やっぱり朝食は食べたほうがいい理由 抜くと「太りやすい、脳内出血のリスクも」

 古くからの習慣で、「食事は1日3回食べるもの」と思っている人も多いが、“不惑”40才を過ぎ、体重が増え、体型が変わってくると迷い始める。「年をとっても、1日3回食事をするべきなの?」。やせるためや健康増進を求めて、朝食抜きのファスティングやプチ断食、1日1食、朝食を食べないなど、メディアでは「これが正解!」と謳う記事が躍るが、さて、ホントのところ、健康のため、ダイエットのためには、食べるべきか、食べざるべきか…。改めて“朝食”について考えてみました。

「ぎりぎりまで寝ていたいから朝は食べる時間がない」「起き抜けは食欲がなくて食べられない」「ダイエット中で摂取カロリーを減らしたい」などの理由で、朝食を食べない人は案外多い。その一方、3度の食事の中では朝食を重視する専門家は多い。

「朝食が重要なのは、睡眠を挟んで空腹時間が最も長い、一種の枯渇状態で食べる一日の最初の食事だからです。

 朝食を摂る効用は、【1】昼までのエネルギー源の補給ができること、【2】体内時計がリセットできること、【3】朝、食物繊維を摂ることで腸内環境を整えられること、という大きく3つが挙げられます」

 そう語るのは、大妻女子大学家政学部食物学科教授で、大麦研究の第一人者でもある青江誠一郎さんだ。

「朝食を抜くと、午前中に頭がボーッとして、体も重く元気が出にくいうえ、イライラする傾向にあります。特に、脳はブドウ糖がないと生きていけないので、糖質と食物繊維からなる炭水化物を朝食で摂るのが合理的。ただやせたいからと朝食を抜くと、筋肉量が減り、基礎代謝も落ちるため、かえって太りやすくなります」(青江さん)

朝食を抜くと脳出血のリスクが高まる弊害も

 朝食を摂るメリットと、抜くデメリットについて、ダイエットに詳しい糖尿病内科医である工藤孝文さんは次のように語る。

「まず、朝食を摂ると調子が悪くなるという体質の人は一定数存在しており、彼らに朝食を無理強いする必要はありません。

 しかし、文部科学省が全国の小・中学生を対象に行った調査によると、朝食を食べる生徒の方が、食べない生徒よりも学力テストの成績がよく、スポーツ庁の調査でも、朝食を毎日食べる生徒の方が、食べない生徒よりも体力テストの総合点が高い傾向にあったと報告されています。

 一方、朝食を抜く人は昼食後の血糖値スパイクで脳出血のリスクが高まるとの研究があり、命にかかわる弊害もあるのです」(工藤さん・以下同)

 朝食を抜くと低血糖状態が続くため、アドレナリンなどのインスリン拮抗ホルモン(血糖値を上げるホルモン)がたくさん分泌され、食後高血糖が糖尿病、動脈硬化のリスクを高める原因に。

「朝食を食べられない人も、白湯を飲むことなどから始めて、徐々に改善していくことが大切です」

時間栄養学者が発表!日本人の朝食最新調査

 早稲田大学教授の柴田重信さんは、時間栄養学の視点から、「朝に光を浴びて、食事を摂って内臓を動かすことで、脳と体の体内時計をリセットし、一日の生活リズムのスイッチを入れることが非常に重要です」と話す。

 実は「朝食を摂る」という行為によって、2つの体内時計がリセットされるという。

 1つ目は、朝食を摂ることで肝臓や膵臓などの首から下の内臓が目覚めて動き出す体内時計。もう1つは、朝に光を浴びて脳が刺激を受けて動き出す体内時計だ。

「朝食で炭水化物を摂るのが大事なのは、糖質が吸収されるとインスリンが分泌され、それをきっかけにあらゆる臓器が動き出して、内臓の体内時計にスイッチが入るため。

 これに対して朝食抜きの場合は筋肉のアミノ酸やたんぱく質、脂肪などからエネルギーは合成できるものの、インスリンは出ないので、内臓は昼食を食べるまで動き出さず、内臓の体内時計はズレたままとなり生活リズムは乱れ、やがて肥満につながります」(柴田さん・以下同)

 昨年、コロナ禍による緊急事態宣言で自粛生活が始まった際、朝食をきちんと食べて朝型の生活リズムを手に入れた人はやせ、朝食抜きの夜型になった人は太ったというデータもある。

「今年は、約1万3000人の『あすけん』ユーザー女性の朝食を調査したところ、和食・和洋食・洋食・シリアル・欠食の5つのグループの比較では、欠食が最もBMIの数値が高く、太りやすいことが判明しました。これは、従来から『ダイエットをしようとして、朝食を抜くとかえって太る』といわれてきたことを、はからずも証明する結果となりました」

女性約1万3000人の朝食調査

「女性約1万3000人の朝食調査」表を見ると、特に洋食派はたんぱく質が摂れていない人が多い。

「シリアル派がたんぱく質を案外摂れているのは、牛乳などと食べる習慣が定着しているから。実はシリアル派は利用者数が最も多く、日本人女性の朝食が和食洋食にとらわれず、どんどん変化していっていることがわかります」

 また、和食派は平日や休日の睡眠中央値が示すように早寝早起きで、摂取カロリーも多め。

 シニアの和食派なら3食摂ると食べすぎになるので夕食を減らす、シリアル派は欠食派に次いで起床が遅い傾向にあるので、昼夜逆転しないように注意すると、それぞれ、より快適な朝食につながります」

教えてくれた人

青江誠一郎さん/大妻女子大学家政学部食物学科教授
工藤孝文さん/糖尿病内科医
柴田重信さん/早稲田大学教授

取材・文/北武司

※女性セブン2020年9月16日号
https://josei7.com/

●ひとり暮らしの認知症の母が準備した朝食が切なすぎた話

●60代からのバランスごはん<朝食編>松田美智子さん流「まごたちわやさしい」献立

●朝食を抜く、糖質制限、猫を飼う女性…データで見る死亡リスクを上げる生活習慣

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