公開日:2022.01.14 / 更新日:2022.01.27   

退職金の受け取り「一括」と「年金」どっちがお得?メリット・デメリットをFPが解説

 老後や介護生活の大きな支えとなる退職金。60才を目前に退職が近づいてくると、退職金について考えることも多いのではないだろうか。退職金は、一括で受け取るか、年金形式で受け取るか、どちらが得なのか? どんな違いがあるのか? ファイナンシャルプランナーの大堀貴子さんに解説いただいた。

お札がいっぱい重なった写真
退職金のもらい方についてFPが解説(写真/GettyImages)

退職金は4種類|一括と年金を選べる

 退職金は、勤続年数に応じて企業から支払われるものだ。実は、一括(一時金)で受け取るか、年金形式で受け取るかによって、税金や受け取れる額が変わってくることがある。

 まずは、退職金の種類について確認しておこう。

【1】退職一時金

 退職一時金とは、企業で積み立てているもの。勤続年数や基本給、役職など、会社への貢献度に応じて金額が増える。定年退職ではなく、自己都合による退職の場合は、何割かカットされるのが一般的だ。

 基本は一括での受け取りとなるが、企業によっては年金形式または一部年金形式併用で受け取ることができる。

【2】退職金共済

 退職金共済は、企業自身が退職金を運用しているわけではなく、企業が加入する共済から退職金を受け取る退職金だ。

 中小企業など企業内で独自に退職金制度を設けることが難しい場合、国が運営する退職金共済制度に加入し、従業員はそこから退職金を受取ることができるものだ。

 基本は一括での受け取りとなるが、年金形式で受け取ることも可能だ。

【3】確定給付企業年金

 確定給付企業年金とは、企業が外部の信託銀行など企業年金の運用会社に掛け金を支払い、退職金をその運用会社から受け取るもの。外部に預けられているため、企業の資産とは別で運用されている。

 また、受け取り金額が確定していることから、想定通り運用できなかった場合は、企業が不足分を補う必要がある。

 基本は年金形式だが、一括で受け取ることも可能だ。

【4】企業型確定拠出年金(DC)

 企業が決まった金額を拠出して、その運用を従業員本人が行うもの。運用で増えれば、その分退職金がたくさん受け取れるが、運用で損をした場合は退職金が減ってしまうデメリットもある。

 60才までは受け取ることができず、60才以降に一括か年金形式、一括と年金形式の併用と、受け取り方法を選択できる。退職後、他の企業に転職する場合には、その企業に引き継ぐこともできる。また、iDeCo(個人型確定拠出年金)に移行することも可能だ。

 まずは、自分の退職金がどんな種類なのかを把握し、一括でもらえるのか、年金形式でもらえるのかを確認しておこう。

退職金の「受け取り額」は一括・年金どっちがお得?

 退職一時金や退職金共済は、退職金の中でも大きな金額を占めるため、受け取り方法を選択できる場合は、慎重に考えるべきだろう。

 退職金の種類によっては、一括でもらうより、年金で長くもらったほうが受け取り額は増える場合がある。

 たとえば、一括と年金形式を選ぶことができる【3】確定給付企業年金は、一般的に年金形式にしたほうが受け取れる総額が増える。

 また、【4】企業型確定拠出年金は、iDeCoに移行して運用を継続することで、受け取る年齢によっては最終的な金額が増えることもある。

退職金にかかる「税金」は一括・年金どっちがお得?

 退職金は、勤続年数が長いほど大幅に税金が軽減されており、税金面で考えると、一括で受け取る方が、年金形式よりも有利になる場合がある。

・一括の場合

 一括で受け取る場合のメリットは、退職金所得控除が使えることだ。これは、勤続年数が長いほど非課税部分が大きくなる。課税される部分は、退職所得の金額まるまるではなく、1/2してからほかの所得と分離して課税される。

 たとえば、勤続約30年の人が退職金2000万円もらった場合、一括でもらうと、所得税は約11万円程度ですむ※1。

※1国税庁「No.2260 所得税の税率」をもとに試算(勤続年数30年と1か月で、退職金が2000万円だった場合。所得税の計算式は、退職所得控除額:800万円+70万円×11年=1570万円、2000万円-1570万円=430万円、430万円×1/2=215万円、215万円×10%-9万7500円=11万7500円)。

・年金の場合

 年金形式のメリットは、公的年金などの控除が適用されることだ。ただし、デメリットとして、控除額は60~64才だと控除額が少ないため、60才から受取ると不利になる。

 なお、確定拠出年金で掛け金を自己負担した場合は、拠出時に全額所得控除されていることから、受け取り時には考慮されない。

 たとえば、退職金2000万円の場合、年金でもらうと所得税は、約140万円程度かかることになる※2。

※2国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」をもとに試算(所得税の計算式は、60~64才:[80万円-60万円]×5%=1万円、65才以降:[168+80-110]×5%=7万円、25年間で1万円×5年+7万円×20年=145万円)。

退職金の受け取り方法はお金の使い方や資産状況で判断を

 退職金は一括でもらったほうが税金は有利になるが、一度に受け取ってしまうと、自分で計画して運用しなければならないため、あると使ってしまうという人には、年金形式が最適だろう。

退職金の受け取り・一括か年金かのメリットデメリット表
退職金をもらうのに一括か年金かの判断基準 表作成/大堀貴子さん

 年金形式であれば、これまでの給与のように受取ることができるため、老後に資産が尽きてしまう心配も少ない。ただし、早くに死亡した場合には、自分自身は受け取れないが、確定年金、終身年金の保証期間分は遺族が受け取ることになる。

 また、かなり稀なケースだが、企業からの年金は、倒産した場合には減額対象となる可能性もある。

 一方、住宅ローンが残っている、リフォームが必要であるときなど一括で受取ったほうががよい場合もあるため、退職金の受け取り方は、税金面やお金の使い方、資産など総合的に判断するのがよいだろう。

●退職金「一括」と「年金」のメリットとデメリット【まとめ】

所得税:「一括」大きく軽減。「年金」60~64才で控除額が小さい。毎年課税され、総額で大きくなる。

社会保険料:「一括」影響なし。「年金」保険料負担が増える可能性も。

資金計画:「一括」使ってしまう。運用失敗の可能性。「年金」安定的に受け取れる。

資金需要:「一括」住宅ローン返済やリフォームなどに使える。「年金」使いたいときに使えない。

文/大堀貴子さん

ファイナンシャルプランナー おおほりFP事務所代表。夫の海外赴任を機に大手証券会社を退職し、タイで2児を出産。帰国後3人目を出産し、現在ファイナンシャルプランナーとして活動。子育てや暮らし、介護などお金の悩みをテーマに多くのメディアで執筆している。

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