暮らし

男性の“おひとりさま”に備える 自炊が苦手な夫に妻が教えたい4つのこと

 男女の平均寿命の差が少しずつ縮まり、今後は「妻に先立たれる夫」も増えていくことが考えられる。もしも、妻に何かがあったとき、自炊ができない夫の行く末は――。医師や家事研究家など専門家に取材し、男性の「おひとりさま」への備えとして、妻が夫に教えておいたほうがいいことを教えてもらった。

男女の平均寿命の差は少しずつ縮まっている

 昨年、厚生労働省が発表した最新の日本人の平均寿命(「簡易生命表(令和元年)」)によると、女性は87.45才、男性は81.41才。ともに、過去最長を記録した。

 女性の方が男性より長生きすることは、すっかり当たり前のこととなっているが、実は、女性と男性の平均寿命の差は年々縮まっており、20年前である2001年は6.86才だったのが、2019年になると6.04才になっている。(内閣府『高齢社会白書』2020年版より)

妻を見送る覚悟がない男性が多い

 今後も、平均寿命の差はますます小さくなることが予想され、その結果、「妻に先立たれる夫」も増えていくことが考えられる。

 シニア世代のサポート事業を手掛けるアリア代表の松本すみ子さんは、シニア男性の危機的状況について嘆く。

「女性の平均寿命が長いことと、自分の妻が長生きすることは、決してイコールではありません。

 しかし、世の男性のほとんどが、自分の方が先に逝くと思っているのか、『妻を見送る』場合もあるという意識と覚悟がない。伴侶を先に亡くした場合、圧倒的に男性の方が精神的なダメージを受けやすいのは、そのためです」

誰もがひとりで生きていく術を身に着けるべき

 つじかわ耳鼻咽喉科院長で、『老後はひとり暮らしが幸せ』(水曜社)の著者である辻川覚志さんは、「前人未到の大長寿時代は、誰もがひとりで生きていくスキルを身につけておく必要がある」と説く。

「女性は60才を過ぎたら『妻役』をやめ、『夫の世話』はもうやめた方がいい。例えば極端なことを言うと、“今日はおいしいおかずができた”というときは、夫に食べさせない。密閉容器に入れて保存し、自分だけで食べてしまうべき。

 なぜなら、『妻の手料理はおいしい』とすり込まれている男性は、ひとりになったときに妻の手料理が忘れられず、食べるものに困ってしまうのです」(辻川さん)

 そもそも、「家事」と「お世話」は別物だ。何もできない夫のために、あれこれ働くことは、「家事」なのか「お世話」なのか考えてほしい。

『「家事のしすぎ」が日本を滅ぼす』(光文社新書)などの著書を持つ家事研究家の佐光紀子さんが指摘する。

「男性が家事を一切手伝わない家庭では、妻が『どうせあの人はできないから』と諦めてしまうことが多い。そうした夫婦の大半が、60代以上です。

 でも、あなたに何かがあったとき、家事のできない夫は、間違いなく子供の重荷になるし、路頭に迷います。これは超高齢社会となった日本が抱える大問題です」

自炊が苦手な夫に覚えておいてほしい4つのこと

 愛する夫だからこそ、自分がいなくなった後も幸せに生きてほしい。だからといって、何もかも教えることは難しい。自炊が苦手という夫には、まずは、食事に関する以下の4つのことを覚えてもらうのはいかがだろうか。

1.炊飯器の使い方を覚えてもらう

 手始めに、炊飯器の使い方を覚えてもらおう。米を洗えなくても、無洗米と水を入れて、炊飯のスイッチを押せれば充分だ。

 あとは、納豆や卵かけご飯を食べるなり、総菜を買ってくるなりできる。

2.インスタントみそ汁からマスター

 食べるものに口うるさい夫には、「これさえあれば大丈夫」という1品を用意しておきたい。それがみそ汁だ。

 無論、「だし」から取らせる必要はない。「料理をしたことがない男性には、みそ汁にだしを入れることを知らない人もいる。まずは細かいことを言わずに、お湯を沸かし、お椀1杯のお湯にインスタントみそ汁を薄めれば、ある程度の味のものが食べられるとわかってもらうことから始めましょう。

 慣れてきたら、鍋にお湯を沸かして、そこにお肉をちょっと入れて、色が変わったところにインスタントみそ汁を入れるなど、少しずつ難易度を上げていきます。みそだけを溶いて『まずかった』と夫が言ってきたら、そこで初めて、『それは、だしが入っていないからだよ』と教えればいい」(佐光さん)

 みそ汁のいいところは、わかめや豆腐、豚肉など、さまざまな具材を追加できること。さらに、インスタントにも豊富なバリエーションがある。

「インスタントに文句を言うのは、味ではなく、『妻がインスタントを使って楽をした』ことが気に入らないのではないでしょうか。ならば、いろんな種類を買ってみて、夫が納得するものを一緒に見つけてはどうでしょう」(佐光さん)

3.冷食は「食べ比べ」で満足のいく味を探す

 便利な現代は、コンビニやスーパー、デパ地下、さらにはデリバリーなどで、出来合いの総菜を簡単に買うことができる。しかし、こうした商品を毛嫌いする男性も存在する。

 昨年の夏、スーパーの総菜コーナーでポテトサラダを手にした女性に対し、

「母親ならポテトサラダくらい作ったらどうだ」と高齢男性が言いがかりをつけたことがSNSで反響を呼び、ワイドショーでも議論になった。

 全日本ズボラ主婦連盟代表理事を務める料理研究家の浅倉ユキさんは、

「まずは、おみやげ感覚で攻めるべき」とアドバイスする。

「『から揚げが好きだと言っていたから、評判の店のものを買ってきたよ』と、“あなたのため”を強調するのです。こうやって、『出来合いのものもおいしい』と、わからせることが大事です。

 冷凍食品なら、テレビCMで映ったときに、『これ、おいしそうだから一緒に食べてみない?』と夫の了解を得た上で買ってくる。

 もしくは、いろんなメーカーの冷凍餃子を食べ比べして、好みの冷凍餃子を見つけるのもいい。ひとりになったときも、それを買えば同じ味が食べられます」

4.「定番」商品の売り場を覚えてもらう

 必要以上に周囲の目を気にする男性も多い。スーパーでウロウロすることを恥ずかしがり、売り場がわからなくても店員に尋ねられず、手ぶらで帰る人も珍しくない。一緒に出かけて買い物に慣れてもらうことも大事だが、行きつけの店をつくるのも大切だ。

「コンビニでもスーパーでも、近所の中華料理店のテイクアウトでも、『ここに行けばこれがある』という『定番』の場所を覚えてもらう。自分の満足がいく総菜がどこへ行けば買えるのか、そういう行きつけをつくっておくといい」(佐光さん)

 いくつになっても、「常連」の店は夫の強い味方だ。

教えてくれた人

『老後はひとり暮らしが幸せ』(水曜社)の著者・つじかわ耳鼻咽喉科院長 辻川覚志さん、家事研究家・佐光紀子さん、シニア世代のサポート事業を手掛けるアリア代表・松本すみ子さん、全日本ズボラ主婦連盟代表理事 料理研究家・浅倉ユキさん

※女性セブン2021年4月22日号

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