公開日:2021.03.16 |暮らし   

借金帳消にする「徳政令カード」で、高額課税される!?|『桃鉄 』の税金を税理士と真剣に考えた<3>

 電鉄会社の社長になって日本全国をめぐるすごろくゲーム「桃太郎電鉄」シリーズ(通称“桃鉄”)。その桃鉄の世界に、もしも税金があったら……を、税理士と考えるシリーズ、第3回は「カード代が経費で落ちるタイミングは?」「徳政令カードで借金が消えたら税金はどうなる?」を、税理士・高橋創さんと考えます。

©さくまあきら ©Konami Digital Entertainment
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カードを買っただけでは経費にならない!?

 第1回では青マスなどの「収入」を、第2回では貧乏神などの「損失」について、税金がどうなるかを考えました。最終回となる今回のテーマは「カード」です。

 桃鉄にはさまざまな効果を持つカードを手にすることができ、人からお金を奪ったり、借金を帳消しにしたりして、ゲームを有利に(ときには不利に)進めることができます。

 前回までのおさらいですが、「黄色マスでもらえるカードは“現物の収入”」なんでしたよね?

高橋:「そうです。カードは市場(カード売り場)での流通価格が決まっている“資産”と考えます。なので、黄色マスでカードをもらったら、収入として申告が必要です。商品券やAmazonギフト券をもらうことと同じ、って説明しましたよね」

 そうでした。でもそれって、カードをもらった場合ですよね? プレイヤーは、カード売り場でカードを買うこともできるじゃないですか。

高橋:「できますね」

第1回を読む→もし『桃太郎電鉄 』の世界に税金があったら?税理士と真剣に考えた<1>

第2回を読む→「スリの銀次に盗まれたお金は損失として計上できる」『桃鉄 』の税金を税理士と真剣に考えた<2>

 桃鉄においてカードは“事業”に必要なものですから、カードを購入した代金は経費で落ちるんじゃないですか? どうですか?

高橋:「はい、基本的にはそうなんですが……」

 ですが……?

高橋:「カードは使ってはじめて経費になるんです。手元に持っているだけでは、経費として認められないですよ」

カードは「カード売り場」で売買できるが……©さくまあきら ©Konami Digital Entertainment
カードは「カード売り場」で売買できるが……©さくまあきら ©Konami Digital Entertainment

 それって……。例えば、1年目にぶっとびカードを4000万円で買ったとして、2年目まで大切に持っていたら?

高橋:「1年目の決算では、経費として計上できません」

 え、なんでですか!? 

高橋:「使わないものはただの在庫なんですよ。在庫って、会計上は資産として扱われるんですね。つまり先ほどの例だと、4000万円という現金資産が、ぶっとびカードという資産に変わっただけ」

 在庫は資産……。ということは、2年目でぶっとびカードを使ったら?

高橋:「2年目の決算でやっと経費にできます。ぶっとびカードなら旅費交通費かな」

 そんな時間差トラップがあるんですか!

高橋:「これは現実社会でもよく勘違いされるんですよ。決算間際に『経費を使わなきゃ!』と、原材料をむやみに買ったり、切手を山ほど買ったり、コピー用紙を何年分も買ったりする人がいるんですね」

 原材料も切手もコピー用紙も、全部経費で落ちそうなものですね。

高橋:「繰り返しますが、購入しても未使用のものは、その年の経費になりません。期末が近づいてからいっぱい消耗品を買っても、節税にはならないんです。これは税務調査でも指摘されることが多いんで、本当に気をつけてください」

 ……あれ? ちょっと待ってください。前回、「貧乏神が勝手に買ってきたカードは経費で落ちるか」って聞いたじゃないですか。ひょっとしてあれも……?

高橋:「同じですね。貧乏神が買ってきた年に使い切らないと、その年の経費にはなりません。なので、使い道のないカードを勝手に買ってきたら怒っていいと思います」

 またひとつ貧乏神に対する憤りが増えました。

他のプレイヤーから奪われたお金は「交際費」

 桃鉄には「ベビキュラーカード」や「坊主丸儲けカード」など、他のプレイヤーからお金を奪うカードがありますよね。こういう場合はどうなるんですか?

高橋:「他のプレイヤーと徹底的に争うなら、スリの銀次のときと同様に被害届を出して、あとは民事訴訟を起こしてお金を取り戻すことになるかと思います」

 すいません、もう少し穏便に解決したいんですが……。会計上はどうなるんでしょう?

高橋:「となると、『他のプレイヤーにあげた』ということで、交際費になるのかな……。交際費として認められるのって、接待、供応、慰安、贈答の4種類なんです。この場合は贈答として、交際費扱いになるかと思います」

 贈答ですか……。こちらもあげたくてあげたわけじゃないですけど。

高橋:「現実でも『気に入らない社長だけど開店祝いの花を贈っとくか』みたいなのあるじゃないですか。同じですよ」

 とはいえ、桃鉄の場合はそれで何億ものお金が動きますよね。それっていいんですか?

高橋:「おっしゃる通り、高額の贈与は税務署から否認される可能性は高いです。中小企業なら交際費は800万円までは認められていますが、800万円なんて桃鉄では一瞬ですし」

 他にも「たいらのまさカード」(全員の所持金が平均化されて同じになる)、「連帯保証人カード」(マイナス金額を誰かが払ってくれる)なんてのもありますが。

高橋:「細かくみるとキリが無いですが、結局プレイヤー間でお金が動いているわけですから、お金が減った側は贈答として交際費になるか、もしくは寄付として扱われるでしょう。いずれにせよ、全額が経費として認められる可能性は低いですね」

 お金は取られるし経費にできないし散々ですね……。 ちなみに、お金が増えた側のプレイヤーは、会計上どういう扱いになるでしょうか。

高橋:「そりゃ儲かってますから、利益として扱うことになります。これもしっかり確定申告してもらわないといけませんね」

借金帳消し「徳政令カード」は高額課税の引き金

 お金を奪われたプレイヤーの味方といえば、借金を帳消しにしてくれる「徳政令カード」もそのひとつ。キングボンビーにどんなにお金を捨てられても、このカードさえ使えば所持金が0円に戻ります。

徳政令カードはカード売り場で0円で買える。必ず買っておきたいが…… ©さくまあきら ©Konami Digital Entertainment
徳政令カードはカード売り場で0円で買える。必ず買っておきたいが…… ©さくまあきら ©Konami Digital Entertainment

 でも借金が急に0円になるなんて、現実ではほぼありえない話。これは税金の世界ではどう扱われるんでしょう。

高橋:「徳政令カードですか……。実はこのカード、桃鉄を税金の視点で見たとき、最も恐ろしいカードなんですよ」

 え、そうなんですか? 所持金0円で儲けなんてないし、税金なんてどこにもかからないような気がしますが……。

高橋:「いやいや! めちゃくちゃ課税されますよ。勘定科目に『債務免除益』というのがありまして、債務(借金)が免除されたぶんの金額は、利益とみなされるんです」

 それってつまり、5億円の借金が徳政令カードで帳消しになったら、「5億円儲かった」ってことに……?

高橋:「その通りです。法人税は利益の30%なので、5億円の30%、1億5千万円の法人税を納めねばなりません」

この場合、17億2230万円が利益とみなされて課税される……! ©さくまあきら ©Konami Digital Entertainment
この場合、17億2230万円が利益とみなされて課税される……! ©さくまあきら ©Konami Digital Entertainment

 そんな! こっちは所持金0円ですよ! 払えるわけないじゃないですか!

高橋:「手元に資産がないことは、税金を払わなくていい理由になりません。税金の世界では儲かったのか、儲かってないのかしか見ませんから」

 えー!!

高橋:「100億の借金に徳政令カードを使ったら、30億の法人税がかかると思ってください。たぶん、徳政令カードは桃鉄のなかでが最も課税されるカードだと思います。一撃で億単位の課税が発生しますから……」

 弱者の味方だと思ったら、とんだ悪魔じゃないですか……。善人の顔をしているだけに、キングボンビーより怖い……。

高橋:「今日の話をまとめると、桃鉄にはカード売り場のように『出費をしても経費にならない』ものもあるし、徳政令カードのように『実は巨額の課税がある』ものもあるわけです。ホントに、桃鉄は税金の教科書にピッタリだと思いますね」

まとめ

・カードを買っても、未使用のまま持っていたら経費にならない。

・カードの効果によりプレイヤー間でお金が動いた場合、お金を奪われた側は「贈答」として一部を交際費にできる。

・お金を奪った側は「利益」とみなされるので、儲かった分の確定申告が必要。

・徳政令カードで帳消しになった額は「利益」とみなされる。億単位の金額が課税される可能性も。

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教えてくれた人/高橋創(たかはし・はじめ)

髙橋 創

1974年東京都生まれ。東京都立大学卒業後、専門学校講師、会計事務所勤務を経て、高橋創税理士事務所を新宿二丁目に開設。 開業したものの顧客を増やしていく為の営業方針が定まらず苦戦する中、酒好きが高じたためかドリンクをオーダーすることで税理士に相談をできるイベント「確定申告酒場」を新宿ゴールデン街のバー「無銘喫茶」で開催。そこで、相談者の素朴な疑問に触れるうちに「税金のことを楽しく伝える」ことに喜びを感じ、雑誌のコラム、YouTube、プロレス興行での「確定申告マッチ」などであまり堅苦しくない税金ネタを発信するようになる。 著書に『フリーランスの節税と申告 経費キャラ図鑑』(中央経済社)、『図解 いちばん親切な税金の本20-21年版』(ナツメ社)などがある。

構成・文/井上マサキ(いのうえ・まさき)

井上マサキ

1975年 宮城県石巻市生まれ。神奈川県在住。二児の父。大学卒業後、大手SIerにてシステムエンジニアとして勤務。ブログ執筆などを経て、2015年よりフリーランスのライターに。企業広報やWebメディアなどで執筆するかたわら、「路線図マニア」としてメディアにも出演。著書に『日本の路線図』(三才ブックス)、『桃太郎のきびだんごは経費で落ちるのか?』(ダイヤモンド社)など。

 

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