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コロナ禍で外出自粛を求められる介護士の悲鳴…ストレス・メンタル不調も

「高齢者と接する仕事をする介護士にとって、コロナ禍の外出自粛は切実な問題です」と、介護士ブロガーのたんたんさんこと、深井竜次さん。たんたんさんのTwitterに寄せられた介護士たちのリアルな声から、コロナ禍で働く介護士の悩みを紐解いてみると――。

コロナ禍、介護士たちのリアルな声とは

 介護士ブロガーのたんたんと申します。僕は5年間介護施設での経験を元に「介護士の幸せな働き方」を目標にブログにて情報発信をしています。

 これまで介護士をしてきて感じた体験を記事にしてきました。今回は、コロナ禍で働く介護士たちが抱えているストレスや不満との向き合い方について考えてみたいと思います。

 僕のTwitterに寄せられる声の中で、コロナ禍で介護の現場で働く人たちは、「人の命を守る仕事だから感染予防に人一倍努めなくてはならないから」と思うように外出できない人が多く、中には、勤める施設から「県外への外出をしてはならない」という制約を受けている介護士も…。

 そこで改めてTwitterで介護士たちにこんな質問をしてみました。

たんたんさんのTwitter

【質問】

コロナ禍になってから介護施設から外出の自粛を言い渡されている介護職員が多いと思います

外出自粛に関して思うところや、不満を解消するためにどのような事をしているのか?という事を教えていただきたいです

 上記のツイートに対し、集まった声がこちらです。

≪職員の家族に濃厚接触者が出て、その職員がしばらく休みになるのは仕方ないのですが、その際、施設長から「俺たちは利用者の命を背負っているからな」と言われ、全職員がプレッシャーをかけられました。こんな人がいるから、クラスターが起きた介護施設への中傷があるのではないかと思いました≫

≪短距離だけど地下鉄通勤していて訪問介護の買い物代行でイオンモールにも寄る私が、今のところ罹患せず、もっぱら自動車通勤の施設系介護職が軒並みクラスター感染しているのは不思議≫

≪自分は福祉事務所の職員ですが、はっきりとは言われていないものの、飲み会に行くことや、旅行に行くことは控えてねといった空気があります

≪一種のスピーチロックなので、仕事に拘束されたのと精神的負担分のお金を払って欲しい

 こういった声のほか、介護士がコロナ禍で外出を制限され苦しい思いをしている人は多いです。

 外出自粛につて心の中では「仕方ない」と思っていたとしても、心理的な負担があるのは確かだと感じました。

 介護施設で働く多くの人たちは、社会的使命から「介護職だから外出は最低限にしよう」と考えているのです。

 このコロナ禍の中で家の中で完結する趣味を新しく始めて満喫する人も多いとは思いますが、旅行が趣味だったり外へ出て人と会ったりすることを楽しみにしている人にしてみれば、苦しい状況でしょう。

 介護職の人たちに対し、慰労金も給付されていますが、失われた1年に対する対価としては物足りないと感じる人も多いようです。

「仕方ない」と思う一方で「なんで私たちだけ…」という介護士たちの思いを知って欲しいと僕は考えています。

外出自粛について僕が思うこと

 介護士の外出自粛を施設が言い渡すことに関して「命を預かっている仕事」である観点から考えれば当然かもしれません。

 現在は全国一時停止となったGoToトラベルキャンペーンですが、多くの人が県外に移動している中、介護・医療福祉従事者は控えるべきという圧力を社会全体がかけることに関して、僕は反対の立場を取っています。

 また、慰労金と引きかえに自由を制限されているとしたら、それは深刻な問題だと思います。このままでは、さらに介護業界の人材離れが進んでいき、結果的に介護崩壊につながるのではないか…。

介護職への慰労金は多いか少ないか?

 介護現場では感染のリスクを背負いながら入居者の命を守るための行動が求められます。この非常に重い責任に対して慰労金の金額は少ないのではないかと僕は感じています。

 ちなみに介護職への慰労金の額は以下の通りです。

・新型コロナ感染者が発生した、または濃厚接触者に対応した事業所の職員→20万円

・感染者も濃厚接触者もいない事業所の職員→5万円

※参考/新型コロナウイルス感染症 緊急包括支援事業(介護分)申請マニュアル ~介護事業所・施設等~
https://www.mhlw.go.jp/content/000652462.pdf

 1年近く自由を制限された介護士にとって、この金額は見合うものでしょうか?

 慰労金は、介護士が外出自粛をしていようがいまいが関係なく支給されるものなので、「外出自粛するだけ損なのでは?」と感じている人もいるようです。

 そもそも慰労金自体、介護施設が申請しなければ職員の手には渡りません。まだ申請していない施設もあるという声もありました。もしまだ慰労金をもらっていない場合は、職員同士で協力して施設と交渉することをおすすめします。

→介護施設で働く人にコロナ慰労金を支給…もう申請した? いくらもらえる?

 介護業界に限った話ではありませんが、「自粛」は強制ではありません。介護施設が「外に出るな」と強制するのは個人の自由を奪っているともいえるのではないでしょうか。

 外出はしてもよいはずなのに、施設側が強制しているとしたら、それは問題です。そもそも介護施設が従業員である介護職員のプライベートの行動を制限するのは、裁量の範囲を超えていると思います。そういったことが、各地の施設や病院で起こっているのはとても残念なことです。

 →外出自粛で重大健康リスクが!家ごもり生活に潜む病気4つのリスクと対策

メンタルが壊れる!? 介護士の不安

 介護施設では、ただでさえ多い業務に加え、感染予防のために相当な負担がかかっています。そのうえ、外出自粛やコロナ禍の不安によって、ストレスや不満を発散できずにメンタルが壊れてしまう人が増えていくことが僕は心配なのです。

 仕事のストレスを休みの日に外出することで解消してきた人は、不満を抱えた状態で仕事を続けるといつか限界がくるかもしれません。

 コロナ禍の社会的な使命感から外出自粛を固く守り、無理して介護の仕事を続けている人が多いかもしれません。僕もかつて経験したことがあるのですけれど、緊張の糸がどこかでふっと切れてしまうこともあるのです。介護士たちが心を壊して休職、退職をしてしまうとしたら…。

 コロナ禍で家族が介護施設への面会もままならない中、利用者さんたちのために働いている介護職従事者がいるということに注目してほしい。介護士に対しても、医療従事者と同じように敬意を払うべきだと僕は考えます。

→新型コロナでデイサービスに行けない!? 北海道の介護職員から悲痛な声

介護士の不満やストレスへの対処法

 僕は介護士の人たちに外出自粛でがんじがらめになることなく過ごして欲しいと考えています。行動を過剰に制限すると、ストレスが蓄積してどこかで爆発しかねないと思うからです。

「自分が原因で利用者や同僚に感染を拡大させてはいけない」と考えるのは当然ですが、自分を縛り付けすぎず、密を避ける、大人数の会食をしないといった、みんなが守るべき感染対策をしていればいいのではないかと思います。

 そして、コロナ渦による心理的負担を軽減させるための相談窓口が開設されているので、少しでも「辛いな」と感じているなら、専門の相談員に気持ちを打ち明けることをおすすめします。

→不安な心をセルフケアする方法|コロナ禍の心理的ストレスをチェック

介護職が心を壊してしまう前に相談を!

■厚生労働省/新型コロナウイルス感染症の影響による特別労働相談窓口一覧
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/index_00004.html

■全国老人福祉施設協議会/介護職員向けの相談窓口「JSここメン(こころメンテ)」
LINEなどによる相談もできます。
https://js-cocomen.com/

 介護士の存在は、今後ますます必要不可欠です。介護職に就いている人たちが、心地よく働けるように、どうか無理はせず自分を守ることを優先して欲しいと僕は考えています。

文/たんたん(深井竜次)さん

たんたん(深井竜次)さん

島根県在住。保育士から介護士へ転職し、介護士として働いた経験を持つ。主に夜勤を中心に介護施設で働きながら介護士の働き方について綴ったブログ『介護士働き方コム』(https://www.tantandaisuki.com/)を運営。著書『月収15万円だった現役介護士の僕が月収100万円になった幸せな働き方』(KADOKAWA)が話題に。

●老人ホームの夜勤で体験した怖い話3選|深夜の笑い声、空き部屋から呼び出し…

●【体験談】50代未経験でも介護職に転職できる? 初めて介護の世界に飛び込んだ母の話

●初めての看取り【介護士ブロガーの実体験】100歳のお婆さんの看取りケア

 

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