暮らし

物忘れがひどいのに1人暮らしできると言い張る母

 毎日の介護、大変ですよね。介護コミュニティサイト「介護100番」には数多くの介護の悩みとアドバイスが寄せられます。その中から、家族の介護に参考になりそうなものをご紹介します。今日は、物忘れがひどいのに1人暮らしできると言い張るお母様をお持ちの方からの相談です。会社を退職して同居すべきか、それとも1人で頑張ってもらうべきか。身につまされる方も多いことでしょう。

相談者「介護単身赴任も検討しています」

「84歳になる私の母は、大分で一人で暮らしています。私と弟は東京に住んでいますが、数年前から母の物忘れが気になってきたので、弟と手分けして、年数回ずつ様子を見に帰っていました

 先々月、母が背中にまで及ぶ帯状疱疹(たいじょうほうしん)で入院しました。私も長期の休暇をとって帰省し、水疱の手当てなどを手伝っていました。ようやく先月退院したのですが、入院で物忘れも進行してしまったようで、担当医にも勧められて介護認定を申請中です。

 担当医によれば、日常生活(着替え、化粧、トイレ、戸締まり等)はできているので認知症とは言いにくいが、入院によって物忘れがかなり進行しているのは事実とのことです。

 最近はガスを消し忘れたり、お金や貴重品のしまい場所がわからなくなったりしています。とくに火の不始末が怖くてたまりません

 ご近所に迷惑をかけたりしないか、事件に巻き込まれたりしないかと心配で、家族や弟とも相談し、私が仕事を辞めて実家で母と同居し、月に数日家族のもとに帰るという、介護のための単身赴任を考えています

 しかし母は、人に世話になったり、人が家に入るのを、ひどく嫌がり、私が同居す ることも、ヘルパーさんにお願いすることも強く拒否します。「ほかにもそんな人はたくさんいて、一人暮らしをしている。だから私にもできる!」と言い張ります。

 私が実家に長期滞在しているのも気になるようで、時に興奮したように、「早く帰りなさ い!」と強い口調で言うことがあります。しかしあるときには、自分でも物忘れに不安を感じるのか、私がそばにいることに安心したような様子を示すこともあります。

 もちろん私は同居を覚悟して帰省しているのですが、母があまりに強く拒否するので、この先どのように対応していけばよいのか悩んでしまいます。

 母の意向を無視して強引に同居すべきか、月に一度くらい様子を見に帰るくらいのほうがよいのか。皆様の経験談をお伺いしたいと思います」

家族を犠牲にした介護はすぐに限界に

 同様の体験をした方からのレスは──

「身につまされます。うちも 98 歳になる母がいて、その面倒を、近くにいる姉が家族を犠牲にしてみていました。私も月に1週間、遠方から帰省してみていたのですが、お互いの家族や介護される本人まで心身が弱り、全員がダウンしてしまいました

 そのとき初めてショートステイを利用したら、本人の心身もかなり落ち着いてきて、こちらもようやく回復しました

 2年後の今は、特養(特別養護老人ホーム)の利用に踏み出すことができ、何とか平凡な日々を少しずつ取り戻しつつあります。可能な限り面会に出かけ、施設の方と相談しながら遠方から見守る形になりました。

 あの介護の日々を振り返ると、トイレに行きたいときに行けること、夜まとまって寝ることができること、そういう何でもないことに、今は大変な幸せを感じています」

まずは介護認定から始めて段階的に

 先ずは介護認定を、とのアドバイスも寄せられました。

「お母様のことが心配でならないお気持ちが伝わってきます。遠いところにお住まいだと、なおのことと思います。まず介護認定が受けるべきです。デイサービスやヘルパーさんを利用しないつもりでも、介護度に応じて介護用品のレンタル なども利用できますし、自宅の改修(手すりをつけるとか)や杖の購入などにも補助が出ます。もちろんいざというときにはヘルパーさんを頼めます

 同居については人それぞれですし、心配もつきないでしょうけれど、お母様はお母様で、『自分のことは自分でやる! 動けるうちは自分の面倒は自分でみたい!』と、必死の思いでおられるのではないでしょうか。

 もしご近所に仲のよい方がいらっしゃるなら、事情を説明して頼んでおくとよいと思います。

 同居も段階的に進めてもよいのでは? 最初の半年とか1年は、週末に泊りがけで行くようにして、時々は1週間くらいゆっくり泊り、といった感じで様子を見ていき、『もうこれは絶対に一人にはしておけない』となったら、完全同居に移行する。

 その半年とか1年の間に、ご家族での旅行などを楽しまれるかたわら、認知症や介護についてご勉強なさってはどうでしょう」

このようにして一人暮らしの義父は弱っていきました

 実際に一人暮らしの義父を見てきた方からのレスは──

「うちの義父(82歳で認知症 ・ 糖尿病 ・ 要支援2)も、義母が亡くなって数年間、一人暮らしをしました。高齢で認知症もあったので心配でしたが、幸い車で10分くらいのところでしたので、毎日1回は顔を出し、様子を見に行っていました。

 最初の1年くらいは、特に何も手伝わずとも、自分で自分のことはすべてできていました。1年経ったくらいからお金の管理ができなくなり、身だしなみを 気にしなくなったり親戚の法事などの日を忘れてしまったりが始まりました。

 2年経った頃からは、新聞や牛乳などの勧誘に、相手の言われるがまま契約したりするようになりました。

 3年が過ぎた頃には掃除・洗濯ができなくなり、糖尿病の薬の管理ができなくなりました。この頃から、ご近所にも事情を説明しておき、何かあった時の協力をお願いするようにしました。それからほどなくして肺炎で入院し、退院後に同居しています。

 この3年ちょっとの間、認知症の治療でアリセプト(アルツハイマー型認知症等の治療薬)を服用し、デイサービスにも週1回通うようにしていました。その間、私自身も傾聴ボランティアの養成講座を受けて、実際に高齢者の方の傾聴に出かけたり(これは特別養護施設などに出向いて行ないましたがいろいろな意味 で勉強になりました)、認知症サポーターの講演を聴きに行ったりしました。

 本格的な介護が始まってから施設に預けることになるまでの間は、家族で旅行するなどが難しくなってきます。介護サービスなどを使いながら息抜きすることもできるのですが、親をひとり残して他の家族全員で楽しむというのは、気持ちのうえでなかなか難しいです。

 義理の親をみるのもそれはそれで大変なことなのですが、実の親子となると、ストレスや葛藤出てくるでしょう。

 まだ少し時間的余裕があるようでしたら、お母様にも頑張っていただいて、サポートやフォローをしていくのも立派な介護だと思います」

「デイサービス」とは?

要支援者や要介護者が送迎付きで「デイサービスセンター」などへ通い、入浴、排泄、食事などの介護、機能訓練を行う「日帰りの介護サービス」です。

ふつうは朝9時頃から午後5時頃まで、昼食をはさんで入浴やさまざまなレクリエーションなどをして過ごしますが、半日のいというケースもあります。

また理学療法士や介護職員による機能回復訓練や、管理栄養士による栄養改善、言語聴覚士や歯科衛生士による口腔清掃や嚥下機能訓練などのサービスも、別途加算で利用できます。

費用は市町村や施設などで異なりますので、ケアマネージャーに相談しましょう。

*以上は、介護110番の「なんでも相談室」の相談スレッドを書籍化した『母がおカネを隠します。』に掲載された実際の相談事例です。

文/まなナビ編集室 写真/fotolia/ studiolaut

初出:まなナビ

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