公開日:2018.08.30 / 更新日:2019.11.14    1

ペットの介護がテーマの漫画『犬を飼う…』に称賛の声止まず

 昨年逝去した漫画家・谷口ジローさんが27年前に発表した作品が、今再び注目を集めている。犬と猫を題材にした短編集を再編した本作が6月に発売されるや、たちまち重版され、称賛の声が止まない──ペットがいる人もいない人も必読の漫画を紹介します!!

人間とともに高齢ペットも増えている(写真/アフロ)

ペットの介護がテーマの異色作

老婆が年老いた犬を自分に重ね合わせるシーンは、作者の谷口さんが実際に犬の散歩中にかけられた言葉をもとに作られた。「人もペットも高齢化している今、親の介護や自分の老後も重ね合わせて共感するかたが多いのでは」(佐藤さん)

 今から27年前の1991年、ジュリアナ東京がオープンするなど、バブル景気の余韻を残し華やかさのあった時代。そんな中、ペットである老犬の死を描いた短編漫画『犬を飼う』が漫画誌『ビッグコミック』に発表された。

 この作品を担当した編集者の佐藤敏章さんが振り返る。

「当時、動物の漫画といえば、悪役と闘ったり飼い主を救ったりといった、現実離れした話ばかり。ペットが老い、飼い主がペットの介護に明け暮れるという、死の間際に着目した作品はなかったので、画期的でした」

リアルに描写される生と死

 本作は著者である谷口ジローさんの実体験をもとに描かれている。佐藤さんは谷口さんとの雑談の中で、「この話は漫画化すべき」と確信した。

「愛犬の介護が大変だと話されていましたが、看取った後は悲嘆に暮れるというより、1匹の犬の生涯を支え続けたという達成感を持たれているように感じました。ですから、ただ悲しいだけの作品にはならないと思ったんです」(佐藤さん)

 作品には愛おしさだけでなく、毎日続く介護をうっとうしく感じる正直な気持ちも描かれている。精緻な介護の描写は、ペットに限らず、両親や祖父母の介護と重ね合わせて共感する読者も多い。

 一方、同書収録の『そして…猫を飼う』『庭のながめ』では、身重な捨て猫をやむなく引き取ってからの日々が描かれる。こちらは親の顔になっていく猫と、すくすく育つ仔猫の“生”にあふれる描写が印象的だ。

『庭のながめ』のひとコマ
やむなく引き取った猫が出産し、子育てに励む姿を描いた『庭のながめ』のひとコマ。仔猫を新しい飼い主に譲るため、親猫が目を離した隙に仔猫を1匹離す。頼りないと思われていた親猫だったが、間もなく必至で仔猫を捜し始める姿が胸を打つ

今の時代だからこそ読んでほしい作品

 子供のいない夫婦の穏やかな日常も、もう1つのテーマである。

「作品に登場する夫婦は、谷口さんご夫妻に近い人物像だと思います。一緒に旅行に行った際は預けたペットを心配したり、預かってくれた人へのお土産選びに悩む姿が印象的なやさしいご夫婦でした。先生は作品作りにあたり、奥様のご意見を最も尊重していましたよ」(佐藤さん)

猫を抱える漫画家・谷口ジローさん
『遥かな町へ』(小学館刊)などは海外でも評価が高く、2011年にはフランス政府芸術文化勲章を受章。2017年に多臓器不全で逝去。享年69

 今回、決定版の編集を担当した今本統人さん自身も、『犬を飼う』の大ファンだった。

「高齢化で介護に直面したり、ペットを家族の一員と考える人が増え、家族の形態が変化してきた今の時代だからこそ、より多くの人に読んでほしいと思いました。動物が死に近づいていく様子は、フィクションとして映像化するのは難しく、漫画だからこそできた表現です」(今本さん)

 家族とは何か? 生きるとは何か? 人間より寿命が短いペットが私たちにそっと教えてくれていると気づく。

読者からも感動の声が続々

 マンガを読んだ読者からは、感動の声が続々と届いている。その一部を紹介しよう。

「昨年末に愛犬を看取り、谷口さんと同じく“死の間際、苦しんでいるかどうかだけが気がかり”でした。現実を受け入れ、感謝できるようになる日が来ることを信じたいです」(Mさん・50代・女性)

「日常レベルの話なのに、心を動かされて鳥肌が立つほどの感覚でした。読み終わって気づいたのは、“日常は自分たちが思っているよりずっと、感動があふれている”ということでした」(Tさん・30代・男性)

「うちにも10才になる老犬がいるので、涙なしでは読めませんでした。実際のお話がベースになっているから、愛犬の老化や人物の感情もわざとらしくなく、素直に心に入ってきました」(Aさん・40代・女性)

「生き物を“飼い”・“育て”・“看取る”までが、生き物を飼うことの“責任”だと改めて感じました。虐待をする人に読んでもらい、生命について考えてもらいたいです」(Kさん・20代・男性)

「27年前にオリジナルの作品を読んでいたので、その時の心情が蘇りました。生と死の貴重な時間をペットと一緒に過ごし、人間も動物から教わることがあることを学びました」(Hさん・60代・男性)

『犬を飼う そして… 猫を飼う』谷口ジロー著(小学館刊・1296円)は、発表当時反響を呼んだ『犬を飼う』を含む、ペットとの日々を描いた漫画5作とエッセイ2作を、カラー原稿も含めて収録。

※女性セブン2018年9月6日号

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  1. イチロウ より:

    先進諸国は言うに及ばず、この国でも動物愛護法改正により、飼養する者に「終生飼養」が義務づけられる等、今日では、「伴侶動物」としての犬・猫が嘗てとは相違した取扱いを受ける時代にあります。

    一般においても、犬や猫を家屋内で飼養する等で、言わば家族として伴に暮らすのが普通になりました。 我が家でも、数十年以前から猫達は、全て完全室内飼いにしています。

    共に暮らしていますと、猫にも我々人に備わっている「情」があり、意思の疎通も可能なことが分かります。 

    例えば、一昨年に19歳と五か月で天に召された我が家の長男猫です。 猫にこれ程の情や理があるのか、と驚く程の猫でした。 しかも可愛くて、強いので、今でも涙にくれる程です。 でも、当然と思っています。 既に「猫」ではなくなっていて、姿、形が猫であっても、家族の一員でしたから。

    一年以上自宅で輸液をした夏の終わりに突然倒れて、それでも、立たなくなった後ろ足を引き摺り飼い主の足許に這い寄り、その二日後に飼い主に抱かれたまま両目を見開き、飼い主を見たまま亡くなった「とら」。 納骨しましたお寺の案内状を見ながら本年も春に続いて秋の慰霊祭に花束を持って行こう、と思っています。

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