連載

認知症の母が曜日を間違えなくなった…地味にスゴイ便利グッズとは?

 岩手・盛岡で暮らす認知症の母の遠距離介護をしている作家でブロガーの工藤広伸さん。お母さんがデイサービスに行く曜日を間違えてしまうという悩みに、「最近、驚くほど効果があった!」という、ある便利グッズを教えてくれた。一体どんなものなのだろうか?

認知症の母は日付や曜日がわからない!?

 わが家にとって、カレンダーはいわば司令塔です。訪問看護やヘルパー、デイサービスなど、母の介護スケジュールのすべてが書いてあり、母はその予定を何度も確認しながら生活しています。

 認知症の進行によって、日付や曜日感覚がなくなってきた母をサポートするために、居間には大きな紙の壁掛けカレンダーと、日付や曜日が表示されるデジタル電波時計の2つを設置しています。

 母は「1つの」カレンダーだけでは、今日が何日で何曜日かを理解できないので、まずデジタル電波時計に表示される日付や曜日を確認してから、紙のカレンダーに書いてある今日の予定を把握しています。

 この工夫のおかげで、母は混乱することなく、ひとりで生活できていたのですが、認知症の進行とともに機能しなくなり、曜日を理解していない行動が増えていったのです。

デイサービスではない日に準備を始めてしまう

 母が通うデイサービスは、火曜日と金曜日の週2回です。前日の月曜日と木曜日になると、デイサービスの連絡帳に書いてある次回訪問日と、カレンダーに書いてある予定を何度も見比べて、次の日の準備を少しずつ始めます。

 まず、着ていく服を台所のテーブルの上に並べ、次にバッグや財布、メガネなどを準備するのですが、何を持って行くべきか忘れてしまうので、きちんと揃いません。そのため、翌日にいらっしゃるヘルパーさんの力を借りて、忘れ物チェックをしています。

 しかし、最近は月曜日や木曜日に自分で準備した服を見て、デイサービスの日と勘違いして、そのまま外で送迎車を待ちそうになったこともあります。また、月曜や木曜だけでなく、毎日デイサービスの準備をした週もありました。

 わたしが母と一緒なら、「今日はデイサービスの日じゃないよ」と言って、準備を止められます。しかし、遠距離介護のときは、そうはいきません。母ひとりの力で、曜日を理解してもらわなければならないのです。

 真冬に来るはずのないデイサービスの送迎車を何時間も待っていたら、風邪をひきます。真夏の炎天下で待っていたら、熱中症になってしまいます。幸い、大ごとにはなっていませんが、ヘルパーさんが外で発見して、家の中に戻したこともありました。そこで、ある対策を実施しました。

間違ったデイサービス行きを阻止する対策

 対策とは、見守りカメラの導入です。カメラに服やバックが映っていれば、母がデイサービスに行こうとしている合図です。もし曜日が違っていたら、東京から電話で「今日はデイサービスの日じゃないよ」と言って止めるようにしました。

 この対策のおかげで、母が曜日を間違えて外で送迎車を待つことはなくなりましたが、その代わり、わたしのカメラによる見守りの頻度が増えてしまいました。もっといい方法はないだろうか?

 そもそも、母が曜日を理解できないせいで、デイサービスではない日に準備を始めてしまうのだと考えました。認知症の人でも曜日が分かるグッズはないかとAmazonを見ていたところ、面白いものを見つけました。

 その商品は、アデッソの『メガ曜日日めくり電波時計』。特徴は、時間よりも日付や曜日の字が大きく、分かりやすくなっているところです。早速購入し、今まで使っていた電波時計と並べて、曜日が理解できるかテストをしてみました。

 ――古い電波時計を見せて、

わたし:「ここ見て。今日、何曜日か分かる?」

母:「え、どこ?」

わたし:「この文字。何曜日か読める?」

母:「だめだ、小さくて見えない」

 これまで使っていたデジタル電波時計の曜日の文字が、母には小さくて見えていなかったようです。字が大きくなったおかげで、曜日が見えるようになりました。

『メガ曜日日めくり電波時計』を購入したあと、「今日は何曜日?」と、母に毎日質問し続けました。新しい電波時計で、曜日を見る練習です。母が正解したときは、「合ってる!いいね!」とやたらと褒めて、なんとか理解してもらうよう努力を続けました。

 3週間ほど曜日テストを繰り返し、わたしは東京へ帰る日がやってきました。母がひとりになっても、時計の曜日を正しく理解して、間違いなくデイサービスの準備はできるようになったのでしょうか?

認知症の症状が理由にならないことも…

 帰京して1か月が経過しましたが、母は完璧に曜日を理解して、デイサービスの準備をするようになりました。まさかここまで効果があるとは思ってもいませんでしたが、わたしは電話する回数が減りました。ADESSO(アデッソ) 掛け時計 メガ曜日日めくり電波時計 デジタル シルバー HM-301

工藤さんが母のために購入した電波時計。どんなものか見てみる【Amazonで購入する】

 介護する側には当たり前に見えているものも、高齢者にはよく見えてない可能性もあります。その状況を「認知症だから…」と判断せず、「単純に見えてないだけなのでは?」と発想を転換することも大切かもしれません。

 ちなみに母は、曜日があっていたとしても送迎車が来る2時間前から外で待とうとするので、いつも電話で止めています。時間の感覚も分かってくれるといいのですが…。

 今日もしれっと、しれっと。

工藤広伸(くどうひろのぶ)

祖母(認知症+子宮頸がん・要介護3)と母のW遠距離介護。2013年3月に介護退職。同年11月、祖母死去。現在も東京と岩手を年間約20往復、書くことを生業にしれっと介護を続ける介護作家・ブロガー。認知症ライフパートナー2級、認知症介助士。ブログ「40歳からの遠距離介護」運営(https://40kaigo.net/)。音声配信メディア『Voicy(ボイシー)』にて初の“介護”チャンネルとなる「ちょっと気になる?介護のラジオ」(https://voicy.jp/channel/1442)を発信中。

ニックネーム可
入力されたメールアドレスは公開されません
編集部で不適切と判断されたコメントは削除いたします。
寄せられたコメントは、当サイト内の記事中で掲載する可能性がございます。予めご了承ください。

この記事へのみんなのコメント

  • さちよ

    わたしが探していたものですー!87歳の母がゴミ出しの曜日がわからなくて何か良いものがないかと探しておりました!

  • 超不規則勤務なので自分自身、曜日感覚が 危ないことがあります。 なかなか曜日が大きく表示される時計がなかったので、これいいですねえ。

最近のコメント

シリーズ

介護付有料老人ホーム「ウイーザス九段」のすべて
介護付有料老人ホーム「ウイーザス九段」のすべて
神田神保町に誕生した話題の介護付有料老人ホームをレポート!24時間看護、安心の防災設備、熟練の料理長による絶品料理ほか満載の魅力をお伝えします。
「老人ホーム・介護施設」の基本と選び方
「老人ホーム・介護施設」の基本と選び方
老人ホーム(高齢者施設)の種類や特徴、それぞれの施設の違いや選び方を解説。親や家族、自分にぴったりな施設探しをするヒント集。
「老人ホーム・介護施設」ウォッチング
「老人ホーム・介護施設」ウォッチング
話題の高齢者施設や評判の高い老人ホームなど、高齢者向けの住宅全般を幅広くピックアップ。実際に訪問して詳細にレポートします。
「介護食」の最新情報、市販の介護食や手作りレシピ、わかりやすい動画も
「介護食」の最新情報、市販の介護食や手作りレシピ、わかりやすい動画も
介護食の基本や見た目も味もおいしいレシピ、市販の介護食を食べ比べ、味や見た目を紹介。新商品や便利グッズ情報、介護食の作り方を解説する動画も。
介護の悩み ニオイについて 対処法・解決法
介護の悩み ニオイについて 対処法・解決法
介護の困りごとの一つに“ニオイ”があります。デリケートなことだからこそ、ちゃんと向き合い、軽減したいものです。ニオイに関するアンケート調査や、専門家による解決法、対処法をご紹介します。
「芸能人・著名人」にまつわる介護の話
「芸能人・著名人」にまつわる介護の話
話題のタレントなどの芸能人や著名人にまつわる介護や親の看取りなどの話題。介護の仕事をするタレントインタビューなど、旬の話題をピックアップ。
介護の「困った」を解決!介護の基本情報
介護の「困った」を解決!介護の基本情報
介護保険制度の基本からサービスの利用方法を詳細解説。介護が始まったとき、知っておきたい基本的な情報をお届けします。
切実な悩み「排泄」 ケア法、最新の役立ちグッズ、サービスをご紹介
切実な悩み「排泄」 ケア法、最新の役立ちグッズ、サービスをご紹介
数々ある介護のお悩み。中でも「排泄」にまつわることは、デリケートなことなだけに、ケアする人も、ケアを受ける人も、その悩みが深いでしょう。 ケアのヒントを専門家に取材しました。また、排泄ケアに役立つ最新グッズをご紹介します!