公開日:2021.01.14 |暮らし    1

親子同居歴60年の評論家・樋口恵子さん88才|娘との同居はまるでシェアハウス…

「私は亡き母とも、自分の一人娘とも同居をしてきました。その年数はトータルで約60年。親子同居のベテランなんですよ」。そう言って微笑むのは、評論家の樋口恵子さん(88才)。聞けば、母との同居時代は夫との板挟みに苦しみ、現在は娘との口げんかが絶えない日々。そんな、山あり谷ありの同居生活を振り返ってもらった。

評論家・樋口恵子さんが同居を始めた理由

 樋口恵子さんの“親子同居”は、仕事で手が回らない家事育児を実母に手助けしてもらうため始めたのだという。

「あれは、私が30才になる少し前のことですね。生まれて間もない娘を育てていた私は、夫から働くようすすめられて、就活をしました。運よく仕事が見つかりましたが、そうなると家事・育児の手が足りない。そこで実母の力を頼るために、同居を始めたんです」

 ところがいざ暮らしてみると、実の親子とはいえ、合わないことばかりだったという。

「なにせ母子といえど育った環境が違うんですもの。母は戦前、私は戦後生まれで、育ちも田舎と都会で違う。母は無遠慮な人ですから、私の育児に対するダメ出しも容赦ないんです。

 夫が私をかばってくれましたが、今度は母と夫の板挟みになったものです。それでもなんとかやっていけたのは、お互いに必要としていたから。というのも、娘が4才のときに夫が亡くなったんです。

 だからその後、私が娘を育てられたのは母のおかげ。母にしてみても、両親もきょうだいもみな他界していますから、いまさら帰る田舎もない。娘の私に頼るしかなかったのです」

子供にとって大事なのは新たな家庭

 そんな折、樋口さんが再婚することになり、また一波乱が…。

「母は再婚に大反対でした。しばらく別居でにらみ合いが続いた時期もあります。母が病気になって賛成も反対もなくなったのですけれど…」

 義理の子供と暮らす親は、結婚した子供にとって大事なのは新たな家庭だという意識を持つ必要があると樋口さんは言う。その意識があれば、遠慮するべきときは遠慮して、いい距離感を生むからだ。

「私の母も次第にその意識を持つようになり、晩年は“娘が幸せならそれでよし”と諦めてくれました。亡くなる半年前、病床で“ふつつかな娘ですが、どうぞ末永くよろしくお願いします”という言葉を夫に残した母の姿は、いまでも目に焼き付いています」

樋口さん親子の同居のルールとは…

 それから数十年、樋口さんの娘さんは医師となり、一度は勤務先の転勤に伴い家を出たが、再び実家に戻り、現在は樋口さんと母娘2人暮らしを続けている。

 自宅は、4年前に樋口さんが老後の資金をつぎ込んで建て替えた一戸建てだ。

評論家 樋口恵子さん
愛猫が娘さんとの同居の緩衝材になっているという(写真は樋口さん)。

お金の分担を決める

 樋口さんは家まわり、娘さんは4匹の愛猫と趣味のガーデニングにかかわる費用、自家用車の費用を出しているという。そのほかの生活費は、各自の収入で別会計。

帰りが遅くなるときは必ず連絡する

「同居人として最低限のルールは、お互いの安全のため、外泊はもちろん、いつもより帰宅が遅くなるときは必ず連絡することです」

家事はお互い別々。シルバー人材も活用

 ルールはほかにもある。生活リズムが違う母娘は家事も各々でやる。樋口さんは現在、シルバー人材センターの会員に週2回、炊事、掃除、洗濯などの家事を依頼。

 食事は、主に会員に調理してもらったご飯や、宅配のお弁当などをルーティンで食べているという。

「娘が作り置きしてくれた生野菜のサラダも食べます。でも、私が生野菜が苦手なもんだから、娘はしょっちゅう“まずこれから食べなさい”と、口うるさいの。

 私の生命を管理しているつもりなのでしょう。“こんな、馬になったような気になるものが食べられるか!”と怒りながら食べていますが…。おかげで胃腸はよくなりましたね(笑い)」

シェアハウスの同居人のように…

 まるで、シェアハウスに住む同居人のようで、樋口さんの母と暮らしていたときとはまた違う親子同居スタイルとなっている。

「けんかの絶えない母娘ですが、なんとかやれているのは、やはり母のときと同様、互いに必要性を感じているから。

 私は娘のおかげで孤独死の不安を免れ、娘は娘で、一戸建て暮らしを楽しんでいます。娘の趣味の庭いじりは、一戸建てじゃないとできませんからね。そしてもう1つ、必要性を感じ合っているとはいえ、互いに自立していることも大きいでしょう」  

 親子であろうと同居するからには依存や甘えは禁物だと樋口さんは強調する。そこは他人と暮らすのと同じなのだ。

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教えてくれた人

樋口恵子さん(88才)/評論家。NPO法人「高齢社会をよくする女性の会」理事長。自身の母を看取った経験から、現行の介護保険制度の創設に尽力した。現在は医師の娘さん(62才)と暮らす。

取材・文/桜田容子

※女性セブン2020年12月17日号
https://josei7.com/

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  1. 松村香澄 より:

    樋口恵子さんの本を初めて読んだのは、高校生の時です。『わたしの青春ノート』。大学生の時には、講演会にも行きました。枚方市民会館。あれから40数年。いつまでも、長生きしてくださいね。

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