公開日:2021.03.09 |暮らし   

「スリの銀次に盗まれたお金は損失として計上できる」『桃鉄 』の税金を税理士と真剣に考えた<2>

 電鉄会社の社長になって日本全国をめぐるすごろくゲーム「桃太郎電鉄」シリーズ(通称“桃鉄”)。その桃鉄の世界に、もしも税金があったら……を、税理士と考えるシリーズ、第2回は「貧乏神が勝手に買ってきたカードは経費で落ちる?」「キングボンビーに捨てられたお金はどうやって帳簿につける?」を、税理士・高橋創さんと考えます。

©さくまあきら ©Konami Digital Entertainment

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スリの銀次にやられたら、必ず被害届を出すこと!

 前回は青マスでもらえるお金や、黄色マスでもらえるカードなど、主に「収入」のことを考えました。でも、桃鉄は順風満帆な経営ばかりではありません。プラスもあればマイナスもあります。冬に赤マスに止まれば、一気に何億もの負債を抱えることも。

第1回を読む→もし『桃太郎電鉄 』の世界に税金があったら?税理士と真剣に考えた<1>

 借金を抱えたまま3月の決算を迎えると、それはそれはテンションが下がりますが……まさかこんな状態でも税金を取られたりしないですよね?

高橋:「法人税は利益にかかりますので、3月決算で赤字ならば課税はありません。ただ一部、収益にかかわらず課税されるものもあるので注意が必要ですね」

 え!儲かってないのに税金を取られちゃうんですか!?

高橋:「うちの地区で商売をやる人は払ってね、という“ショバ代”のような税金なんです。ただ、中小企業なら最小7万円程度のレベルなので、桃鉄の世界では誤差みたいな金額ですけど」

 赤マス以外にも、桃鉄にはお金を奪っていくキャラが存在します。特に憎たらしいのが「スリの銀次」。突然姿を現して、プレイヤーの所持金を盗んでしまいます。

ときどき登場する「スリの銀次」。最悪の場合、所持金の全てを盗まれてしまう。©さくまあきら ©Konami Digital Entertainment

ときどき登場する「スリの銀次」。最悪の場合、所持金の全てを盗まれてしまう。©さくまあきら ©Konami Digital Entertainment

 スリの銀次に盗まれたお金って、商売で損したのとは違う種類のお金じゃないですか。これって税金ではどう考えるんですか?

高橋:「事業用の現金が盗難された場合は、“事業を行う上で生じる損失”として費用計上することができます。商売で損したお金と同じ扱いにできる、というわけですね」

 ということは、3月の決算で収益からマイナスされるわけだから……。盗まれた分、法人税が安くなるわけですか。

高橋:「そういうことになります。ただし、盗難が起きたことを説明するために、警察に被害届を出す必要があります。被害届がないと、税務署が損失と認めてくれないこともあるので」

「パトカード」でスリの銀次を追い払うことはできますけど、本気で警察に声をあげなきゃいけないと。

高橋:「個人の場合も、盗難による損害は雑損控除として控除できますが、この場合も被害届が必要です。泣き寝入りなんてダメです! 絶対にあいつをつかまえましょう!!」

 高橋さんもスリの銀次に相当やられているみたいですね……。

貧乏神は節税の役に立つ!?

 桃鉄でプレイヤーを悩ませる存在といえば、なんといっても「貧乏神」。目的地から遠いプレイヤーについて回り、勝手に物件を売ったり、カードを買ったり、その他いろいろな狼藉を働きます。

勝手にカードを買ってくる貧乏神。通常価格の2倍の値段する。©さくまあきら ©Konami Digital Entertainment

勝手にカードを買ってくる貧乏神。通常価格の2倍の値段する。©さくまあきら ©Konami Digital Entertainment

 貧乏神が勝手に買ってきたカードは、相場の2倍以上する値段。プライヤーは泣く泣くお金を払うわけですが、このお金って普通に経費になるんでしょうか。高値でつかまされているわけですが……。

高橋:「高値で買っても、通常のカード購入と同じ扱いで構いません。たとえ高い値段で特急カードをつかまされても、結局プレイヤーはカードを使っちゃうじゃないですか。使った時点で特急カードの購入費用は『旅費交通費』になりますので」

「勝手に買ってきた」という行為は、特に税金には関係ないですか……?

高橋:「全然関係ないですね。まぁ、あれは高値で売りつけているのか、こちらが高値で買ってあげているかで、話は変わってくるんですが……」

 プレイヤーが高値で買ってあげる……? どういうことですか?

高橋:「納税者と税務署のあいだで争いとなった事例に、『子会社を助けるために定価より高く買ってあげた』ってのがあるんですね。そのケースでは、適正価格との差額は“寄付をした“ってことにされているんです」

 1000円のものを5000円で買ってあげたら、差額の4000円は寄付でしょ、ってことですか。

高橋:「寄付金は一部分しか経費にすることができないルールになっていますので、ちょっと税金が高くなってしまうんですよね。……ですが、貧乏神に便宜を図る理由なんてなにひとつないので、これは考えなくていいでしょうね」

 貧乏神の悪行には、「勝手に物件を売ってきた」というのもあります。これも非常に憎たらしい行為ですが……。

高橋:「実はこの行為、節税に役立つんですよ。桃鉄で一番の節税対策は、貧乏神をつけることだと私は思っています」

持っている物件を安値で勝手に売る貧乏神。これが節税対策!? ©さくまあきら ©Konami Digital Entertainment

持っている物件を安値で勝手に売る貧乏神。これが節税対策!? ©さくまあきら ©Konami Digital Entertainment

 貧乏神が節税対策に!? こっちは汗水たらして買い集めた物件を売られているんですよ……!

高橋:「まぁまぁ。1000万円で買った物件を500万円で売られたとしますよね。すると500万円の損、いわゆる”譲渡損”が生まれます。これを3月の決算で利益と相殺すれば、課税対象額を抑えられるんです」

 貧乏神によって損をすることで、利益が減り、利益にかかる法人税も少なくなる……と?

高橋:「そういうことです」

 でも……物件を売るということは、資産がなくなっちゃうってことじゃないですか? それって節税対策と言えるのか……。

高橋「現実社会でも、資金繰りが悪くなったら不要な資産を売ってお金に換えますよね。でも桃鉄の世界は、借金を抱えないと物件を売れないじゃないですか」

 確かに。所持金がマイナスになってはじめて、物件を売ってお金に換えます。

高橋:「つまり桃鉄では、物件を自由にお金に換えることができない。いつでも物件を売れる貧乏神は、その制約が効かない“抜け道”なんです。もし節税を優先するなら、貧乏神を連れて旅することをオススメしますね。ゲームに勝てないうえにストレスは溜まりますが

キングボンビーはもはや「災害」

 貧乏神の話が出たところで、もっと気になるのはキングボンビーです。つきまとわれたら最後、巨額のお金を捨てられ、カードは破り捨てられ、物件もなにかも失って貧乏一直線。極悪非道、冷酷無比、その振る舞いはまさに災害級……!

泣く子も黙るキングボンビー。 ©さくまあきら ©Konami Digital Entertainment

泣く子も黙るキングボンビー。 ©さくまあきら ©Konami Digital Entertainment

 この「キングボンビーにお金を捨てられる」というシチュエーション、会計や税金の世界ではどう表現されるんですか?

高橋:「いやこれは……。会計の仕訳の概念に『お金を捨てられる』というものはないんです。経理の人が泣きますよ。国も想定してないんじゃないかなぁ……」

 想定されてない!

高橋:「貨幣損傷等取締法という、紙幣を損傷したら罰せられるよ、という法律はあるんです。でも、見たところ1万円札を破り捨てたりはしてないので、ここはセーフかも」

  プレイヤーにとっては全くセーフではないですが……。さっき経理の人が泣いちゃうという話でしたけど、それでも「お金を捨てられる」を帳簿につけなきゃいけなくなったら、どうしたらいいですか?

高橋「あえて言うなら……。『現金過不足』にしますかね。釣り銭を間違えたときみたいに、想定していた帳簿の数字と、リアルに存在するお金が食い違ったときに使う勘定科目です。お金を捨てられるなんて、まさにそれじゃないですか」

  過不足なんてレベルじゃないですけど。

高橋:「現金過不足としてズレた金額を把握しておいて、3月の決算で『特別損失』として計上する形になると思います。災害での損失と同じ、“イレギュラーな損失”という扱いですね。

 会計上はもはや災害になるんですね! キングボンビー、恐るべし……。

高橋:「さらにキングボンビーは、物件やカードといった資産まで捨てちゃいますよね。この場合、どうやって損失を証明したらいいか、頭を悩ませそうな気がします……。ぜひ国税庁には『現金や資産を捨てられたときのQ&A』みたいなものを公表してほしいですね」

まとめ

・赤字になったら法人税は課税されない。
・スリの銀次に盗まれたお金は損失として計上できる(ただし被害届を出すこと)
・貧乏神が勝手に買ってきたカードの代金は経費にできる。
・貧乏神が勝手に物件を売るのは「節税対策」になる。
・キングボンビーによる被害は、会計上は災害と同じ扱い。

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教えてくれた人/高橋創(たかはし・はじめ)

髙橋 創

1974年東京都生まれ。東京都立大学卒業後、専門学校講師、会計事務所勤務を経て、高橋創税理士事務所を新宿二丁目に開設。 開業したものの顧客を増やしていく為の営業方針が定まらず苦戦する中、酒好きが高じたためかドリンクをオーダーすることで税理士に相談をできるイベント「確定申告酒場」を新宿ゴールデン街のバー「無銘喫茶」で開催。そこで、相談者の素朴な疑問に触れるうちに「税金のことを楽しく伝える」ことに喜びを感じ、雑誌のコラム、YouTube、プロレス興行での「確定申告マッチ」などであまり堅苦しくない税金ネタを発信するようになる。 著書に『フリーランスの節税と申告 経費キャラ図鑑』(中央経済社)、『図解 いちばん親切な税金の本20-21年版』(ナツメ社)などがある。

構成・文/井上マサキ(いのうえ・まさき)

井上マサキ

1975年 宮城県石巻市生まれ。神奈川県在住。二児の父。大学卒業後、大手SIerにてシステムエンジニアとして勤務。ブログ執筆などを経て、2015年よりフリーランスのライターに。企業広報やWebメディアなどで執筆するかたわら、「路線図マニア」としてメディアにも出演。著書に『日本の路線図』(三才ブックス)、『桃太郎のきびだんごは経費で落ちるのか?』(ダイヤモンド社)など。

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