健康

コロナ禍で進む【老眼】に眼科医がすすめる100円のグッズとは?

 朝はテレビでニュースを見て、昼はリモートワークでパソコンを凝視。夜はスマホをチェックして…あなたの体で「目」ほどの働き者はいないかもしれない。専門家の最新の知見に基づく老眼対策のトレーニングを紹介する。

在宅ワークで目の不調が…

「長らく“積ん読”してあった本を開いてみたら、びっくり。目がチカチカするし文字がぼやけるし…明らかに視力が下がっていて、うまく読めないんです。ここ数か月、なんとなく目の奥が重いなあと思っていたけれど、ここまでダメージがあったとは」

 眉間にしわを寄せながらため息をつくのは、東京都在住の会社員・佐藤弓子さん(50才)。

 会社は週の半分がテレワークになり、パソコンやスマホと向き合う時間が明らかに増えた。いま、佐藤さんのように目の不調に悩む人が増えている。二本松眼科病院眼科医の平松類さんが解説する。

「在宅ワークによって疲れ目やドライアイ、視力低下に悩む人が増えている印象です。特に多いのは、スマホなど小さな電子機器の画面を長時間凝視することで目の筋肉が過度に緊張し、まひして動きづらくなる“スマホ老眼”です。加齢による老眼と併発する人もおり、目にとっては非常につらい環境が続いています」

 新型コロナウイルスの感染者数は増え続け、在宅ワークは今後も続くことが予想される。

「2021年が充実した年になるかどうかは、目の健康に左右されるといっても過言ではありません。老眼をはじめとした目の不調は、セルフケアやトレーニングによって改善することができる。年末年始の休みを使って“澄んだ目”を取り戻しましょう」(平松さん、以下同)

 今日から、そして準備なしですぐに始められる効果的なメソッドを視力改善に取り組む専門家に伝授してもらった。

100円老眼鏡ストレッチでピント調節力を改善

 そもそも、なぜ老眼で見えづらくなるのか。平松さんはその原因の1つを「毛様体筋(もうようたいきん)」と呼ばれる筋肉にあると話す。

「目が物を見るとき、レンズに当たる水晶体を厚くしたり薄くしたりすることでピントを合わせており、その調整をしているのが、毛様体筋という筋肉です。これがこわばったり筋力が低下したりすることで視力が下がる。逆にいえば、毛様体筋の凝りを取り、柔軟性を回復させれば、ピント調節力は改善するのです」

 毛様体筋の柔軟性を高める方法として、平松さんが推奨するのは「100円老眼鏡ストレッチ」。やり方は至って簡単だ。

「手持ちの老眼鏡ではなく、100円ショップで売られている老眼鏡をかけて、1日に5分程度、2m以上先をぼんやり眺めるだけ。そのときに気をつけたいのが、“あえてきちんと見ないように意識する”こと。視界がぼんやりしているのは、毛様体筋が緩んでほぐれている証拠だから、ベストな状態です」

■100円老眼鏡ストレッチのやり方

 100円ショップで売っている老眼鏡の中から自分の視力よりもやや度数の強いものを選び、かけてぼんやり2m以上先を眺める。1日5分程度、目の筋肉を休ませるつもりで取り組む。しっかりと見ようとしないのがポイント。

 老眼鏡の度の強さは中程度の「+2」が最適。「弱・中・強」なら「中」を選ぶといいという。普段近視用のメガネやコンタクトレンズをしている人は、その上から老眼鏡をかけること。ぼやけた視界が目の前に広がった後は、そのまま目を開いているだけでいい。

「スマホの操作やパソコン作業の合間に『100円老眼鏡ストレッチ』を行うと、その後の見え方がクリアになっているのを実感できる。いつ取り組んでも効果的ですが、特におすすめの時間帯は就寝前。筋肉は睡眠によって回復するため、効果が出やすいとされています」

 手軽な方法だが、効果はてきめん。10日間これを続けた結果、視力が0.5から1.0と大幅にアップした女性もいたという。

千円札ストレッチで視力回復にアプローチ

 視力に影響するのは、目の筋肉だけではない。

「私たちは目そのものに加えて、脳も使って物を見ています。まず目の水晶体が光を捉え、その光が電気信号として脳に伝わる。その後、脳で処理された画像が視界として認識されます。つまり、脳の処理能力を上げることができれば、視力が向上するのです」

 目の筋肉をほぐし、血流をよくしたら、次は脳トレに励みたい。平松さんは、ぼやけた縞模様を見ることで脳の処理能力を上げる『ガボールパッチ』を推奨しており、本誌でも過去に何度か紹介している。

→ガボールパッチのやり方はこちら!

 しかしこの方法は手元に専用の画像がなければ取り組めない。そこで平松さんは簡単にできる代案として「千円札ストレッチ」を教えてくれた。

「まず、千円札を光にかざして“透かし”をしっかりと見ます。それから札を徐々に下ろしていき、透かしが見えるか見えないかぎりぎりのところで、お札に描かれた透かしの顔をよく見てください。見えづらいものを見ようとすることで、画像を脳で処理する訓練になります」

■千円札ストレッチのやり方

千円札を見つめる女性のイラスト

 千円札を頭の上に上げて透かし、少しずつ下ろしていき、透かしが見えるか見えないかくらいのところで手を止め、しっかり見る。

 いずれもすぐにできるものばかり。早速試してみて!

教えてくれた人

平松類(ひらまつ・るい)さん/医学博士。愛知県田原市生まれ。昭和大学医学部卒業。現在、昭和大学兼任講師ほか、二本松眼科病院、彩の国東大宮メディカルセンター、三友堂病院で眼科医として勤務。述べ10万人以上の高齢者と接し、その症状や悩みに精通している。NHK「あさイチ」、TBSテレビ「ジョブチューン」、フジテレビ「バイキング」、テレビ朝日「林修の今でしょ!講座」、テレビ東京「主治医が見つかる診療所」、TBSラジオ「生島ヒロシのおはよう一直線」、「読売新聞」「日本経済新聞」「毎日新聞」「女性セブン」「週刊文春」「週刊現代」などメディ出演多数。著書に、著書に、『1日3分見るだけでぐんぐん目が良くなる!ガボール・アイ』『老人の取扱説明書』『認知症の取扱説明書 』(以上SB新書)、『緑内障の最新治療』(時事通信社)等がある。

イラスト/飛鳥幸子

※女性セブン2021年1月7・14日号
https://josei7.com/

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