暮らし

高齢化する戸建住宅のリフォーム「いつする?何が必要?」補助金活用法を専門家が指南

「段差が多くて危ない」「夏暑く、冬寒い」「使わない部屋がある」etc.築数十年の実家をいつ、どこまでリフォームすべきか。誰に相談したらよいのかわからず、もやもやするあなたへ、戸建住宅に関するリフォームの疑問を達人に聞きました。

高齢化住宅に必要なリフォームは?

 リフォームといっても、数万円の手すりの設置から1000万円前後の全面リフォームまで、その範囲は実に広いが、もっとも需要の多いリフォーム部位は、風呂や台所などの水回りだという。

 データを提供してくれた「リフォームガイド」の鈴木信彦さんは次のように語る。

「壊れてから慌てて相談に来るかたがほとんどです。私たちの相談件数ではランク外ですが、自然災害による外壁塗装も需要が多いですね。コロナ禍以降は、テレワークの影響で、間取りを変更する全面リフォームも増えました」

■リフォーム相談の多い部位ベスト10

 リフォーム会社選びをサポートするサイト「リフォームガイド」に寄せられた相談数上位10か所を抽出。

1位 風呂・浴室

2位 キッチン・台所

3位 リビング

4位 トイレ

5位 洗面所

6位 洋室

7位 全面

8位 和室

9位 ダイニング

10位 玄関

資料提供:リフォームガイド 期間:2021/6/24~2022/6/23

大規模リフォームには“仮住まい”が必要と心得て

 それでは、高齢の両親が現在の家に住み続けるためには、どんなリフォームを施したらよいのだろうか。

「手すりの設置、段差の解消など、最低限のバリアフリー対策は必要。内容にもよりますが、数万円から数十万円で対応可能です」と、住宅ジャーナリストの山下和之さん。

 両親の体が弱ってきた兆候が見えたら、対策を考えるべきだという。

「リフォーム後の家に慣れるためにも、体が動くうちに行った方がいいでしょう。大規模リフォームになった場合、仮住まいが必要になるので、要介護になってからでは遅いです」(山下さん・以下同)

断熱性を高めるリフォームでヒートショックを防ぐ

 築年数が長いほど断熱性が低いため、真夏や真冬は高齢者にとって危険が増す。

「いまの時代、断熱性を高めるリフォームは夏の熱中症や冬のヒートショックを防ぐために必要です。数百万円かかりますが、全館空調(※)にすると、ひと部屋ごとに冷暖房を備えるより効果があります。過去の調査によると、毎年数千人が家の中で亡くなるというヒートショックの発症率が最も低いのは、意外にも北海道で、2位が青森県。いずれも、高断熱住宅の普及率が高いためです」

 夏の熱中症についても、高齢者の死亡場所の半数以上は家庭であることから、何かしらの対処が必要だ。

「バリアフリーや断熱リフォームは、国の補助制度が充実しています。たとえば要介護や要支援の人がいれば、介護保険から、工事費20万円(支給限度基準額)のうち、90%までの補助が出ます。これらをうまく活用したいですね」

 家族が減って部屋が余っているのも効率が悪い。

「思い切って平屋に減築するという選択肢もあります。昨今の高齢化を反映し、木造住宅における平屋の割合は10年前に比べて1.4倍と、年々高まっています。相続が発生する前の、両親が元気なうちに家族でよく話し合いましょう」

(※)全館空調とは家全体を冷暖房し、24時間換気を行う設備のこと。

補助金を利用して賢くリフォーム

 円安やウクライナ情勢の悪化により、建築資材の高騰や資材調達が滞る状況が続いているが、考えようによってはじっくりとリフォーム計画を立てられる時期でもある。

 その中でも見逃せないのが、リフォームにおける国や自治体の補助金制度だ。住宅リフォーム・紛争処理支援センターの岡田愛美さんは言う。

「耐震や省エネ、バリアフリーのためのリフォーム工事については、都道府県単位で補助金が出ています。また、子育て支援と2050年のカーボンニュートラル(脱炭素)実現の観点から、若い世帯のリフォームを支援する『こどもみらい住宅支援事業』という制度も注目されています。同じ予算でプラスアルファの工事ができるかもしれませんし、費用面であきらめていた工事ができる可能性も出てきますので、補助金を活用するのはとても賢いリフォーム術といえます。この制度も含めて提案してくれるリフォーム業者は、選択肢として悪くないと思います」(岡田さん)

 制度利用には事業者による申請手続きが必要なため、事業者によっては取り扱っていないところもある。ほかにも減税や融資等を行っている業者もあるそうだ。対象工事の内容を含め、詳しくは各自治体やリフォーム会社に問い合わせてみよう。

教えてくれた人

住宅ジャーナリスト 山下和之さん

『日刊ゲンダイ土曜版』『現代ビジネス』『ARUHIマガジン』、ブログ『山下和之のよい家選び』(http://yoiie1.sblo.jp)などに寄稿。近著に『はじめてのマンション購入 成功させる完全ガイド2022-23』(講談社ムック)がある。

取材・文/佐藤有栄

※女性セブン2022年7月28日号
https://josei7.com/

●50代から始める「最期まで暮らせる家」改修ポイント5つ リフォームの注意点を解説

●「早めのリフォームが仇に」「マンション住み替え後の苦難」失敗事例に学ぶ老後の住まい

●女性ひとりの老後、住まい問題…家は売るべき? リフォームは急ぐべき?

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