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【書評】『棺桶まで歩こう』 寛容さに満ちた「孤独死」でなく「孤高死」と呼ぶ

『棺桶まで歩こう』/萬田緑平・著

『棺桶まで歩こう』/萬田緑平・著

【書評】『棺桶まで歩こう』/萬田緑平・著/幻冬舎新書/1034円
【評者】堤未果(国際ジャーナリスト)

 長寿大国でありながら、日本では、「長生きしたくない」と口にする人が増えている。終末期に苦しいイメージがあるからだ。国民皆保険の恩恵を受けている私たち日本人は、他国に比べて気軽に病院に行くことができ、そこでたっぷりと薬を処方される。血圧に糖尿病に高脂血症、解熱剤に湿布薬……そう、なるべく長く生きさせるために。

 一度患者になったら最後、なかなか死なせてもらえない。入院中に食べられなくなったら、さあ大変と点滴をする。口からものが入らなくなれば胃に開けた穴から栄養を入れる。発作を起こすとすぐ救急車で運ばれるから、ここでも生存率は高くなる。がんになれば、手術に放射線に抗がん剤で腫瘍を叩く、苦しい治療を受けねばならない。近代医療と手厚い制度、日本は「ピンピンコロリ」が最も難しい国なのだ。だが本当にそうだろうか?

 そんな疑問をごく普通の病院治療に抱き、外科医から緩和ケア医に転向後、全く違う発想で、2000人以上を幸せに逝かせた著者は、はっきりと言う。

「違う。苦しいのは、体力の限界まで生かされるからだ」

 例えば国民の2人に1人がかかるがんは、巨大化しても、身体が動きさえすれば生きられる。むしろ余計なことをしなければ、枯れるようにゆっくり死んでいける病気なのだ、と。

 まずは抗がん剤をやめ、自宅で好きなことをさせ、家族と感謝を伝え合う。痛みは麻薬で取り除き、とにかく自分で「歩かせる」。これでみるみる元気になってしまうという。治療を勧める家族がいない、一人暮らしなら話は早い。著者は自らの意思で生き切る最期を「孤独死」でなく「孤高死」と呼ぶ。そんな暖かく寛容さに満ちた社会なら、長生きしたい人は増えるだろう。どんどん歩けば、幸福度は上がり、棺桶は遠ざかるのだ。

※週刊ポスト2026年1月16・23日号

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