暮らし

アサーティブな人が心がけている「話し上手になる」4つのコツ

話す前に自分の考えをまとめておかないと上手く話せず失敗する (c)polkadot-Fotolia

 相手を尊重しながら、自分の言いたいことをその場の状況にあった適切な方法で表現する──その方法を学べるのがアサーティブ・コミュニケーションだ。前回の「アサーティブな人が心がけている「聴き上手になる」4つのコツ」に続き、神奈川大学公開講座「素敵な自己表現・アサーティブ・コミュニケーション」から、研修のプロ・喜多朋子先生(Manner-Bo Alliance株式会社)が指導する話し上手になるポイントを、神奈川大学人間科学部2年の佐藤優衣記者がレポートする。

1.自分の気持ちを整理してから表現する

「話したいことはヤマほどあるのに、なかなか相手に伝わらない、聴いてもらえない」そういう人に多いのが、思いつきでだらだら話してしまっていることだ。熱意を持って長時間説明しても、「で、話の要点は?」などと訊き返されるのがこれにあたる。

 アサーティブ・コミュニケーションで大切なのは、相手を尊重すること。相手の大切な時間を使うのだから、その時間を無駄にしないように簡潔明瞭に話したい。そのためには、話す前にまず自分の考えや気持ちを整理することが大切だ。

 面接やプレゼンテーションでは、限られたj時間内で内容を伝えようとしても、思いついたことから話してしまい、言いたいことが伝えられないうちに時間オーバーしてしまう、あるいは前置きが長く、なかなか結論に至らない、そのような人も多いだろう。

「何が言いたいのかわからない」、「で、要点は?」などと切り返されないために、喜多先生は次の2つの文章構成法を紹介してくれた。

2.導入結論→理由→具体例→最終結論のPREP法

 PREP法は4つのステップから構成される。

(1)POINT 導入結論 
 「~に関しての結論は~です」
(2)REASON 理由
 「なぜならば、~であるからです」
(3)EXAMPLE 具体例 
「と申しますのは、具体的には~です」
(4)POINT 最終結論 
「ということで~です」

 この4つのステップの頭文字を取ってPREP法と呼ぶ。「PREP法」は最初と最後に結論を伝えることが特徴だ。

 講座では、短時間に話をまとめるトレーニングとして、「1分であなたが勧めるものを伝えよう」という課題が出された。好きなテレビ番組、好みのレストラン、続けている健康法、何でもよい。何かをとりあげ、「私のおススメは〇〇です」「なぜならば……だからです」「具体的には……です」「ということで、私のおススメは〇〇です」を1分以内で話せるようにまとめ、2人1組で発表し合った。

 この場合、例が具体的であればあるほど、相手に伝わりやすい。1分間に話す文字数は380文字程度にまとめると、間を取ることができ、相手に伝わりやすいという。また、1センテンスが長いとわかりにくいので、目安としては1センテンス30字~40字くらいに収まるようにすると、相手も理解しやすい。

 しかしながら、PREP法でネガティブな内容を伝える際は、あまりに簡潔すぎて、相手にストレートに伝わってしまいがちだ。そのため、ネガティブな話をする場合は、話し始める前に「お忙しいところ恐れ入りますが……」、「少しお時間よろしいでしょうか……」など、一言気遣うクッション言葉を入れることが大切だという。

3.要約→詳細→要約のSDS法

 もうひとつが「SDS法」と呼ばれるものだ。これは3つのステップから成る。

(1)SUMMARY 全体(要約) 
「本日はお話したいことが3点あります。
(2)DETAILS 本論(詳細)
「1点目については……です。2点目については……です。3点目については……です」
(3) SUMMARY  全体(要約)
「以上のように、1つ目は…、2つ目は…、3つ目は…、以上お話したいことはこの3点です」

「話が終了した」と思っていると、「言いたいことがもう一つありまして……」と、次から次へと話が拡大してしまう人がいるが、「SDS法」であらかじめ伝えたいことの件数を決めておくと、そういうことが避けられる。

 PREP法とSDS法、どちらを使うかは、その時々の状況や相手によって判断しながら使い分ければよいだろう。

4.相手を尊重し、自分の気持ちに素直な表現を心がける

 話すときは相手の状況、反応に配慮することが大切だ

 心遣いを表現するクッション言葉も大いに活用したい。例えば「お忙しいところ申し訳ないのですが……」の一言があると、忙しい相手の状況に配慮している気持ちが伝えられる。忙しくてあまり時間をとれない相手であれば、話を始める前に「3分ほどよろしいですか?」など所要時間を明確にすると、相手に集中して話を聴いてもらいやすくなる。

 語尾は「……してください」といった命令口調ではなく、「……してもらえますか」といった依頼形で話すことで、よりアサーティブになる。話し終えた後には「時間をとってくださってありがとうございます」と、感謝や労りの言葉を伝えるとよい。そうすることで、次の会話に繋がりやすくなる。

 気をつけたいのは「すみません」という言葉。

 ノンアサーティブ(受け身的表現)の人は事あるごとに、前置きとして「すみません、……」を多用する傾向がある。しかし「すみません」には「ありがとう」と「申し訳ない」という両意があるので、言葉はしっかり使い分けるのがよい。

 喜多先生の説明は感情豊かで語彙もバリエーションに富んでいて、具体例がとてもわかりやすく、90分の講義がまったく苦にならなかった。本で読むのとは違い、実際に講義を受けるとよく理解できる。「言いたいことが言えない」悩みがすっと解消された。

◆取材講座:「素敵な自己表現「アサーティブ・コミュニケーション」──言いにくいことを素敵に表現する」(神奈川大学公開講座/みなとみらいエクステンションセンター)

◆講師プロフィール:喜多朋子(きた・ともこ)
Manner-Bo Alliance株式会社
電気メーカー、情報コンサルティング会社にて総務・採用・秘書業務、社員教育を経て、講師として独立。現在は研修、大学非常勤講師として活躍。実務経験に裏付けられたビジネスマナー、接遇、キャリアデザインの指導には定評がある。秘書技能検定、サービス接遇検定の面接審査員にも従事している。

取材・文/佐藤優衣(神奈川大学人間科学部2年)

初出:まなナビ

関連キーワード
ニックネーム可
入力されたメールアドレスは公開されません
編集部で不適切と判断されたコメントは削除いたします。
寄せられたコメントは、当サイト内の記事中で掲載する可能性がございます。予めご了承ください。

シリーズ

介護付有料老人ホーム「ウイーザス九段」のすべて
介護付有料老人ホーム「ウイーザス九段」のすべて
神田神保町に誕生した話題の介護付有料老人ホームをレポート!24時間看護、安心の防災設備、熟練の料理長による絶品料理ほか満載の魅力をお伝えします。
「老人ホーム・介護施設」の基本と選び方
「老人ホーム・介護施設」の基本と選び方
老人ホーム(高齢者施設)の種類や特徴、それぞれの施設の違いや選び方を解説。親や家族、自分にぴったりな施設探しをするヒント集。
「老人ホーム・介護施設」ウォッチング
「老人ホーム・介護施設」ウォッチング
話題の高齢者施設や評判の高い老人ホームなど、高齢者向けの住宅全般を幅広くピックアップ。実際に訪問して詳細にレポートします。
「介護食」の最新情報、市販の介護食や手作りレシピ、わかりやすい動画も
「介護食」の最新情報、市販の介護食や手作りレシピ、わかりやすい動画も
介護食の基本や見た目も味もおいしいレシピ、市販の介護食を食べ比べ、味や見た目を紹介。新商品や便利グッズ情報、介護食の作り方を解説する動画も。
介護の悩み ニオイについて 対処法・解決法
介護の悩み ニオイについて 対処法・解決法
介護の困りごとの一つに“ニオイ”があります。デリケートなことだからこそ、ちゃんと向き合い、軽減したいものです。ニオイに関するアンケート調査や、専門家による解決法、対処法をご紹介します。
「芸能人・著名人」にまつわる介護の話
「芸能人・著名人」にまつわる介護の話
話題のタレントなどの芸能人や著名人にまつわる介護や親の看取りなどの話題。介護の仕事をするタレントインタビューなど、旬の話題をピックアップ。
介護の「困った」を解決!介護の基本情報
介護の「困った」を解決!介護の基本情報
介護保険制度の基本からサービスの利用方法を詳細解説。介護が始まったとき、知っておきたい基本的な情報をお届けします。
切実な悩み「排泄」 ケア法、最新の役立ちグッズ、サービスをご紹介
切実な悩み「排泄」 ケア法、最新の役立ちグッズ、サービスをご紹介
数々ある介護のお悩み。中でも「排泄」にまつわることは、デリケートなことなだけに、ケアする人も、ケアを受ける人も、その悩みが深いでしょう。 ケアのヒントを専門家に取材しました。また、排泄ケアに役立つ最新グッズをご紹介します!