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親や兄への憎しみで苦しい…と切実な悩みを吐露する女性にマムちゃんが指南「きついこと言うけど…」

 怒りや憎しみといった感情は、できれば持ちたくはない。しかし、いつの間にか心の中に棲みついて、どんどん成長してしまう。両親や兄の理不尽な仕打ちへの怒りをぶちまけつつ、憎んでしまう自分自身が苦しいと訴える52歳の女性。袋小路から抜け出すにはまず何をすべきか、マムシさんが厳しくもあたたかい言葉で指南する。(聞き手・石原壮一郎)

今回のお悩み:「自分に非情な両親と兄への憎悪が苦しい」

「血は水よりも濃い」ということわざがある。親しい他人よりも血の繋がった身内同士のほうが、やっぱり絆が強くて頼りになるって意味だ。ただ、その「濃い結びつき」はいいことばっかりじゃないんだよな。身内に憎しみを抱くと、際限なくエスカレートしてしまう。

 今回は、親や兄への憎しみがふくらんでいる52歳の女性からの相談だ。かなり苦しんでいるみたいだな。

「兄と私の2人きょうだい。両親の昔からの兄びいきは、現在も続いています。6年前に母が他界し父はひとり暮らし。兄は数年前、会社を自主退職して現在も無職。嫁はあきれて子どもと出ていって別居中。退職金も底をつき、生活は年金暮らしの父が面倒を見ています。そればかりか父は、兄が退職したとき、無職だから家のローンがたいへんだろうと残金を完済してあげた…。その家を購入するのに頭金を出したのも父…。両方、数千万は出したと生前母から聞いていました。

 ところが、私の子どもの大学の学費を2年分お願いしたら『家のリフォームに使ったから金がない!』と。私には本当に非情な態度、非情な言葉で悲しいです。そのくせ父は、困ったときには『どうにかしてくれ』と私に泣きついてきます。兄は『妹にしてもらえよ』と父に言っているらしい。兄は実家に近い所に住んでいますが、恩恵を受けているにも関わらず、何もしない! 昔から兄びいきな父と他界した母、そして兄…。3人に憎悪が出てきている自分自身が苦しいです。助けてください」

 

回答:「きつい言い方だが、あなたが自立する必要がある。苦しみの原因は“執着心”だよ」

 6年前に亡くなったお母さんにも、強い憎しみを抱いているわけか。なかなか根深いな。両親やたったひとりの兄貴が憎いのは、さぞつらいだろう。お金のこともだけど、あなたの中でモヤモヤしてるのは、親御さんが「昔からの兄びいき」ってところじゃないのかな。

 親御さんにはそんな自覚はないだろうけど、その世代だと「男の子を大事にする」という意識が染みついている人は多い。今になって抗議しても、こっちがなんで怒ってるのかわかってはくれないだろうね。それに、お母さんはもういないわけだし。

 結論から言うと、実家から自立するのがいいよ。あなたは結婚して別の家庭を持って、子どもも大学生になった。親や兄貴に言いたいことはたくさんあるかもしれないけど、いつまでも感情をかき乱されることはない。物理的にも気持ちとしても距離を置いて、あなたは自分の家族と自分の人生を生きればいいんじゃないかな。

 きつい言い方になるかもしれないけど、俺にはあなたが親離れできていないように見える。「兄さんばっかり親に面倒を見てもらっていてズルい」「私にはどうして冷たいのか」という不満があるようだけど、それは「私だってもっと親に甘えたい」という気持ちの裏返しだ。「兄さんだけじゃなくて私も見て」と心の中で叫んでも、親や兄貴は変わらないから憎悪ばっかりがどんどんふくらんでいく。

 親のやっていることは不公平かもしれないし、兄貴の態度もムカつくかもしれない。でも、あなたにとっていちばん大切なのは、心の平和を取り戻すことだ。兄貴に使っちゃったお金を取り戻すことじゃない。そもそも、親の金をアテにしたり期待したりするから、不満や憎しみがふくらむんだよ。そういう意味でも、親や兄貴から自立する必要がある。

 それはそうと、相談には旦那の実家の話はまったく出てこないな。シングルなのかもしれないけど、そうじゃなくて旦那がいるんだとしたら、ますます自分の実家がどうだこうだと言ってる場合じゃないよ。自分を苦しめているのは「執着心」だと気づいたほうがいい。

 お父さんと兄貴に向かって宣言してやれ。「この家のこともお父さんのことも、兄さんに任せる。私はお父さんを頼りにしないし、頼りにされるのもお断り。娘や妹であることに変わりはないけど、生活のことはふたりでやってください」ってね。

 ここまで読んで「ひどい目に遭っているのは私なのに、どうして私が諭されないといけないの」と不満に思っているかもしれない。だけど、誰かを恨んだり憎んだりすればするほど、ますます自分が苦しくなるし、怖いことに外見も心も醜くなってしまう。それこそがいちばんの「ひどい目」だ。腹をくくって袋小路から抜け出してくれ。穏やかな気持ちで毎日を楽しく過ごすのが、これまでの理不尽な仕打ちに対するいちばんの仕返しだよ。

毒蝮三太夫(どくまむし・さんだゆう)

1936年東京生まれ(品川生まれ浅草育ち)。俳優・タレント。聖徳大学客員教授。日大芸術学部映画学科卒。「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の隊員役など、本名の「石井伊吉」で俳優としてテレビや映画で活躍。「笑点」で座布団運びをしていた1968年に、司会の立川談志の助言で現在の芸名に改名した。1969年10月からパーソナリティを務めているTBSラジオの「ミュージックプレゼント」は、現在『土曜ワイドラジオTOKYO ナイツのちゃきちゃき大放送』内で毎月最終土曜日の10時台に放送中。85歳の現在も、ラジオ、テレビ、講演、大学での講義など精力的に活躍中。最新刊『たぬきババアとゴリおやじ 俺とおやじとおふくろの昭和物語』(学研プラス)は幅広い年代に大好評!
YouTubeでスタートした「マムちゃんねる【公式】」(https://www.youtube.com/channel/UCGbaeaUO1ve8ldOXX2Ti8DQ)も、たちまち絶好調! 毎月1日、11日、21日に新しい動画を配信中。

毎月1日、11日、21日に新動画を公開中の毒蝮さん公式YouTube『マムちゃんねる』。毎回、マムシさんとゆかりのゲストが対談、愉快な話で盛り上がります。画像をクリックするとYoutbeのページ移動します。是非チャンネル登録を!

 

取材・文/石原壮一郎(いしはら・そういちろう)

1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」など著書多数。最新刊は「【超実用】好感度UPの言い方・伝え方」。この連載では蝮さんの言葉を通じて、高齢者に対する大人力とは何かを探求している。

超実用 好感度UPの言い方・伝え方

●大切な人を亡くしたら…毒蝮三太夫さんが教える「残された人ができること」

●「施設入居者の暴言、暴力が辛い」女性の悲痛な叫びに毒蝮三太夫は「介護職は神に近い仕事である」【連載 9回】

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