暮らし

夫亡き後…女性のひとり暮らしに備える|老後リフォーム5つの準備

 今年7月の厚生労働省の発表によると、女性の平均寿命は7年連続で過去最高を更新し続け、87.45才を記録した。一方で、男性の平均寿命も伸びてはいるものの、81.41才。

 つまり、女性の方が男性よりも6年も長生きすることになる。いまは夫婦ともに元気でも、いつかは夫に先立たれ、ひとり暮らしを余儀なくされる人が多いということだ。“そのとき”が来てから後悔しないよう、いますべきことはなんだろうか──。

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夫に先立たれた女のひとり暮らし…リフォームはどこから?

 夫に先立たれてひとり暮らしをする女性にとっては、これまで家にいた時間が長かったこともあり、“この先も住み慣れた家で暮らしたい”と考えるのは自然な流れ。少しでも快適な老後を送るために、いまのうちから考えておきたいのが「リフォーム」だ。

 高齢者の生活支援や居住環境調整に詳しい、大阪保健医療大学准教授の山田隆人さんが話す。

「後になって慌てないように、できれば子供が自立する50代前半~60代にはリフォームを考え始めてほしい。それまでの子供中心だった生活スタイルを見直し、よりコンパクトで最小限の暮らし方になっていくタイミングです。家具の配置を変えたりして、少しでも効率的に動ける動線を作ってください」

→【老後のリフォーム】工事不要、移動可能!安心・手軽で便利なグッズ8選

1.リフォームは水回り、トイレ、寝室の順に

 とはいえ、全面的にリフォームしようとすればお金もかかってくる。どこから手をつければいいのか。

 高齢者住環境研究所代表の溝口恵二郎さんが言う。

「まず最初に考えるべきは、トイレとお風呂、そして寝室。この先、どんな状況になってもトイレやお風呂は必要ですし、どうしても寝室で過ごす時間は長くなってくる。寝室からトイレ、寝室からお風呂への移動距離ができるだけ短くなるようにするのが理想的です」

2.扉は引き戸に、床の段差をなくす

 足腰が弱くなってくると、トイレに限らず、扉は引き戸の方がいい。

「押し引きするタイプのドアだと、ドアを引いて後ろに下がったときに転倒しやすくなる。横に開く引き戸にして間口を広く取り、できれば20~30cmの長さのバータイプの取っ手につけかえておくと、もし将来、車いすになっても使いやすい」(溝口さん・以下同)

 床の段差も極力なくしたい。カーペットや畳は足がひっかかって転倒の原因になりやすいため、フローリングに替えた方が安心だ。

「多少の段差があった方が足腰を鍛えられるといいますが、それで転んでけがしてしまっては本末転倒。パーキンソン病で2mmの段差を車いすで乗り越えられなかったケースもあります」

3.お風呂と脱衣所野広さは?

 風呂は、入浴用の車いすで入れるように、脱衣所と浴室はそれぞれ1坪(約2畳分)、トイレは0.5坪(約1畳分)の広さは確保しておきたい。

→野村克也さんも…お風呂が命取りになった著名人

夫が生きているうちにできるリフォームの下準備

 トイレ、洗面所、風呂、キッチンの4つの工事をすると、費用は約400万円はかかる。期間は平均して3~4週間ほど必要になり、思い立ってすぐにできるものではない。そこで、まだ夫婦ともに元気なうちに、リフォームの“下準備”を進めておきたい。

→シニアの自宅リフォーム術チェックポイント|住宅改修は定年前にやるべき

1.配管を見直しておく

「配管をやり直す必要があるなら、いまのうちに寝室の押し入れの床下に配管だけでも持ってくるように工事をしておくと、後で押し入れをトイレにリフォームすることもできます」

2.手すりは焦ってつける必要なし

 一方で、焦ってつける必要がないのが、手すりだという。

「元気なうちに手すりをつけてしまうと、いざ使うときになったら腰が曲がって高さが合わなくなったり、手すりで通路の幅が狭くなって体をぶつけたりして、かえってけがのリスクが高まります」

 手すりをつけるときは、手すりが必要な人の体に合わせた“オーダーメード”が鉄則。

「例えば、トイレでの立ち座りのための手すりをつけるなら、背の低い人なら便器の近くに、高い人なら遠くにつけるなど、体格と体の状態に合わせてつけられるようにすべきです」(山田さん)

3.家具の高さをできるだけ揃えておく

 それまでは、部屋の入り口のそばに家具を固定したり、家具の高さをできるだけ揃えることで、手すり代わりに使うことができる。

「壁紙を張り替える際に壁の中に下地を入れておけば、後からビスなどを使って簡単に手すりをつけられるようになります」(溝口さん)

4.コンセントを増やしておく

 さらに、電源コードにつまずくリスクを減らすため、いまのうちにコンセントを増やしておいたり、コードレス家電に買い替えておくのも手。

5.コンロをIHにして火災予防に

 火災予防のためには、台所のコンロをIHに替えたり、卓上IHを購入しておくなどの方法がある。

 何より肝心なのは、自分の生活スタイルを考え、それを快適にするためのリフォーム。しっかり考えて準備しておきたい。

教えてくれた人

大阪保健医療大学准教授・山田隆人さん、高齢者住環境研究所代表・溝口恵二郎さん

イラスト/勝山英幸

※女性セブン2020年10月22日号
https://josei7.com/

●老後の住まい安心「リフォーム術」で後悔しない終の棲家を

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