公開日:2019.05.10 / 更新日:2019.11.20   

ひざ痛、爪の変形、外反母趾…放っておくと命の危険 !正しい足のケア法

 “足は第二の心臓”とはよくいったもの。下半身には全身の筋肉の3分の2が集まっており、足の裏には数多のツボが存在する。

 また、足腰が弱り歩けなくなった人ほど、早く亡くなりやすいというデータもある。人生100年時代、健康でいたいならまず、足のことを考えるべし!

階段を上る女性
靴販売会社「fitfit」が全国の40代~60代の女性に対して行った「脚の悩みに関する意識調査」によると約80%が、外反母趾など足に関するトラブルを抱えているという

 * * *

 笹川スポーツ財団が’17年に行った調査によれば、年に1回以上ウオーキングをする人の割合は44.2%。22.3%だった’96年から倍増している。さらに、週1回以上ウオーキングを行う人は13.6%から32.5%と2.5倍に増えた。同財団によれば、このブームを牽引しているのは高齢者層であり、その背景には高齢化社会に伴う健康志向の高まりがあるのだという。

足に問題を抱える人が無理に長時間歩くと病気を招くこともある

 寝たきりにならず、健康寿命を延ばすためにせっせと歩数を重ねる人も少なくないはずだ。しかし、『足腰が20歳若返る 足指のばし』(かんき出版)の著者であり、足の病気や不調を専門に診療する、みらいクリニック院長の今井一彰さんはこう警鐘を鳴らす。

「健康な人がウオーキングをするのは足腰を鍛えるためにとてもいいのですが、足に問題を抱える人が無理に長時間歩くと、かえって病気や不調を招くことにもつながるのです」

  足の不調に悩む女性たちのケアを幅広く行うドイツ式フットケア専門店「フットケアジャパンサロン日本橋」代表、斎藤貴子さんもこう話す。

「巻き爪や外反母趾、たこ、うおのめなど足のトラブルに悩む女性は年々増えています。その原因は大きく3つ。『合っていない靴を履いている』『正しい歩き方ができていない』、そして、『足の不調や機能低下に対して正しい対策を立てていない』です。試し履きのできない通販で、安くて流行の靴が売られていることも原因の1つでしょう。フルタイムで働く女性が増え、ストッキングを着用する人も多いが、長時間はいたままにする習慣は、足にとってよくない。足の指の動きが制限され、外反母趾の原因になるなど、さまざまな弊害が出てしまいます」

 実際に、靴販売会社『fitfit』が全国の40~60代の女性1413人に対して行った「足の悩みに関する意識調査」(’16年)の結果によれば、8割以上の女性が足や靴に関する悩みを持っている。そのうち約42%は外反母趾に、13%は爪のトラブルに悩んでいるという。

足に負担がかかりやすい女性ならではの理由

 全国から年間6000人の初診患者がやってくる「足のクリニック表参道」院長の桑原靖さんは、「そもそも女性の足は負担がかかりやすい」と指摘する。

「若いうちは筋肉やじん帯が機能するため、足に多少の負担がかかっても特に大きな問題にはなりません。ですが、年をとるにつれ、筋力が衰えた結果、足が受ける負担は重くなります。 女性は男性に比べて関節が柔らかく、骨格構造が弱い。特に閉経後はホルモン分泌の量が落ちて骨密度も下がります。健康な足は骨組みがしっかりしていて、土踏まずと指の部分に2つのきれいなアーチ構造が存在するのですが、関節が緩くなったりゆがんだりすると、それを維持できなくなるのです」

 女性特有の事情は他にもある。

「出産によって、女性の体は全体的に大きく緩みます。それは足も例外ではなく、ひざの関節や足のアーチを作る骨組みの構造も緩んでしまう。骨盤をケアする方法はある程度確立されていますが、産後の足のケアはおろそかになりがちです。緩んでしまった骨組みをそのままにして、筋力が衰える40~50代を迎えると足に大きな負担がかかり、外反母趾や足の人さし指がZ字形に折れ曲がってハンマーのような形に変形する“ハンマートゥ”などの症状として現れる人も少なくないのです」(桑原さん)

 外反母趾は重症でなければ痛みがない場合も多く、気がつかないこともあるという。しかし、外反母趾をはじめとした足の不調は全身の不調につながる可能性が高い。桑原さんが解説する。

ひざ痛の原因は足の不調から

「実は、ひざ痛の原因のほとんどはくるぶしから下の足にあります。足のアーチ構造が崩れると、ひざや股関節には、ねじれた力がかかる。股関節の動きが柔らかいうちはねじれを吸収してくれるため、ひざには負担がかかりませんが、加齢や生活習慣の悪化によって股関節が硬くなるとひざに直接負担がかかるようになり、痛みの原因になるのです」

 ひざ痛の治療では、人工ひざ関節に置き換える手術も多く行われるようになっているが、桑原さんは「足の不調が解消されなければ手術をしても治らない」と指摘する。

「ひざの痛みの原因である足のアーチ構造の崩れを解消しなければ、手術をしても効果は一時的です。ひざにねじれの力がかかり続けた結果、人工ひざ関節が故障し、歩けなくなるなど、さらに悪化する可能性すらある。手術に踏み切る前に一度、足のチェックを受けることを勧めます」

 今井さんも声をそろえる。

「患者さんの中には、ひざの変形性膝関節症のほか、腰の脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)などを訴えて受診されるかたが多くいますが、これらも足の不調が原因であることが多いのです」

 本人も気づいていない足のアーチ構造の崩壊により、意外なところに痛みが出ることがあるというわけだ。また、足に痛みや不調を抱えたまま生活をすれば、それだけつまずいたり転んだりするリスクも高まる。

「高齢者ならば転倒して大腿骨など脚の骨を折ると、そのまま寝たきりになり死に直結する場合もあります」(桑原さん)

足の不調の陰に大きな病気があることも

 不調の背景に、大きな病気が隠れているケースもある。

「靴擦れや巻き爪が悪化した状態で病院に来た患者さんを診察したところ、糖尿病にかかっていたと判明したことがありました。これは『糖尿病性神経障害』と呼ばれる症状で、糖尿病が進み、本人も気づかないうちに足の感覚がなくなると、アーチが崩れていることに気がつかず、どんどん症状が悪化する。患部から細菌が侵入し、潰瘍や壊疽が起きた結果、最悪の場合は下肢を切断せざるを得ないこともあるのです」(桑原さん) 

 アーチの崩れに由来する以外でも、気をつけるべき足のトラブルは多い。桑原さんはその筆頭として「水虫」をあげる。

「足のアーチ構造が崩れて起きる以外のトラブルは、圧倒的に水虫が多い。ただしこれは、簡単に予防できます。水虫の原因菌である白癬菌が足に定着するまでには24時間かかるので、抗菌石けんなどを活用し、毎日しっかり足を洗えばいい。乾燥したり、角質化したりすると皮膚の防御機能が低下してしまうので、保湿クリームも併用しましょう」

 これからサンダルの季節がやってくると、足の爪も気になる。白癬菌が侵入する爪水虫も大敵だ。 「白癬菌が爪に入り込むと、黄白色に変色して濁ります。また、分厚く変形したりして爪の先端がささくれ立ち、靴下やストッキングの穴開きも招きます。普通の水虫と違い、かゆみなどの自覚症状がほとんどありません。放置してひどくなると、細菌が入り込んで炎症を起こして化膿し、足が腫れ上がって痛みで靴が履けない、歩けないなどの弊害が出ることがあります。基本的にはのみ薬で治りますが、完治には半年から1年を要します。かからないに越したことはありません」(今井さん)  

爪水虫を患った足
爪水虫は、気づかないうちに爪がボロボロになる

 予防のためにはとにかく足を清潔に保ち、ストッキングやブーツなどで足が蒸れてしまう状態を最小限に抑えることだ。また、血糖値が高いと感染症にかかる可能性が上がるというデータがあるため、糖尿病患者は特に注意が必要だという。

足の健康を保つ靴の選び方、いい靴の条件

  足の不調の原因の1つとして専門家が口をそろえるのは「合わない靴を履いている」ということ。裏を返せば、靴選びさえ間違えなければ足を健康に保つことができる。

 桑原さんが「いい靴の条件」を解説する。

「いい靴といっても、高級である必要はありません。何よりもまず、かかとがぴったりフィットするものを選ぶこと。反対につま先は5㎜~1㎝くらいの余裕があっていい。かかとがブカブカだと足が靴の中で動いてしまい、靴擦れの原因になります。また、足のアーチが崩れるきっかけのほとんどは、かかとの骨が緩むことで起きます。一見、ゆったりした靴は歩きやすいように思えますが、足のサイズよりも大きい靴を履くのは、アーチを崩す危険な行為なのです」

 加えて、「アウトソールが硬く、地面を踏みしめた時に足が受けるショックを吸収してくれる」ことや、「足の甲をしっかりホールドする」「中敷きが入る」などもよい靴の条件としてあげる。

 反対に、こんな靴は勧められないと話す。 「小学生の徒競走が速くなるという触れ込みで靴底のパターンが左右非対称になっている靴が売られていますが、靴底の減り方も左右非対称になり、足の成長が心配になる。大人用でも『履くだけで美脚』と謳われた底が半球のようになった靴なども同様によくないと言わざるを得ません」(桑原さん)

 空前のスニーカーブームは、足のためには朗報のよう。今井さんが言う。

「ハイヒールやパンプスを履くのは、どうしても足に負担をかけてしまうので、できる限り短時間にとどめた方がいい。仕事で長時間履かざるを得ない場合は、通勤時間は別の靴にするなど対策を。長く歩く場合はスニーカーがいちばん。紐をしっかり結ぶとさらに歩きやすくなります」

足にいい歩き方エクササイズ「ゆびのば体操」

 アドバイス通り、足にいい靴を選んだら、どう歩くのが足にとっていいのか。今井さんは、足の状態によって「歩き分け」が必要だという。

「一般的には大股で、かかとから着地してつま先を蹴り上げる歩き方がいい。ですが、足に問題がある人の場合は逆効果になってしまう。かかとをつけることは進行方向に対して逆向きの力がかかることになり、健康な場合はこれが 足腰を鍛えることにつながりますが、不調がある場合は大きな負担になる。足や腰、ひざに痛みがある人は、歩幅を狭くして足裏全体を使い、足の指で地面を蹴るようにして歩いてみて」  

足にいいエクササイズ「ゆびのば体操」

 不調を正す簡単なエクササイズもある。多くの人が「外反母趾」「ひざ痛」「腰痛」「巻き爪」などあらゆる足の不調が改善されたと喜びの声をあげているのが、今井さんが考案した「ゆびのば体操」だ(下記参照)。

「足の指を広げて伸ばすことで骨格を整えてゆがみを正し、筋肉を鍛えることができるのです。とても簡単な体操なのですが、続けて取り組むと、ひざや腰、股関節の痛みが改善する。歩けるようになった結果、つえを忘れて帰る人もいたほどです」(今井さん)

 1日3分でできるうえ、必要な道具は何もない。

「椅子か床に座って片足をひざの上にのせて足の指の間に反対側の手の指を差し入れ、足の裏側を伸ばすように甲の方に曲げます。30度を目安に、5秒間ほどキープしてください。終わったら、今度は反対に甲を伸ばすように足の指を足の裏の方に曲げます。こちらも5秒間キープします」(今井さん)

 これらの動きを20~30回、両足とも行うだけ。手は軽く握り、強い力で足を曲げようとしないのがポイントだ。

 実際にやってみるととても簡単だが足取りが軽くなり、歩きやすくなった実感がある。

「お風呂に入った時などに習慣づけ、毎日続けてほしい。早い人だと2週間、通常3か月ほどでひざ痛や腰痛、股関節痛が軽減してくるはずです」(今井さん)

→話題の「足指のばし」1日3分でOK!20才若返る理由

→「足指のばし」が簡単にできる!【ゆびのば体操】のやり方、Q&A

5本指のソックスやストッキングをはく

 日常生活を少し変えるだけでも足を健康に保つことはできる。斎藤さんが解説する。

「足裏が乾燥すると、たこや角質からひび割れにつながることがあるので足は保湿した方がいい。保湿クリームを塗る時、ふくらはぎを軽くマッサージしたり足首を回してあげるだけで、疲れも取れます。また、足の指を伸び伸び動かせるよう、5本指のソックスやストッキングをはくのも効果的。くるぶしまでの5本指ストッキングを普通のストッキングの下にはくのがおすすめです」

正しい爪の切り方

 爪の切り方にもコツがある。

「足の爪は四角く『スクエア形』に切りましょう。両端を斜めに切る『バイアスカット』をすると、爪が陥入して皮膚にあたるだけで痛みにつながります。角はヤスリで丸く仕上げましょう」(斎藤さん)  

 巻き爪になると、痛みから歩行困難になることも多い。健康を支えてくれる“縁の下の力持ち”を見直す機会にしたい。

 爪の角を斜めに切る「バイアスカット」は、新しく生えてくる爪が皮膚を巻き込み、巻き爪の原因を作ってしまう。また、深く切りすぎるのもよくない。 爪の両端を丸くせず、直線的に切る。切る深さは指の先端と同じか、やや長めにする。切り終えたあと、両端の角を少し丸めるようにヤスリでやや丸く整えるといい。

  撮影/吉成大輔 イラスト/飛鳥幸子、伊藤カヅヒロ(ゆびのば体操)

※女性セブン2019年5月2日号

●シニアに急増中の【脊柱管狭窄症】6割を改善する「蹴り出し体操」のやり方

●【変形性膝関節症】は女性に多発!対処法と軽減対策を徹底解説

コメントが付けられるようになりました▼

この記事が役に立ったらシェアしよう

  •  

▶コメント

※編集部で不適切と判断されたコメントは削除いたします。
※寄せられたコメントは、当サイト内の記事中で掲載する可能性がございます。予めご了承ください。