公開日:2021.08.08 |暮らし   

老後にあなたは誰と住みますか?二世帯住宅という選択肢も

 人生100年時代が到来し、長くなったシニア期をより充実して暮らすために、住まい環境を整えることはとても大切。終の棲家をどうするか…。「元気なうちからの準備が大切」と住宅ジャーナリストの中島早苗さんは言う。自身も親の見送り経験がある中島さんが、これまで取材してきた実例などをもとに、親や、自分の高齢・介護期を想定した住まいの選択肢や心構えを考えるシリーズ。今回は、老後を子世帯と一緒に住むことを視野に入れてみるという話だ。

住宅ジャーナリストと考える終の棲家(写真/GettyImages)

東京都の1世帯人員1.95人の衝撃

 令和2年国勢調査の速報(※1)によれば、東京都の1世帯当たり人員が2人を切り、1.95人となったというのです。この結果には驚きました。

※1:https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2021/06/25/01.html

 2人を下回るのは、国勢調査が始まった101年前の大正9年以来、初めてのこと。

 調査が始まった大正9年は4.79人、以来最も多かった昭和10年は4.97人とほぼ5人家族がメジャーでしたが、昭和35年に初めて3人台へ推移したのを境に減り続け、前回の調査までの40年間は2人台。しかし今回、とうとう2人未満になったのです。

 最も少ないのは青ヶ島村の1.43人、次いで新宿区の1.57人、渋谷区と豊島区が1.64人。東京都は、高齢化を背景に高齢者の1人暮らしの割合が増えていることなどが、世帯人員の減少の背景にあるとみているようです。

加速する核家族化で変わる家族のかたち

 これは東京の例ですが、では全国では、65歳以上の人は誰と住んでいる割合が多いのでしょうか。令和元年版高齢社会白書(※2)によれば、夫婦のみの世帯が最も多く、32.5%。次いで単独世帯の26.4%、親と未婚の子のみの世帯が19.9%となっています。

※2:https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2019/html/zenbun/s1_1_3.html

 昭和55年には三世代世帯が最も多く(50.1%)、およそ半分の世帯が、おじいちゃんおばあちゃんと孫が同居していたのがわかります。それからわずか40年足らずで急速に核家族化が進み、「家族」のかたちが大きく変わったことになります。

 シニア期に誰とどんな風に住みたいか。それをイメージして準備しておくことは、充実したシニアライフにとって大切ですが、不確定要素が多いため、なかなか決められないという人も多いと思います。

 家族や結婚のかたちも以前とは変わり、子どもが独立せずに親と同居し続けるケースもあります。また、夫婦で長生きしてずっと暮らしたいと思っても、どちらがいつ先立たつかは、ほとんど誰にもわからないから悩ましいです。

 そんな中、子ども達と一緒に暮らすことを選んで、今の自宅を二世帯住宅に建て替える、という選択肢もあります。

 今回はそんな1軒の例を紹介しましょう。

建築家と相談して建てた二世帯住宅例

 関東に住む女性Aさんは60代。数年前に夫を亡くし、以降長男と2人で築50年以上の日本家屋に住んでいました。

 老朽化した家屋は台風で瓦屋根が飛ぶなどの不具合もあったため、建て替えることに。子ども達と暮らすことを選び、結婚して近くに住んでいた長女夫婦も迎え、二世帯住宅を造ることにしました。

 当初、大手ハウスメーカーでの建て替えを検討していましたが、結局、別の工務店から紹介された建築家の山嵜雅雄さん(一級建築士事務所 株式会社 山嵜雅雄建築設計主宰)に設計を任せることになりました。

 出来上がったのは、1つの外玄関を入ると中で左右に各世帯に分かれる、小さな共同住宅のようなプラン。Aさんが要介護になった時のことを想定し、外から玄関へはスロープでアプローチでき、親世帯内玄関の三和土(たたき)は外用と内用の車椅子を乗り変えられるよう、十分な広さを取ってあります。

A邸外観。正面の外玄関を入ると左右に二世帯が分かれる。アプローチには車椅子用のスロープも

 その内玄関には小さなホームエレベーターも設置されています。個人の住宅にエレベーターとは贅沢な、という意見もあるかもしれませんが、私がこれまで取材した住み手の人からは「エレベーターを設置してすごくよかった」という声を何度か聞いたことがあります。元気な時は考えもしませんが、一たび脚や体が不自由になると、階段の昇降は難しくなり、上階に行かれなくなるリスクもあります。

 車1台分の初期費用、ランニングコストがかかると言われるホームエレベーターですが、後からリフォームで設置すると更に費用はかかるので、逆に言えば、もしも予算を確保できるのなら一考に値するかもしれません。

親世帯内玄関には、要介護期も想定して三和土から直接乗れるホームエレベーターを設置

 Aさん邸の話に戻りましょう。

 玄関を入って右手の1階&2階の親世帯は、Aさんと長男のエリア。同様に左手は長女夫妻のエリアという、縦割り型のレイアウトです。基本的には玄関以外それぞれ独立したプライベート重視のレイアウトですが、中央部分に和室や中庭を共有し、必要に応じて子世帯からも行き来ができるようになっています。

 A家は法事などの際、近所の親戚が自宅に集まる習慣があるため、和室にご先祖様をまつる仏壇も収納。集まりに使う多くのお膳やお重、食器などを収納するパントリーも設けました。

法事の集まりにも使う和室には、床の間の右手に、ご先祖様をまつる仏壇収納を備えている

 Aさん邸は予算的には恵まれたケースで、ここまで十分なスペースや設備を確保できない人の方が多いと思いますが、誰にとっても「老後、誰とどんな家に住むか」という問いは共通しています。

 設計した建築家の山嵜さんは言います。

「Aさんは夫に先立たれ、子ども達と集まって住むと決めて、古い家屋を建て替えることにしました。誰でも、夫婦のどちらかが先にいなくなるのは覚悟しておかなければなりません。それも想像しながら、老後の棲家を考えて準備したいものです。今の自宅ではない別の場所に住み替える選択肢もありますが、そこで新しい友達を作れるかなど、1人残った場合に誰とどんな風に生活したいか、シミュレーションしてみるといいでしょう」

 リタイアしてからの長いであろうシニア期、そばにいて欲しいのは子どもか、親族か、それとも友達や趣味の仲間なのか。

 あなたにとっては、誰とどんな風に過ごす日々が幸せでしょうか。

教えてくれた人/山嵜雅雄さん

建築家。一級建築士事務所 株式会社 山嵜雅雄建築設計主宰

文/中島早苗(なかじま・さなえ)

中島早苗
(撮影/遠藤宏)

住宅ジャーナリスト・編集者・ライター。1963年東京生まれ。日本大学文理学部国文学科卒。婦人画報社(現ハースト婦人画報社)に約15年在籍し、住宅雑誌『モダンリビング』ほか、『メンズクラブ』『ヴァンサンカン』副編集長を経て、2002年独立。2016~2020年東京新聞シニア向け月刊情報紙『暮らすめいと』編集長。著書に『建築家と家をつくる!』『北欧流 愉しい倹約生活』(以上PHP研究所)、『建築家と造る「家族がもっと元気になれる家」』(講談社+α文庫)他。300軒以上の国内外の住宅取材実績がある。

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