公開日:2021.04.09   

60才を過ぎたら“やめるべき”保険と5つの見直しポイント【FP解説】

 60代といえば定年を迎えて仕事をリタイヤして収入が減ったり、子供が独立して学費がかからなくなったりと、生活が変わる節目でもある。ファイナンシャルプランナーの大堀貴子さんは「60才という人生の節目に、保険を大幅に見直しておくといい」と語る。具体的な方法を解説していこう。

女性がやめるべき?を指さしている写真

60才過ぎたらやめるべき保険って?(写真/GettyImages)

60才以降の保険で必要ないものは?

 民間の保険に加入している人は、60才を機に見直しをすることをおすすめする。

 子供が独立している人は、自分に万が一のことがあったときに備えて、学費など大きな資金を残す目的で保険金を用意しておく必要はなくなるだろう。

 また、65才以降は年金が受給できるので、生活費を残すために保険に加入しておく必要もなくなる。60才以降は、仕事をリタイヤして収入が減少することもあるため、毎月高い保険料を支払うことはできるだけ避けたい。

 一方で、60才を超えて長生きすることで医療費や介護費がかかってくる可能性がある。

 厚生労働省の調査※によると、入院総数は65才から急激に増加しはじめ、年齢を重ねるごとに増えていく。現役時代は入院の経験がなくても65才以降は入院など医療費が大きくかかる可能性も出てくる。

入院総数の表

表出典/厚生労働省「平成29年患者調査」より抜粋して編集部で作成

※厚生労働省「平成29年患者調査」より
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/17/dl/02.pdf

 また、生命保険文化センターの調査※によると、介護になる確率(要支援・要介護認定者の割合)は、40~64才が0.4%、65~69才が2.9%、70~74才が5.6%、75~79才が12.6%となっている。これが80~84才になると27%、85才以上は59.3%と急激に上昇する。

※生命保険文化センター「年代別人口に占める要支援・要介護認定者の割合」より
https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/nursing/2.html

 つまり、60才以降は自分に万が一のことが起きたときのことよりも、自分自身の医療費や介護費に重点をおいて保険を見直すべきだ。

 以下で保険の種類別に必要なもの・不要なもの、見直し方法について解説する。

死亡保険:遺族への大きな補償は必要なくなる

 死亡保険とは、自分が死亡したら遺族にまとまった保険金が支払われる保険だ。

 死亡保険は年齢が上がるほど保険料が高くなるため、子供が独立しているなら大きな保険金額をかける必要はない。 

 定期死亡保険といわれる保険料が掛捨型の死亡保険は子供が小さいときには最適だが、遺族に大きな資金を残す必要がない年代となれば必要がなくなる。

 一方で、老後資金に余裕がある場合は、死亡保険を遺族に遺し、相続税の節税効果を活用することもできる。死亡保険金は特定の人を指定すれば、その人に必ず資金が渡すことができ、「500万円×相続人」の金額が非課税となる。

医療保険:60才を過ぎたら手厚い補償はいらない

 医療保険は、病気で入院や手術などがあったときに保障してくれる保険だ。また、がん保険はがんに特化した保険でがんと診断されたら一時金が受け取れるなどの保障がある。

 65才以降は入院する確率が高くなり、医療費の負担が増える可能性があるが、医療費が高額になったときには、「高額療養制度」により負担限度額があり、負担限度額以上のお金を還付または事前申請で支払わなくて済む。

 また、75才以上になると自動的に「後期高齢者医療保険制度」に加入し、医療費は原則1割負担となる(現役並みの所得者は3割負担)。

 たとえば、70才以上で医療費が月100万円かかっても1割負担なら10万円の負担で済む。さらに高額療養制度で年収370万円以下なら月の限度額は5万7600円となり、4万2400円が還付される。また、非課税世帯なら事前申請で窓口負担は2万4600円で済む。

 このように公的医療制度があるため、ある程度の貯蓄があるなら、手厚い医療保険に無理に加入する必要はないだろう。

 一方で、公的制度は差額ベッド代や先進医療などには適用されないことに注意したい。また、高額療養制度は低所得者には負担を軽減してくれるが、高所得者は限度額が高くなる。

 年収が383万円以上ある場合、医療費の自己負担額は3割に上がる。たとえば、医療費が月に100万円かかったときには、事前申請で限度額8万7430円の窓口負担となる。

 さらに、2022年からは75才以上の単身世帯で年収200万円以上、夫婦世帯で年収計320万円以上の場合、窓口負担割合が現行の1割から2割に引き上げられる。今後も高齢化の進行により医療費負担は増える傾向だ。

医療保険で見直すべきポイント

 現在加入している医療保険が終身型なら生涯保障なのでそのまま加入し続けるといいだろう。

 ただし、定期型で年齢による更新ごとに保険料が上がるタイプの満期は70才までなど決まっていることがあるため、満期を確認しておこう。

 新たに医療保険に加入する場合は、保険料が高いため、特に年金収入が多い、働いているという人は医療費負担と保険料負担、必要な保障を天秤にかけて検討したほうがいい。

 また、がん保険は、医療保険にがん一時金などを付加できるものもある。

 入院に伴う医療費は入院期間の短期化に伴い減少傾向となっているが、個室に入院したいならば入院日額5000~1万円、がんの陽子線治療等先進医療を受けたい場合には先進医療特約をつけるといいだろう。

保険の見直しをしているシニア夫婦の写真

60才を節目に保険の見直しを(写真/GettyImages)

介護保険:貯蓄でまかなえるなら必要ない?

 医療費と同様に介護費も公的介護制度がある。65才以上で、要介護状態、要支援状態になったとき、要介護認定申請をすることにより、介護サービスを1割負担(所得により2割、3割の場合もある)で受けることができる。

 また、低所得者の場合、居住費や食費に関しても負担限度額と標準的な費用の額との差額が給付される。

 生命保険文化センターの調査※によると、介護費は一時的な費用として平均69万円かかり、毎月平均7.8万円(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)、介護期間は平均54.5か月となっている。

 つまり、介護にかかる平均的な費用は、一時的な費用69万円+月7.8万円×54.5か月=494.1万円となる。

※生命保険文化センター「介護にはどれくらいの年数・費用がかかる?」
https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/nursing/4.html

 この費用を貯蓄で用意できなさそうであれば、介護保険が選択肢としてあげられる。

 介護については長生きすれば確率は高くなるが、必ず介護になるとはいえないため、できれば貯蓄で用意しておくことがおすすめだ。

介護保険の低解約返戻型と死亡保障型とは?

 介護保険は大きく分けて低解約返戻型と死亡保障型がある。

 低解約型は支払保険料が安いが、介護が必要にならなかったときは掛捨となるため、介護になったとき貯蓄でまかなえないという人には適している。

 一方で、死亡保障型は支払保険料が高いが、介護とならずに死亡した場合に死亡保険金を遺族が受け取ることができるため、比較的毎月の収支に余裕のある人にはおすすめだ。

保険の見直しをするときに注意すべきこと

 60代で保険の見直しや、いま加入している保険の解約、新たな保険に加入する場合は、以下のことに注意しておきたい。

 まず、持病や過去に大きな病気をした場合は新たな保険に加入できない可能性があるため、先に新たな保険に加入してから解約すべきだ。

 また、60代以降と年齢が上がってから新たな保険に加入すると保険料が高くなるため、新たな保険が同じ保険料だったとしても、保障額が少なくなっていることもあるので、よく比較して選ぶべきだ。

 できれば新たな保険に加入する前に、現在加入している保険を継続しながら必要な保障内容を確保できないか、払い済みにして保障を続けることできないか、よく検討した上で見直しを行おう。

60才以降の保険見直しポイント【まとめ】

1.新たな保険には加入できないこともあるので、見直す場合は要注意

2.年齢が上がるほど保険料は高くなる

3.保険料が同じでも保障額が減っていないか確認を

4.新たに加入する前に現行の保険の補償内容を見直す

5.払い済みにして保障を続けることできないかチェックを

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文/大堀貴子さん

ファイナンシャルプランナー おおほりFP事務所代表。夫の海外赴任を機に大手証券会社を退職し、タイで2児を出産。帰国後3人目を出産し、現在ファイナンシャルプランナーとして活動。子育てや暮らし、介護などお金の悩みをテーマに多くのメディアで執筆している。

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