さえられる山上徹也被告(共同通信社)

安倍元首相が銃撃された現場付近で取り押さえられる山上徹也被告(共同通信社)

30歳から5年間、毎月13万円を受け取り

 山上被告の金銭状況の“リアル”はどのようなものだったのか。

 母親は合計で総額約1億円ほどを献金したが、2002年に破産してから親族が統一教会側と協議し、2005年から返金されていたことが検察によって示されている。裁判を傍聴したライターの普通氏が語る。

「返金は献金額の一部である合計5000万円。山上被告自身は、当時30歳だった2010年9月から2014年(月不明)まで毎月13万円を受け取っていたといいます。受け取り方法について、本人はよく覚えていないようでした」

 2015年に、山上被告の兄が自殺。兄とは、母の献金に対する対応や返金などについて、考え方の違いから距離があったという。それでも死に直面すると、非常に大きなショックを受け、旧統一教会に反抗を続けた兄の無念さから、山上被告は「自身にも何かできたのではないか」と深い後悔の念を抱いたという。

 そんな中、兄の死に対する母の価値観に触れ、被告人は統一教会への恨みを深めることになったという。前出・普通氏が語る。

「被告人は母親から『(統一教会に)献金を続けていたから兄は天国で幸せだ』、『苦しんでいたのは献金の返金を受けたため』などと言われたことで、それまで溜まっていた気持ちが爆発したと語られていました。

 母親について証人に立った精神科医は、彼女ほど『強烈に心酔している人ははじめてだ』と表現しつつ、母親も自身の弟を交通事故で亡くしたことに始まり、夫の自殺、子の病気などから、家族の救いを求めたい気持ちからの行動ではないかと推察していました」

 兄の死によって、旧統一教会に対する恨みの思いを強めた被告人。法廷にも出廷した全国霊感商法対策弁護士連絡会などの相談先もあったが、相談しなかった理由として、本人は「親族の件は(献金の一部)返金で、一応解決していることになるので弁護人に相談はしなかった」とした。

 出廷した宗教学者は「被告人に必要なのはソーシャルサポートだった」と証言。被告人は自身の思いを内に込めたまま、犯行への意思を強めていくのであった。

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