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西城秀樹さん右足の後遺症、理学療法士に学んだマッサージ【第7回】

 脳梗塞の後遺症で右足が思うように動かせなくなった西城秀樹さん(享年63)。還暦を過ぎてもなお、ハードなリハビリに取り組んでいた。シリーズ7回目は、そんな秀樹さんを長年介護してきた妻の美紀さんが実践していた秀樹さんへのマッサージや息抜き方法について語ってもらった。

→第6回:「西城秀樹さんの命を繋いだ妻の手料理、野菜は小皿方式で」を読む

夫の闘病を支えるために必要だった時間

「秀樹さんのサポートは、妻として当たり前ことです。家族が風邪を引いたら良くなるように看病したり、おかゆを作ったりしますよね。私は、日々そういう気持ちでしたから、特別辛いとか大変とか感じたことはなかったんです」

 ゆったりと語る美紀さんだが、育ち盛りの3人の子供を抱えながら18年間、病を抱えた夫に寄り添ってきた。その日常はとにかく忙しかったという。

「2011年の暮れ、秀樹さんは脳梗塞ではじめて右半身に麻痺が残ってしまったんです。一番下の子が小学生になったころでした。病院の付き添いや子供たちの学校行事なんかでばたばたでしたね。辛いとは思っていませんでしたが、ただ毎日肩が凝って…。肩凝りが酷くて嘔吐してしまうこともあったんです。

 あるとき友人に相談したら、ヨガがいいよって先生を紹介してくださったんです。それでヨガを始めてみたら、だんだんとよくなって。何よりも毎回終わったあとに気持ちがすっとラクになるんですね」

 秀樹さんのサポートやリハビリの付き添い、子育ての合間を縫って捻出するヨガの時間が美紀さんの癒しになった。

「ヨガをして、最後に瞑想をするときに先生が、『自分の心と体、周りの人に感謝しましょう』と言うんですね。本当にそうだなって…。秀樹さんを支えてくださっている事務所の方やファンの方、家族にも感謝だなぁって毎回思うんです。ヨガに来られて1人の時間を過ごせたことにも感謝の思いで一杯になりました。50分ほどなのですが、気持ちがすっきりして、焦りがなくなる。日々焦ってばかりでしたから…」

 そう言って美紀さんは胸の前で両手を合わせた。

秀樹さんに右足だけのオイルマッサージ

 もう一度完璧に『YOUNG MAN』を歌い、踊る――還暦を過ぎていた秀樹さんは、そんな目標を掲げ、2015年ごろからハードなリハビリに取り組んでいた。夫のために「何かできることはないか」といつも考えていたという美紀さんは、真剣なまなざしで語る。

「右半身に麻痺があるので右足を引きずりがちで、つま先を持ち上げるのが大変なんですね。足首も固くなってしまっていて…。リハビリに通いながら、理学療法士の先生に教えてもらったマッサージを私が自宅でもしていました。

 右足にオイルをつけて、まず足の甲と足首の周りをもみほぐして、足の指もギュッとくっついて開きにくくなっているので、1本ずつマッサージして少しずつ動かします。このマッサージはずっと続けていました。

 秀樹さんはしばらくすると、もういいよ~って。本当は両足したほうがいいんですが、毎回左足までいかずにマッサージは終わってしまう。前にもお話ししましたが化粧水やクリーム(第4回参照)もそうなんですが、秀樹さんは体に何かつけるのがあまり好きじゃなくって…。マスクも帽子も身に着けるものが苦手で、すぐに取ってしまうんですよ」

 誰の前でも素顔のまま、そんな自然体のパパを家族みんなが大好きだったと、美紀さんは静かにほほ笑んだ。

病気でもいつも前向きにいてほしかった…

「すごくおしゃべりだった秀樹さんが、2016年あたりからは感情が薄くなったというか、元気がなくて、塞ぎ込むこともありました。そういうときは、俯いて猫背気味で肩が前に下がってしまいます。胸元を開いて姿勢をよくすると気持ちが前向きになるとヨガの先生に聞いて…。前屈みになりがちだから、姿勢を良くしてねって時々声をかけていました」

 家の中ではとにかく秀樹さんに話しかけることを心がけていたという。

「なるべく子供たちの明るい話題、テストでいい点とったよ、サッカーの試合で勝ったよ、とか。来年の旅行はどこに行こうかなど、未来の話をするようにしていました。病気になってからも家族で旅行は積極的に出かけるようにしていましたから」

 外では強烈なスポットライトを浴びてきた秀樹さんを、家ではいつも美紀さんが太陽のように温かく照らし続けた。

「次のお休みはパパはどこに行きたい?」と何度も語りかけた。秀樹さんと生きる未来に向かって…。

【木本美紀さんの寄り添い方】

●介護には息抜きも必要。少しでも1人の時間を作って
●助けてくれる人や周囲への感謝の気持ちを忘れずに
●未来の話や明るい話題を中心に話かける

木本美紀

1972年大阪生まれ。近畿大学理工学部土木工学科卒業後、建設コンサルタント会社に就職し、結婚を機に退職。2001年に西城秀樹と入籍し、1女2男と3人の母に。夫秀樹さんとの出会いから闘病生活、看取るまでを克明に綴った著書『蒼い空へ 夫・西城秀樹との18年』(小学館)は10万部を超えるベストセラーに。

撮影/浅野剛 取材・文/介護ポストセブン

●西城秀樹さんの闘病・介護…共に歩んだ妻・美紀さんが明かす家族のこと第1回

●妻が明かす西城秀樹さんが遺した宝物、子供たちの想い第2回

●西城秀樹さん“病に負けない心” 脳梗塞と多系統萎縮症に挑み続けた日々【第3回】

●西城秀樹さん闘病中の自宅改修と愛用した暮らしの道具【第4回】

●西城秀樹さん闘病中もあきらめなかった家族旅行の思い出【第5回】

●西城秀樹さんの命を繋いだ妻の手料理、野菜は小皿方式で【第6回】

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