がん研究ひと筋の医師が勧めるがんを予防する食事|糖質を抑えた食材・地中式料理レシピ

 10年前に乳がんを患い、手術、抗がん剤治療、ホルモン剤治療等を行った女性セブン記者(59才・その後、再発はなし)。彼女が、各種治療とともに真剣に取り組み、確信に至ったのが「食生活の見直しで体は必ず変わる」ということ。自らの体験を踏まえつつ、記者が「がんに克つ食事」をレポートします。

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食の見直しは、すぐできて効果大のがん予防!

 がんの治療効果は千差万別。薬も抗がん剤も、その人の体質によって効き方も副作用もさまざまだ。記者も10年前、そのことを身を以て経験した。

 そんな一人ひとり違う体質や体調に合わせて、数千年も昔から養生や治療を行ってきたのが「漢方」と呼ばれる東洋医学だ。いまだ科学的には解明されていない医療。だが、がん治療の副作用の軽減や予後(病気の経過や結末)に効果があるとして、近年、西洋医学でも漢方治療の効果が注目されている。

 長年、がん一筋に研究を積み重ねてきた医師の福田一典さんもそのひとり。がんの予防・治療に西洋医学と漢方医学を併用し、食事改革を推奨。すすめる食事は、糖質を抑えた地中海式の料理である。

地中海式ケトン食で糖質を抑える

─―がんの治療に、漢方や食事療法を取り入れたきっかけは何ですか?

福田さん(以下敬称略):ぼくは西洋医学から入って、外科、病理、生化学、分子生物学など、さまざまな領域でがんを研究してきました。ところが、どんどん突き詰めていくと、どうしても壁にぶち当たって行き詰まる。その壁というのが人間が本来持つ生命力や治癒力です。小さな遺伝子レベルのことについてはわかっても、生物としての人間の生命力は科学で分析してもわからない。そこで古来の東洋医学を学んでみると、漢方や食事療法が、がんの予防や治療にとても有効であることがわかったのです。

─―どのような食事の改善が必要?

福田:まず重要なのが、糖質を制限することです。がんは酸素を必要としない細胞で、その代わりに「ブドウ糖」を一生懸命取り込んで増殖することがわかってきました。ですので、糖質の高い料理を食べると、体の中にがんの餌が蓄えられて、がんがすみやすい環境になってしまうんです。

地中海料理は、がんを予防し、健康を維持する極上料理

―─ということは、体の中にブドウ糖がなくなれば、がんを抑えられると?

福田:その通りです。がんはブドウ糖がなければ生きていけません。なので糖質制限をして、がんを餓死させればいいわけです。例えば、現代の日本人は一般的に糖質を200~300g取っています。糖質の多い穀物を多く食べる民族なので、この数値は世界的に見ても多すぎます。がんを真剣に予防したいのなら、糖質を1日80~100gぐらいに抑えなければなりません。進行がんの患者さんなら1日10~20gに抑えるとよいでしょう(肝機能疾患のある人は、専門医にご相談ください)。

─―それだけ糖質を抑えると、エネルギーが出ないのでは?

福田:糖質を減らした分、ココナッツオイルやオリーブオイル、魚の脂など健康によい油を取れば、それがエネルギーになります。血糖を上げる糖質の摂取を極端に減らしてエネルギーを脂肪で取ると、脂肪が燃えてケトン体という物質が出ます。このケトン体がブドウ糖の代わりになり、脳や他の細胞を養います。これは古くから小児のてんかん治療にも用いられてきた食事療法で、「ケトン食」と呼ばれています。

がんを遠ざける低糖質の食材

―─食材選びで注意する点は?

福田:まずは糖質の多い穀物の量を減らすこと。ご飯1杯分に約50gの糖質が入っているので、1日3食取っていると、それだけで1日の糖質量をオーバーしてしまいます。ですので、主食はなるべく血糖値を上げにくい玄米や全粒粉のパンなど、精製度の低い穀物を選び、量を少なくするよう心がけてください。また、特に気をつけなければならないのが、果物や加工食品に含まれる果糖。甘みが強いものが人気なため、果糖が多くの食品に使われていますが、これが実は健康によくない。できるだけ量を制限し、果糖の少ないものを選ぶことも重要です。

─―料理はどんなものがいいですか?

福田:地中海料理(ギリシャ、イタリア、ポルトガル、スペインなどのヨーロッパや北アフリカの地中海沿岸の料理)がおすすめです。魚介類、野菜、豆類、良質の植物性油であるオリーブオイルをたくさん使う料理で、がんや循環器疾患、アルツハイマー病、糖尿病などに効果があります。パスタなどの穀物の量を減らせば、がん予防食としては理想的な食事です。地中海料理を多く食べている人は、すべてのがんの死亡率が低下することも報告されています。大腸がんや乳がんなど、がんの発生率も減少するという研究報告もある。東洋医学には「薬食同源」という考えがありますが、まさに料理は薬になるのです。日頃から糖質を抑え、バランスのよい食事を取れば、がんを撃退することだって夢ではありません。

国立がん研究センター推奨のがんを予防する食事

【1】1日あたり野菜を350g取る。目安は、果物と野菜を合わせて、野菜を小鉢で5皿ぶん、果物は1皿ぶん、合計400g程度を毎日食べる。
【2】熱い飲み物や食べ物は、冷ましてから取る。
【3】食塩摂取量の目安は、男性8g未満、女性は7g未満。

福田医師がすすめるがん予防食材

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この記事へのみんなのコメント

  • SingleAgedBoy

    私は福田先生監修の『がんを遠ざけるケトン食レシピ』(河出書房新社刊)を、進行癌で手術した母のために参考にしています。 ちなみに私の場合は、古川健司著『ケトン食ががんを消す』(光文社新書)が大変勉強になりました。全国の病院や介護施設で働く管理栄養士さんや、癌治療に係わっておられる皆様に、これらの書籍をじっくりと読んでいただきたく思います。

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